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産みたくないと言ってもいいですか?〜命懸けの妊娠出産〜64

「空月さん。」

呼ばれて目を開ける。また眠ってしまっていたようだ。胸が張って痛い。

「レントゲンに呼ばれたので行きます。ベッドを動かしますのでそのままでいてください。」

二人の助産師さんがベッドを押してレントゲン室へ連れて行ってくれる。天井がどんどん進んでいくのを見ていると目が回ったので目を瞑ると助産師さんがすぐ

「しんどいですか?」

と聞いてくれ、私は

「いえ、天井見てると目が回ってしまって」

と笑いながら返事をする。助産師さんもそうですよねと笑ってくれた。

レントゲン室に着くとベッドからレントゲン台に移される。移される時に

「帝王切開術後2日目なので響かないようにお願いします。」

と助産師さんがレントゲン技師さんに言ってくれ4人がかりで私を移してくれた。

「いたたたたたた!!!」

いくら優しく移してくれたとはいえ、2日前に切ったばかりのお腹は少しの揺れでも酷く痛かった。その後助産師さんはレントゲン室から出て行く。残ったレントゲン技師さんは

「これから胸のレントゲンを撮っていきます。金属の付いてる下着とかは付けてないですよね?」

「はい。」

「では私が息を吸って止めてくださいって言うのでいっぱい息を吸って止めてくださいね。」

「わかりました。」

レントゲンの機械を操作し位置を決め撮影室から退室し、マイクで息どめの指示があった。この間数秒。

「はい、終わりましたー。ではベッドに戻ってもらいます。」

助産師さんも入ってきてさっきと同じく4人がかりでベッドに移してくれた。うん、痛い!この数秒の為に長い廊下を連れて行ってくれ、重たい私を4人がかりで移動してくれ、申し訳ないと思った。

その後病室に帰り助産師さんに搾乳してもらう。痛みに耐えているとお昼ご飯が運ばれてきた。搾乳を終え、いざお昼ご飯!とベッドを少し上げる。頭が少し上がってきたかなというところで止める。これ以上は上げられそうにない。助産師さんはその間ずっと側で見ていた。私が食べ始めると助産師さんはまた来ますね、と退室したが食べ始めて少しすると助産師さんが血相を変えて部屋に入ってきた。

「空月さん!大丈夫!?」

「??はい…、大丈夫です。」

私はのほほんと答えた。

「血中酸素の値が下がったので。ちょっと見ますね。」

そう言うと左中指にはめてあるパルスオキシメーターを見る。

そして「こっちの機械に変えますね。」と先ほどのパルスオキシメーターより小ぶりな物を左中指ににつけるとテープでぐるっと巻いて動かないように取り付けた。

ちょうどもう食事が済んだので下げてもらう。

「半分残ってますがもう下げてもいいんですか?」

「はい、すみません。なんかもうお腹いっぱいで。」

そう言うと半分以上残してしまった食事を下げてもらった。昨日の夜はあんなに美味しいと思ったご飯が全く美味しく感じられない。お粥からご飯に変わったのに。

お昼が済んで少しした頃、主治医の大野先生がきた。

「空月さん、レントゲン撮ってもらいましたが何も悪いものは写ってなかったです。どうですか?今は。」

「朝みたいなしんどさはなくなりました。」

「そうですか。ですが酸素の値をモニターで見せてもらってましたがちょっと心配なので無理はせず。あと今日からリハビリをつけようと思います。」

「リハビリ…ですか。」

「はい、歩く練習などしっかりと見てもらいましょう。」

「わかりました。」

(子宮筋腫の時はリハビリなんかなかったけど、やっぱり帝王切開ともなるとリハビリがつくんだねー。この数ヶ月全然歩けなくて足の筋肉も落ちたしなー。)

「夕方から来てもらえるように言っておきましたので、よろしくお願いします。それと小児科から今から赤ちゃんが来てくれるということでした。」

「え!本当ですか?!」

「よかったですね。では、失礼します。」

そう言うと大野先生は退室していった。

出産の時以来見ることも出来なかった赤ちゃんにやっと会える。

でもどんな顔だったか覚えていない…。

ちゃんと自分の子供って分かるのかな。

私は不安になっていた。



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