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時間軸を広げて事象を見つめるということ interaction18 DAY2 参加レポ

前回の記事に続き、interaction18の参加レポを書いていきます。2日目は過去と未来に焦点を当てる、というテーマで講演がまとめられていました。

モビリティをサブスクリプション化するMaaSのデザイン

フィンランドのMaaS Globalというスタートアップのデザイナーとして働くApaar Tuliさんのお話。

MaaSというのは、個々人による自動車の所有をやめ、月額課金方式で交通手段を提供しようとする取り組みのことを指します。

MaaSの紹介から始まると思いきや、話は19世紀の道路の話から始まります。

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19世紀の交通手段はまだまだ馬車がポピュラーで、道路にはそこら中に馬糞が転がっていたらしい。馬が道端に放置されてたり、力尽きて死んでいたりするのも日常茶飯だったそう(写真上)これではいかんということで歩行者と馬車とで道を分ける取り組みが始まり、ここから近代的な交通の整備が始まったらしい。

やがて自動車が台頭するようになる。自動車の出現で生まれたデザインはたくさんある。今の靴の形に少なからず影響を与えているし、今の車の鍵の原型もここで生まれた。しかし、この鍵のデザインがよくなかった。

鍵は、車をロックしておくという用途以上に大きな意味を持っていた。それは、個人による自動車の所有である。結果として街は車で溢れかえり、排気ガスが都市に蔓延し、多くの人が自動車事故で命を落とすことになった。

自動車のシェアリングを進めていけば、今の人々の移動総量を、今の1/4の自動車の数でも十分満たせるらしい。MaaSが目指すのはこの世界。

この世界観を実現するために、MaaSチームでは、「なぜ人々は車を所有したがるのか」を徹底的に調査した。その中で出てきたのは下の3つのポイント。

① 車 = ステータス

① 車 = 習慣

③ 車 = 代替手段

特に3が示唆的で、交通手段に対する考え方を浮き彫りにしていたそう。

上のグラフの白い箇所が自家用車を使っていた時間、黄色い箇所が他の交通手段を使っていた時間。自動車を使った理由を聞いてみると、天気が良くでドライブすると気持ち良さそうだったから、雪で電車がうごかせなくなったから、など、他の交通手段の代替手段として自動車を利用していることが分かった。

我々は天候や体調など、様々な要因によって交通手段を使い分けけることを余儀なくされており、だからこそ結果として多くの複数個の交通手段に投資をしてしまっている。

そこでMaaS globalチームが辿りついた答えが、複数の交通手段を横断的に使うことのできるサブスクリプションプラン。車だけでなく他の交通手段も含めてサブスクリプション化しないと、みんな自動車の所有をやめないだろうと考えた。

彼らが作成したWhimというアプリでは、タクシーから電車、カーレンタルまで全ての交通手段を選択肢に入れて、所有時間と料金を比較できるそうです。

サービス詳細についてはここの記事が詳しいです。

現在フィンランドで運用されていて、イギリスでも近々導入予定とのこと。

自動車をサブスクリプション化するというのは、時代が求めていることですし、必然といえば必然なのですが、それをどうやって普及させていくか、というのは、かなり難しい問題です。ですがそこに先陣を切って切り込んでいくべきはデザイナーなのだということを、彼は体現しているようでした。

この話で面白いのは、近代の馬車の話から始まったという所でしょう。産業史というのはプロダクトデザインの蓄積と同義といえます。過去に目を当てることは未来を考える上で大きな判断材料を与えてくれます。

リヨンの街を歩いていると、そこら中に中世のゴシック建築とモダンな建築物が混在していて、歴史の中に生きているという実感が強く湧きます。そういった地域で生活を営む人たちにとっては、モビリティのデザインを考えるのに馬車の歴史から考え始めるのは、ある種自然な感覚なのかもしれません。

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