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sorano meが掲げるビジョン「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする」とは


はじめに

sorano me代表の城戸彩乃です。このnoteでは、弊社の人財基盤事業「ソラノメイト」のことやsorano meが今考えているビジョンについて書いていきます。sorano meを知らない方も読んでくださっていると思うので、まずは弊社の成り立ちをご紹介します。

sorano meは「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする」をビジョンに掲げ、2019年に全員複業で立ち上げた会社です。

宇宙開発に関する魅力を伝えるフリーマガジン制作を行う学生団体「TELSTAR」や、宇宙ビジネスメディア「宙畑-sorabatake-」(※現在はさくらインターネット社にて運営)で活動していたメンバーを中心に創業しました。

図:株式会社sorano meができるまでの流れ

情報を発信・整理することですることで、新たなビジネスの種まきをするだけでなく、「コミュニケーション力を強みに、多くの宇宙ビジネスに興味を持つ仲間を集め、アイディエーションや実証により新たな取り組みの種を育て芽吹かせる」ことを目的としています。

▼創業の経緯については本記事を参考ください
https://note.com/kclutch3/n/ne53642ec924c?magazine_key=m80d220c758e5

また、2022年5月から人財基盤事業として、宇宙複業人財プラットフォーム「ソラノメイト」を本格的にスタートしました。

「ソラノメイト」は、宇宙ビジネスをバックグラウンドとした人だけではなく、農業関連事業に携わっていた経験のある人や航空産業の事業企画、エンジニアやデータサイエンティストといった多様なバックグラウンドを持つ人財のプラットフォームです。。様々なユニークなスキルを持つ様々な人が集まるため、農業における衛星データ活用ソリューションを検討する際も、衛星データに詳しい人だけでなく、本来は顧客である農業ドメインのメンバーもチームに入ることでサービスの価値向上につなげることができます。このようなチームをいくつも作り、その中の活動を通して新たな事業やプロジェクトを生み出していくことに挑戦しています。


人財基盤事業およびその他の事業領域の関連性


▼「ソラノメイト」についてはこちらにまとめています。https://note.com/kclutch3/n/n8a3c58edcbed?magazine_key=m80d220c758e5

(1)自分のスキルを活かしたい人が多く集まるソラノメイトの現状

2023年7月現在、「ソラノメイト」の募集開始から1年が経過し、60名を超える多様なメンバーが集まっています。

参加してくれている人財のバックグラウンドは以下のように多様性に富んでおり、ある意味で「宇宙らしくない」ユニークな場となっています。


ソラノメイトに参画してくれる複業人財にとって、ソラノメイトはこんな場所でありたいと考えています。

  • 普段会社で挑戦できないことに挑戦できる場

  • 本業を続けながらキャリアアップやキャリアチェンジの一助となる場

  • 職場・家庭に続くサードプレイス

  • 非同期にコミュニケーションがとれることで時間・空間的制約にほとんどとらわれず様々な人が参加できる場


ソラノメイトの場の価値とは

そしてこの仕組みの狙いは、
宇宙分野へのコミットを拡大していく人の増加

  • 宇宙分野のナレッジがソラノメイトを通して様々な分野にインストールされる

  • 多様なバックグラウンドの人財が協働し、柔軟に自分の専門スキルを最大限生かす挑戦ができる環境に集まることで、宇宙技術を活用した新たな事業を生み出す

ということです。

ソラノメイトの活動イメージは以下の通りです。

ソラノメイト参画後の活動イメージ


①カリキュラムを活用した自主的な学習


(アサインされていない場合も参加可能)
まずはsorano meで用意している「社内検定」や「輪講会」「勉強会」等を通して宇宙技術/sorano meの狙いについて学ぶ

②プロジェクトに携わり経験値アップ

宇宙ビジネス関連メディアのコンテンツ作成や、リサーチ業務等の複業に携わりながら、宇宙技術や宇宙ビジネス環境について理解を深めていく

③応用・事業創出

自分の得意分野と宇宙技術のかけあわせイメージができてきた人から、事業開発コンサルティング業務や、自社のPoCプロジェクト等での取り組みに携わり、宇宙技術を活用した新たな事業創出に挑戦する

ソラノメイトに登録いただいた方がそれぞれのスキルをベースにしながらプロジェクトに携わり、自主学習とプロジェクトベースの実践を通して宇宙ビジネスに関する知識をインプット・アップデートしていきます。このステップを通してsorano me内外で宇宙ビジネス創出やソリューション開発など多岐にわたり活躍していくことを目指し、そのための環境整備を目指しています。

(2)sorano meのビジョンの解像度が上がってきた

sorano meは、「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする」というビジョンを掲げて活動しています。私が「TELSTAR」や「宙畑-sorabatake-」を立上げた当時は「宇宙産業を日本の誇る基幹産業にする」というビジョンを掲げて発信活動を行っていましたが、sorano meという新たな法人を立ち上げるにあたり、ビジョンを改めて考え直しました。
日本の経済的な発展・産業発展に寄与したいという想いは変わらないものの、経済発展を目指すという点に少し違和感を覚え、改めて宇宙開発の価値、何のために宇宙の面白さを伝えてきたのか?といったわたしたちの原点を考え直したとき、生まれたキーワードが「日常を豊かにする」でした。何気ない毎日を、宇宙開発というワクワクする技術で豊かにすることこそが、わたしたちが実現したいことだと思うにいたりました。
「豊かさ」は、物質的・経済的な豊かさのみではなく、日常を大切に過ごす時間が増えている状態、よく眠れる状態、笑顔でいられる状態、学びを楽しめる状態、歓びを感じる状態など、自らの内発的な幸福感を持続的に感じることができるような時間的余裕、心理的余裕、身体的余裕のある状態と考えています。
「豊かな日常を実現する」ために、宇宙開発技術を使っていくことができたらと考え、ビジョン「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする」を設定しました。

(3)衛星データの価値を私はこう考える

わたしたちが現在特に注目しているのは、地球観測衛星が撮影した衛星データを含むリモートセンシングです。
地球観測衛星とは文字通り、地球を周回し地球の状態を観測する衛星のことで、わたしたちの日常を見守る衛星です。リモートセンシングはリモート(遠く)からセンシング(観測)する技術で、この中にはドローンや航空機、IoT等のデータ取得技術も含まれます。衛星リモートセンシングは、わたしたちの日常を宇宙から見守る技術です。
地球観測衛星は、小型化の流れも受けて近年、その数が大きく増えています。さらに、各国でこのデータをオープン化する動きも加速し、日本でも2017年より「政府衛星データプラットフォーム”Tellus”」がスタート。JAXA等が打上げる衛星データを民間企業や大学、個人までもが利用できるようオープン化しています。
衛星データは、地上で自然災害があったとしても、広域を定期的に同じような形式で観測し続けることができます。
そこで広域の自然を相手にする農業では、米の収量予測や収穫タイミング予測、漁業では、漁場の選定による燃料のコスト削減などに使われる他、地盤沈下や土砂災害の被害状況把握などにも役立っています。
2021年には、衛星データを利用した森林のカーボン吸収量可視化実証を行い、その成果をもってカーボンニュートラル及び生物多様性に貢献する新たな会社「Archeda」を設立し、「Green Insight」という森林資源量把握ソリューションを民間企業や自治体に向けて提供開始しました。


森林域の自然環境のデータ解析サービスGreen Insight/株式会社Archedaの資料よりsorano meにて図版作成


他にも、衛星データを利用した果樹耕作放棄地の検出や水田の水張り監視などのアルゴリズムを長野市に拠点を置く羽生田鉄工所様と共同開発するなど、様々なソリューションを開発しています。
このような実証やサービス開発を通して衛星データを使っていく中で、衛星データの新たな価値に気が付きました。それが「宇宙(地球)視点」です。

宇宙視点で地球を見る

幼児期(6歳前後)までの子どもは、自己の欲求や感情に焦点を当てると言われています。彼らは自分の基本的な生存ニーズ(食べる、寝る、遊ぶなど)を満たすことに関心がありますが、他者の視点やニーズに配慮することは多くありません。
しかしながら、子どもが成長するにつれ、周囲の人々との関わりが増えます。友達や家族との相互作用を通じて、他者の気持ちや視点に興味を持つようになります。
さらに、子どもが学校や社会的な集団での経験を積むと、公平性や協力の重要性に触れる機会が増えます。ルールや規則に従い、他者との関係を構築する中で、自己中心的な行動に対する制約や責任を理解し始めます。
青年期や思春期に差し掛かると、個人のアイデンティティと他者との違いについての関心が高まります。異なる文化や価値観に触れ、多様性と包括性の重要性を認識するようになります。個人の利益だけでなく、社会全体の利益や公共の善にも配慮するような思考が芽生えます。
成人期に入ると、個人の思想はより大局的な視点に向かい、社会的な問題や不平等について関心を持つようになります。社会的な責任や倫理に基づく行動が重視されるようになり、社会的正義の追求や弱者の支援など、社会全体への貢献に関心を持つ思考が発達します。
このように人間は、自己中心的思考の幼児期を経て、だんだんと周囲の人との関わりや社会的な活動を通し、社会の中で自分がどのように振る舞うか、自分が社会にどのように貢献するかといった社会を中心に据えた自分、という考え方に変化していきます。これを視点と視野で整理すると、以下のようになります。



人間の成長時期に応じた視点と視野の拡大


成人期には視野が社会全体となり、社会全体への貢献に関心を持つ思考が発達していきます。海外に行くと、日本以外の文化や考え方を知ることで視野が広がったという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか?
また、子どもがいる人は、子どもの未来をどのようにより良いものとして残せるかといった視点も強く持ち始め、時間軸としての視野の広がりができるでしょう。
そして、わたしたちは、衛星データは、宇宙からの地球をみた視野や視点を手に入れることができるツールであると考えています。

地球全体を定期的に観測している衛星データは、地球の健康診断を行う唯一のツールとも言えます。つまり、衛星データは人間の視野拡大の一助となり得ます。

これが、昨今のSDGsやサステナビリティへの取り組みなどを促進する、地球全体のサステナブルを考慮したサービス設計を行う視野・視点としてよりよい活用ができる可能性を秘めているというわけです。

目指すべき理想状態としての「Planetary Health」

衛星データの価値をより具体的にイメージするための考え方としてわたしたちが注目するのが「Planetary Health」です。

「Planetary Health」とは、人間の健康と地球の健康は密接に関係しており、地球の不健康は人間の健康へも影響する、といった考え方です。

これを提唱するロックフェラー財団のランセット委員会では、Planetary Healthの考え方の前提を以下のように置いています。

  • 人間の健康と地球の健康は密接に関係している。人類の文明は、豊かな自然と賢明な資源管理に依存する。

  • 現在の自然環境は前例にないほど悪化しており、人間の健康と地球の健康はともに危機的状況にある。

現在の自然環境は「Planertary Boundary」という考え方で、ストックホルム・レジリエンス・センターのヨハン・ロックストローム博士(現ポツダム気候影響研究所所長)らによって開発された指標でその状態が定義されています。人類が生存できる安全な活動領域とその限界点を表現するために開発された指標ですが、9つの指標があり、その指標は(1)気候変動(2)大気エアロゾルの負荷(3)成層圏オゾンの破壊(4)海洋酸性化(5)淡水変化(6)土地利用変化(7)生物圏の一体性(8)窒素・リンの生物地球化学的循環(9)新規化学物質。このうち、(1) 気候変動、(7) 生物圏の一体性 (8) 窒素・リンの生物地球化学的循環の3つは既に限界を超えていると言われています。


Planetary Boundaryの概念/Nashらの論文より引用
Planetary Boundaryの概念/Nashらの論文より引用Nash, K.L., Cvitanovic, C., Fulton, E.A. et al. Planetary boundaries for a blue planet. Nat Ecol Evol 1, 1625–1634 (2017). https://doi.org/10.1038/s41559-017-0319-z

人類で初めて宇宙に行ったユーリ・ガガーリンは「地球は青かった」と言いました。

この美しい地球を持続可能にするために、そして、わたしたちが健やかな日常を営み続けるために、現在人類に課せられているミッションは「Planetary Boundary」を超えないことなのです。

起きてしまっている事象から適切に身を守り、イノベーションの創出によって、この境界の内側まで、指標を引き下げる必要があります。


その実現のために宇宙視点を取り入れたサービスデザイン手法「Earth Experience」

「Planetary Health」は地球と人間の健康の密接な関係を提唱しています。我々人間は、地球の中の一部であるために、地球の健康状態に強く影響されるということです。

宇宙視点もまさにその状態を認識する視点です。

宇宙の視点から、地球とその表面で営まれる人間の活動を見ることで、人間が地球の中の一部であることを自覚することができるはずです。わたしたちはこれを活用し、パナソニック株式会社のSPACE DESIGN SECTORのデザイナーの方々と共に「Earth Experience研究会」を立ち上げ、地球と人間の双方がハッピーになるサービスデザイン手法を開発しています。
 

Earth Experienceデザインにおけるインターフェイスの概念/Earth Experience研究会ウェブサイトより引用
https://www.earth-experience.org/

地球を俯瞰的に見ることができる宇宙からの視点(衛星データ)に日頃から触れてもらい、「無意識の内にサステナブルな方を選択する人を増やす」ことを目指し、衛星データをサービスやプロダクトのデザインに活かします。

(4)sorano meで取り組んでいること

現在sorano meでは、「Planetary Health」な状態を実現するためのサービスデザイン手法の研究開発プロジェクトとして、「Earth Experience」のデザイン手法に関して、パナソニック株式会社と共同研究の枠組みを作り活動しています。2023年3月には「Earth Experience研究会」の本格立上げを行い、並行して具体的に、京都の農地を使った「土壌を通した人間と食と地球のEarth Experience」のテーマでのデータ解析や検証、そしてベトナム中部農村地域における人と土壌と文化の「三方良し」の実現に向けたフィールドワークなどを進めています。
また、ベトナムの農村部でも、これらの仕掛けを通じて市民や労働者のウェルビーイングにどのように影響するか、本年から社会学的な観点で研究を行う予定です。

(5)今後の展望

繰り返しとなりますが、わたしたちのビジョンは「わたしたちの日常を、宇宙ビジネスで豊かにする」です。

豊かな日常を実現するためには、「わたしたち自身が豊かな心でいること」と、「わたしたちを取り巻く社会環境の最たるである地球が豊かであること」、この2つが両立している必要があります。

その両立を実現するために、衛星からのリモートセンシング技術を活用し、宇宙からの視点を手に入れ、それを人間が今後選択していく様々なサービスにインストールしていく。これこそがビジョン実現に向けた重要なミッションであると考えています。

「Planetary Health」を目指した取り組みや「Earth Experience」デザイン手法の研究を通して、わたしたちはこのミッションに取り組んでいきます。

さらに、そのミッション達成に向けた挑戦を「ソラノメイト」という仕組みを活かし、通すことで、「ソラノメイト」として活動してくれるメンバー全員が日常をワクワク、豊かな気持ちで過ごすことができるよう、「ソラノメイト」のさらなる拡大、発展を目指していきたいと思います。

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