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週刊女子ライター部6号~「海外旅行のススメ」

お盆休み楽しく過ごしていますか? ライターの絵美です。

マガジン最後となる今回は、エッセイ風に「私の海外」をつづります。「旅行」がテーマですがちょっと寄り道しますので悪しからず(笑)。

みなさんが渡航先で感動した風景、楽しかった思い出などを重ね合わせて読んでいただけたらうれしいです。

~今週のお題「海外旅行のススメ」

■忘れ得ぬ異国の空の365日

もし私にAnother skyというものがあるなら、それはカナダ・トロントだろう。

初めて降り立った彼の地は退屈な国だった。広大な土地を持つカナダ随一の大都市トロントは、道も建物も空間も日本とスケールが違う。新宿区ほどの広さしかないダウンタウンは、贅沢な土地の使い方でどっしりとした建物が並ぶ。

京都のように東西南北に区画整理され、路面電車が縦横無尽に走り、多国籍なリトルシティがダウンタウンを囲う。カナダ人は温厚で、とにかく誰もが外国人にやさしい。「カナダで一番人情味に欠ける都市」と教えられていたトロントも、冷たさなど微塵もなかった。

しかしそれだけだ。

転校、転居を繰り返してきた私にとって、トロントは転居先の一つでしかなかった。渡航初日から海外に来たというワクワク感も、そこに住むという緊張感も、特別感もなにもない。

ただ一つ違和感があったのは言葉だ。中学校1年生の英語すら危うい私にホームステイ先のMomは「よく来れたね」と呆れ、それでも動じない私を可愛がってくれた。しかし、言葉の通じない生活は思っている以上に堪える。

意思疎通ができない自分に自己嫌悪し始めたころ、私を救ったのは音楽。気持ちを伝えたい、伝わってほしい、相手を理解したい。そんな風に、言葉がなくても人とわかり合えた時、彼の地で大切だったのは「英語が話せるようになること」ではなく「相手と分かり合いたい」という気持ちだったと知った。

その日から私は英語の話せない自分を否定しなくなった。

当たり前のように話せる日本語の生活では忘れがちだが、言葉は“話すため”ではなく“伝えるため”にある。だから私は“言葉を遣う”時に伝えることを諦めない。

何もない土地だと感じたトロント。東京より遥かに広い空の下には、しなやかな教えが詰まっていた。

■何度でも行きたい魅力的な国

旅先として私の心をつかんで離さないのは、青空のよく似合う美しい都市、スペインのバルセロナだ。

世紀の建築家アントニ・ガウディによる建築が散りばめられたバルセロナは、街のそこかしこでなめらかな曲線とデザイン、色使いの石の建築が目に飛び込む。設計図のない未完の教会「サグラダ・ファミリア」、今も人の住む世界遺産アパート「カサ・ミラ」、バルセロナを一望する「グエル公園」――挙げればキリがない。

さらに、新旧の名だたる建築家がガウディの名に引き寄せられてきたため、バルセロナの街そのものがまるで一つの作品のようでもある。芸術の街フランスや古代からの遺跡が残るイタリアの街とも違う。個性的でありながらまとまりがあり、それを見る人に押しつけない、媚びない無邪気さを感じる。

私の場合、旅をする時の目的は遺跡巡りと建築観察。あわよくば地元の人々と仲良くなること。ショッピングにはほとんど興味がない。どの国を旅しても新しい発見にわくわくするが、何度でも行きたいと思わせてくれたのは今のところスペインだけだ。

その理由はスペイン人の魅力的なギャップにもある。フラメンコのイメージなのか、「スペイン人=情熱的」というのが私の常識だった。しかし、スペイン人は意外にシャイな人が多い。誰に話しかけても腰が低く、人情的。人当たりのいい人ばかりだった。

「バルセロナの居心地が良すぎて3年も住んでいる」という日本人にも会ったが、彼は「久々に今日スリに遭って、財布を盗まれた」と笑った。日本の殺人事件の多さとどちらが物騒か、悩むところである。

道行く人のファッションはスタイリッシュで、モノトーンやグレーのモード系。男女ともにすらっとしたモデル体型が多く、私の印象ではパリよりよほどおしゃれレベルが高かった。

とはいえ、滞在期間はマドリッドに1泊、バルセロナに3日間。私の知るスペインなど所詮この程度だ。

でも、もう一度訪れたい。あわよくば住んでみたい。この焦がれる想いよりスペインの魅力を伝える言葉があるなら、どうか教えて。

~今週の近況「華散って童心返り」

連続ロケット花火に噴出し花火、数種類の手持ち花火、最後に線香花火。暗闇に浮かぶ瞬間のアートは、どうしようもなく必死に隠した童心をくすぐる。

思えば何年も花火など買ったことがなかった。東京には、花火のできる場所がない。東京一盛大な花火大会がなくなり、靖国神社の祭りでは屋台が禁止となった。

江戸の夏はいつの間にこれほど味気がなくなったのだろう。

しかし、日本の夏は日本人の心が求める限りそこにある。花火の光くらいではスマホのカメラすら作動しない真っ暗な山奥の一軒家。隣近所の苦情など気にする必要もなく、花火に火をつけては大声で笑い、はしゃいだ。

昼に東京を出て、夕方に静岡、日付が変わる前に東京へ戻ってくる弾丸リターンだったが、驚くほど癒された一日だった。闇に溶けゆく火華が、心にも沁みた。

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――3ヶ月。短いようで長い時間、愛さんと私のマガジンにお付き合いいただきありがとうございました。

今回の記事に写真を一枚も入れなかったのは、思い入れの強い旅ほど写真を持っていないためです。話すと長いので理由は割愛しますが、旅の感動は写真ではなかなか伝わらないもの。もちろん文章でも伝えきれません。

ですが「その国に一度行ってみたい」「どこでもいいから旅に行きたくなった」と読んだあなたが思ってくれたなら、私の言葉は“伝えられた”のでしょう。

このマガジンのファンだと言ってくれたみなさんに心からの感謝と愛を。またお会いしましょう!

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