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コンサルタントの海外出張は突然に

貴重な土曜(+日曜の朝)を費やし、某飲料メーカーのコンペ資料修正を無事に完了したヒルズ氏。しかし、任務はここで終わらない。(前回


なぜにサンフランシスコ行きというのは朝着が多いのか。コンサルタント、いや世の社会人にとって朝着は天敵だ。賛同者、いるよな?


◆旅が始まる

小雨の降る外を眺めながら、オレンジジュースとスナックを取り席に着く。

ここは羽田空港ラウンジ。
もったりとした空気を感じるのは胃もたれのせいか。何せ、早朝豚骨ラーメンの後だ。頭に霧がかかったような感覚が消えない。

「お疲れ様ですー」

高めの声に顔を上げる。
お嬢氏だ。

既にシャワーを浴びたのか、どスッピンに眼鏡、上下スウェットだ。上下スウェットなのに漂うブルジョワ感。そこから人生の絶対的格差を感じてしまう。ふむ、私は疲れているな。


「ファーストクラスラウンジじゃないの?」

チラリと財布から見えたことのあるブラックカードを思い出す。

「だって、あれがいるじゃないですか」

顎でファーストクラスラウンジの方角をさす。前のソファに座り、優雅に足を組むお嬢氏。

あぁ、そうか、我が社の代表も一緒だった。現実を噛みしめる。これから我々3名はカリフォルニアに出張だ。

要件は、2日前にもらった。


◆限りなくグレー

「この案件、どう落としどころつけます?」

お嬢がパソコンを開き話しかけてくる。
あぁ、私もそれを考えていた。
どうしたことかーー。


売り上げ低下の影響は全方位にわたった。

通常のコンサル案件は下っ端に任せろ、少ない稼働でがっぽり儲けろーー

最近の社長のご命令だ。もうコンサル会社の看板を降ろしたほうがいいと思うのだが、その中でも最もきな臭い案件にお嬢氏&私ことヒルズ氏は巻き込まれてしまった。

簡単に説明しよう。
我々は以下の手順を遂行しなくてはいけない。

・カリフォルニアの投資会社にアクセス
・スタートアップを発掘
・日本の大企業に売りさばく
・投資会社からフィーをもらう
・大企業様からは買収後の戦略策定のお仕事をいただく

うむ、ただの斡旋業だ。きな臭いのは契約形態なのだが詳しくは伏せさせてくれ。すまない、とにかくグレーなんだ。

「「どう逃げ出すか...」」

思うは同じ、しかし体は既に空港。
あぁ、哀しき雇われの身よ。


◆ファーストクラスの幻想

投資会社の企業情報、抱えるベンチャーの情報を頭に叩き込んでいる間に、出発の時間がきた。

「お疲れさまだね」

爽やかさを微塵も感じさせない笑顔を見せ、社長がファーストクラスに乗り込んでいく。お嬢氏はぎりぎりまで近くの売店に潜んでいる。意地でも会いたくなかったのだろう。


随分前になるが、元CAが語る「ファーストクラスに乗るお客様の習慣はそこらの男と違う!」などという書籍が軽くヒットしていたのを思い出す。なんだったかな、ファーストクラスに乗る方は身だしなみも良く、書籍を持ち込んでじっくり読書に時間を使っているだったかな、、、

突っ込みたい。


お前、本当に元CAか?


弊社社長を思い出す。彼が「そこらの男と違う」と言われれば確かに色々な意味で違うだろう。

やつが機内でしそうなことなど完全に想像できる。仕事の書類をなんとなく広げ、ワインを飲みながら「女性CAと何を話そうか」思いを馳せる。万が一、本を持っていたとしても読んでいるふりだろう。何せ集中力がなく短気だ。残念ながら今から向かう国の大統領とよく似ている。


などと勝手に苛立ちながら、ビジネスクラスの席に落ち着く。何度も言うが、私は疲れているのだな。くそう、、、


到着しても休憩時間はない。

先方との打ち合わせに備え、パソコンを広げた。


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