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海の話



実家から自転車で10分のところに海がある。
坂道を下って、両側にススキの生えた細い道を進んだところ。

初めて行ったのがいつだったか覚えてないけど、昔から知ってる、綺麗な夕陽が見える海。

部活がなくて晴れた日は友人と行ったり当時の恋人と行ったり、1人で行ったりしてた。
海だから自分のものではないのだけれど、本当にお気に入りで青春を過ごした場所。


地元だとみんな知ってる有名な海なのに、海水浴場ではないしそんなに水が綺麗なわけじゃないからいつも誰もいないか、いても2~3組いるだけで、ほとんど独り占めだった。最近はどうなんだろう。しばらく行けてない。



真夏に行くのは暑くて大変だから、春と秋によく行ってた。
わたしの実家から海までは下り坂だけど、ほとんどの友人の家は反対側で、そっちもわたしの実家から見て下り坂だったから、友人の家で遊んでから海に行く時は頑張って坂を登らないといけなくて。
でも中学生で何でも楽しい時期だったから、わりと急で長い坂を必死になって登るのも楽しかった。太ももは辛かったけど自転車で、一度も降りないで!(中学生の体力はすごい!)


海に着いたら少しだけ買ってきたお菓子を食べたり、足だけ海に入ったりして、その後はほとんど波の音を聴いて夕陽を見ながら話した。
わたしはこの時間が大好きだった。


誰かと行く時はぽろぽろと話しながら見ていたけど、1人で行く時はただじっと黙って夕陽を見てた。その間は他のことを何も考えなくなるから、高校の時はいろいろな悩みを忘れるために行ったこともある。悩みの解決には全くならなかったけど。


何もしてくれないし何も教えてくれない、けど、それでよかった。ただ淡々と波をおして引き返すだけで、そこに居てくれるだけの存在がとてもありがたかったんだな、って大人になって気づいた。


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大学進学で地元を出てからずっと海のない県に住んでいる。

今は海じゃなくて川の近くに住んでいて、その川からも夕陽が見える。
たまにボートが通って、水面がゆれるのも風が通るのも美しいし、川辺にいる鳥たちもかわいい。歩道があるから犬の散歩をする人も走る人も歩く人も自転車の人もいる。対岸でサッカーをしてる子どもたちもいて、川は生活と一緒にあるんだなあ、といつも思う。

スポーツをして疲れた後に、川まで散歩して歩道のはしに腰かけて、恋人と金麦を飲みながらスーパーのナポリタンを食べたこともある。
(これは本当においしい&風が心地いいで最高だった)


それでもやっぱり地元の海が忘れられなくて、今でも嫌なことがあった日はあの海に行きたくなるし、帰省したときはなるべく予定を入れないでずっとあの海で夕陽を見て過ごしたいなと思う。

ちょっと切なくて、初恋のような気持ち。



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将来は海の近くに住みたい。自転車で行ける距離に海がある家に。

地元の海も大好きだけど、他の愛すべき海も見つけたい。


見つかるといいな。