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コンサルが教える入札で一番大切なこと

次の案件獲得に向けた営業のため、某飲料メーカーのコンペ資料修正に急遽かりだされた新人Boy氏とヒルズ氏。大人数で作成したらしいつぎはぎパワポ資料を前に頭を抱える。(前回


入札なんて結局はコネや価格で決まるんじゃないか、だと? そういう場合も多いんだが、それ以前の段階で躓いている事業者は多いのだよ。さてと、詳しく説明しますか。

◆質問に答えない人々

「コンペで一番大切なこと、なんだと思いますか?」

前に立ち、問いかける。

飲料メーカーの面々が難しい顔をする。こんな問いかけをするが故、コンサルは胡散臭いと言われるのだろう。しかし、コンペに勝つためだ。自らに言い聞かせ話を進める。

私は過去、数々のコンペに参加し、さらにコンペ参加者にアドバイスをしてきた。その経験からはっきりと言えることが一つある。

コンペで絶対に外せないこと、それは、、、


「要求仕様に、答えることです」


は?

困惑する社員の方々。そりゃそうだ。要求仕様を満たすためにここまで頑張ってきたのだから。

しかし、問題は「頑張ったかどうか」ではない。

ホワイトボードに対応表を書き出す。左に、入札の要求を"要求仕様書に書いてある通りに"箇条書きする。そして右に、今回のプレゼン資料の目次を書き出す。

「どうですか?」

はっとした顔をする社員たち。

内心ほっとする私。

彼らの作ったプレゼン資料を事細かに読み込めば、全ての要求を満たしていることは分かるだろう。しかし読む相手は多忙を極める事務方、熱心な推理小説読者ではないのだ。万が一、要求仕様にこたえていない箇所があると判断されたら? 挽回は難しいだろう。

「明らかに要求仕様にこたえている、そう思わせないと次のステップに進めません。相手の頭にある ”型” に、皆さんの答えを流し込んでください」


◆要求とメンツの狭間で

お昼休みを挟み、午後はプレゼン構成の見直しに使われた。

新人Boy氏と私がやれば、おそらく1時間弱でできただろう。しかし、「いやいやこのページは外せません!」「このページを後ろにすると〇〇部長が不満に思われるかと!」等の意見をうけ、お任せすることにした。

組織内のメンツを守るというのは大変なことだなーー。私も一度は大企業に在籍した身だ。休憩室でコーヒーをすすりながら同情する。

「なんか、馬鹿らしいですよね」

隣の新人Boy氏が呟く。

あぁそうだな、極めて馬鹿らしい。だが覚えておけ、組織の体質をここで非難したって何も生まれないのだ。どんな組織にもこういった「馬鹿らしさ」は存在している。今は彼らの利害関係を読み解き、勝ちにいくしかない。


午後5時、ようやく構成見直しが完了した。


◆パワポの罠

次に各スライドをチェックし修正方針をコメントする作業に移る。直接修正したいのはやまやまだが、それはやりすぎだ。あくまで最終判断は相手に任せよう。

プレゼン資料作成については、いつか改めてNoteにまとめようと思っている。だから、一つだけ愚痴らせてくれ。

資料作成はな、目的じゃないんだよ!

当たり前と思ったか? だが、私がこれまで見てきたパワポ資料の9割以上が、資料作成が目的、の罠に陥っている。

「これ、タイトルと中身があってないのでは?」

いや、思いつかなくて関係する図を貼ってみたんです。

何か悪いんですか?という顔をする社員を見て頭を抱える。あああぁ、直接修正出来たらどれだけ早いことかあぁぁぁ、、、


午後7時、コメント入れ終了、社員たち修正開始

午後11時、進捗6割、一部社員が終電のため帰宅

深夜1時、結局ヒルズ氏、修正作業に降臨!

深夜2時、新人Boy氏、うたた寝開始

早朝3時、任務完了、ラーメンへ



「最初っから任せてくれたら良かったっすよね」

あくび交じりに新人Boy氏が愚痴る。

浅はかだなーー。納得感なきコンサル提供ほど禍根を残すものはない。任された挙句、コンペに負けたら? 想像するだけでもぞっとする。

「はぁーこの日曜、寝るだけかぁ」

伸びをする新人Boy氏。

そして気が付く。

「あ、あれ? もしかして、ヒルズさん今日、、、」


あぁ、

夕刻よりカリフォルニア帝国に出張だ。


何か文句あるか?


私は、あるぞ。


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