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99匹のうちの1匹

 はじめに

戦前から戦後にかけてできた、“大衆”や“我々”といった羊の群れのような概念がある。そこからこぼれ落ちてしまったその一匹は、群れに溶け込めず、怠惰な生を続けるには文学に縋るしかなかったと思う。

文学は異端者を受け止めてくれる。
どんな人間でも、変幻自在に受け入れてくれる。
そう思う。



令和。
僕は異端ではなかった。
別に、ごく普通の、よくいる、いい感じの家庭で生まれ育って、そこそこ面白い友人がいて、まぁそれくらいみんな通るよねくらいの嫌な過去がある。
不満や不安といっても、漠然とした将来とか世の中とか、明日の事とかくらいしかない。
そんな人間である。


“大衆”のうちの一人。
“我々”のうちの一人。
“100匹の羊の群れの適応できた99匹”のうちの一人。


それが僕。


それでも、そんな人間でも、受け入れてはくれないだろうか。決して特別で新鮮な言葉は発せないかもしれない。それでも、この世界の僕の知らないどこかの誰かは肯定してくれないだろうか。
だから、ここで叫び続けるよ。


あまりにもか細い叫びでも。