娘の激痛 (その2)

近くの病院の救急外来に娘を連れて入ったのは、まだ日がかげる前だった。17歳の彼女にとって、大人の病院を使うのは、これが初めてだ。
この前日には、かかりつけの医院に行き、もしも翌日になっても痛みが治まらなければ、病院の救急外来に行くようにと、紹介状ももらっていた。
公共の病院は誰でも使え、お金の心配もいらないけれども、その待ち時間では怖いほどに悪名高い。私がここに住むようになった20年以上前から、自分や周りの人たちの経験から、それが変わっていないのは確かだ。そのうち消えると思われる症状なら、どうにか我慢してやり過ごす方が賢明と言えるほどだ。

腹痛をしょっちゅう訴える娘だけれど、この数日前からの痛みはかなり苦しそうで、さすがにこれ以上、いつもの「痛みが引くのを待つ」というのが良くないと、娘を救急外来に連れて行く決心を私にさせた。
いつものちょっとした腹痛は、もう何年も彼女の日常の一つで、もう、彼女はそういうものだと、私の中ではなっていた。でも、数カ月前からその訴える痛みが、強くなっているように思ってはいた。
彼女は連日、私に癒しを求めてか、マッサージをしてとお願いしてくるようになっていた。私はリクエストされるまま、指圧で背中やら肩やらをもむのだけれど、腰のあたりはちょっと触ろうものなら、痛いから絶対に触るなと、彼女からきつく言われていた。
「私、死ぬんじゃないかって思う時がある」と彼女が私に言った事も気になった。17歳という若さで、死ぬんじゃないかと思うなんて、何かがおかしい。ほっておいていいわけがないのだ。

(続く)

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