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コンサルタントは打合せ後こそ忙しい

某メディア企業役員との初打ち合わせに向かった角刈り氏(使えない上司)、お嬢(チームメンバー)、そして私ことヒルズ氏。地獄のプレゼンタイムを終え、ほっと一息ついたヒルズ氏はお嬢を食事に誘うのであった。(前回


いやいや、これからデートしようって意味じゃないよ読者諸君。打合せ後は即議事録を仕上げてその日のうちに先方送付、これ必須だ。
お嬢と夕食をサクッと食べてオフィスに戻る。それが私のささやかな願い。まとも感のあるお嬢ともう少し交流したいしな。

◆お嬢の要望

「私、すき焼き食べたいです」

!?

す、すき焼き? わ、私も好きだぞ。けどサクッて感じじゃないな、、、

もう時刻は8時になろうとしている。オフィスに戻り議事録、次のアクション確認、角刈り氏と早急に稼働率の相談もしたい。彼の稼働が抜けた分は誰が補うのか? 元々戦力にはなってないが。

すき焼きは下手したら10時か。しかし大活躍したお嬢の要望だ。ここは聞かざるをえない!わかった、予約しよう!


「遅く、、、なりました」

すき焼き屋に到着したのは、深夜12時をまわっていた。六本木とは恐ろしい街で、朝まで開いているすき焼き屋がある。

既にほぼ平らげているお嬢と新人Boy氏。その二人を前に、ぼろ雑巾のように突っ立っているのはギャル氏、そしてヒルズ氏こと私だ。

なぜ、こんなことにーー。

それは、一本の電話から始まった。

◆突然の呼び出し

オフィスに戻り、お嬢の高速議事録作成に感心し、行方不明の角刈り氏を心配していたころだ。他チームの社員が電話をギャル氏に取り次いだ。

「ギャル氏さん、社長からです」

オフィス内の社員が一斉にギャル氏を見る。怪訝な顔をして電話口にでたギャル氏だったが、おや、なぜ私の顔を凝視している? 徐々に曇っていく日焼けした顔。最後は吐きそうな顔をして電話をきった。

なんだ、何が起きた? 今日、私はすき焼きの予定がある、これ以上は、、、

「ヒルズさん、10時半までに社長が西麻布のクラブMに来いと」

は?クラブM?ってかキャバクラ?

「要件は全くわかんないけど、社用車を回すのでとにかく来いだって」

くっ!すき焼きは延期か!
お嬢を振り返る。

「大丈夫です。新人Boy氏と先に向かいますのでごゆっくりと」

お嬢のすき焼きへの情熱は揺るがなかった。その場で新人Boy氏の参加を強行採決。巻き込まれた新人Boy氏はぽかんとしている。

わ、わかった、ではチーム全体のすき焼き会とするか。ギャル氏もあっさり了承。急いで荷物を整理しギャル氏と黒塗りベンツに乗り込む。社用車の趣味まで悪い。くそう、私のささやかな願いがこんなことに、、、

◆ベテラン運転手

「大変ですねー、入社早々」

話しかけてくるのは社用車の運転手。佐藤浩市に似たイケメンの穏やかそうな笑顔にほっとする。聞けば、佐藤氏は運転手人生20年のベテラン。ギャル氏が盛大に社長の文句をぶちまけているのを見ると、社員から随分信頼されているようだ。

「社長の女好き、きもくないっすか?佐藤さんよく耐えてるよね」

横でだらりとリラックスするパンツスーツ姿のギャル氏。まぁまぁとなだめる佐藤運転手。六本木通りは夜の混雑でのろのろ運転だ。
あ、、、もしかして、、、
この運転手なら佳乃氏と狸役員の関係を知っているかもしれない。

「佐藤さん、佳乃さんと狸役員の関係って」

私も気になってた! と叫ぶギャル氏。
いやー、その件はねぇ、、、と言葉を濁す佐藤氏。そりゃそうか、ベテラン運転手は守秘義務もきっちり守るのだろう。

「彼女、もともとプロだからねぇ」

あっさり吐くんかーい。

しかし、プロ? 愛人斡旋系かホステスか。あれ? 彼女って元大手メーカーの秘書じゃなかったっけ? 経歴詐称しているのか?

「いやあ、別企業の役員の運転手時代にも彼女を乗せたことがあってね、そのあと別の社長の時代にも、あはは」

佐藤氏、めっちゃ口軽いやんけ。

もう少し聞きたいが、車がクラブMに到着してしまった。私も接待で様々な場所に行っているが、このクラブは知らないな。

「言っとくけど、ここやばいよ」

ギャル氏が顔を引きつらせてこちらを向く。ギャル氏はコンサル歴が長い。客との付き合いでキャバ嬢やホステスの世界は見てきているだろう。そのギャル氏をもって、この言葉。どんな卑猥な世界に私たちは足を踏み入れようとしているのだ。

暗澹たる思いを抱え、扉を開ける。

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Twitter: @soremaide

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