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特殊詐欺の受け子・かけ子を始めようか悩んでいる方へ。

初めまして。
まず最初に、この記事を読んでくれた貴方は、特殊詐欺の受け子・かけ子などの「闇バイト」と呼ばれるものを始めようか悩んではいないだろうか。
私はそんな貴方に一言伝えたい。

絶対にやめたほうがいい

私もお金欲しさに受け子に手を出してしまった一人であり、この記事を書いている現在も多少複雑な環境に置かれている。
もし、少しでも考え直してくれる気持ちがあって、この記事を読んでくれるのであれば、拙い文章で長くなるとは思うが読んでほしい。

まずは簡単に私の自己紹介をさせて頂きたい。
名前は偽名ではあるが、この記事内ではSORと名乗らせて頂く。
一人暮らしをしていた大学生である。
2022年X月より受け子を始め、様々あり現在は海外某国にて出頭の為日本への帰国までの数日を待っている状態だ。
この記事では、私がなぜ受け子を始めてしまったのか、私の身に何が起きていたのか等、事実を洗いざらい書いていこうと思うので、この記事を読んで一人でも闇バイトに手を出す人が減ることを願っている。

2022年X月、彼女が出来て一か月ほど経っていた私は、一人暮らしの大学生としてはあるあるだと思うが、金欠に悩まされていた。
金欠は深刻で、銀行口座含め全財産は数百円しかなく、遊ぶ金はおろか、家賃や、その日食べるご飯にも悩むほどであった。
一人暮らしを始めてから、何度か親に金銭の無心をしていたこともあり、必要になったときに借りれず、友達、まして彼女になんてお金に困っていることなど言えず、私は手っ取り早くお金を稼げる方法を探すことになった。

稼ぐ方法を調べていて、Twitterを眺めていたところ、とあるツイートが目に入った。
「高額報酬バイトをご紹介します。報酬は即日現金払い。一日5万円以上。気になる方はDMへ。」
私は、藁にもすがる思いでDMを送信した。
するとすぐに返信が来た。

「連絡ありがとうございます。バイトのご紹介などの詳しい話はテレグラムでさせて頂きます。IDを教えてください。」
そう言われた私は、聞いたことも無かったテレグラムというアプリをダウンロードし、IDを伝えた。すると今度はテレグラムにすぐに連絡が来た。

「Twitterのリクルーターです。今回ご紹介できるお仕事はUD、または海外でのかけ子になります。」
UD?かけ子?とりあえず海外には行けないので、UDが何なのかを質問してみる。

「受け出しのことです。受けは我々の指定する客宅へ向かってもらい、そこで現金やカードを受け取ってもらいます。出しはそのカードでATMで現金を抜いてもらうことです。」
この瞬間、これは犯罪だ。と認識し、断ろうと思った。すると、

「今まで我々の会社で捕まった人間はいませんよ。見張りも護衛もいますし、安全な状態で仕事をして頂けます。高校生などもバイトとしてやっていますよ。」
高校生もやっている、なにより見張りも護衛もいて捕まった人間はいない、、。
私はその言葉に騙され、興味が出てきたのでもう少し詳細を聞くことに。

「報酬のパーセンテージは5%なので、100万円を下ろせば5万円です。一日平均200~400万円おろすので、一日20万円です。経費も出るので自分で払うお金もありません。」

私は高額な報酬に釣られ、「やります」と言ってしまった。

するとリクルーターからは免許証の写真、自撮りを始め、自分の個人情報、実家の住所や親の名前まで求められた。
少し躊躇ったが、お金が欲しかった私は写真を撮り、すべての情報を伝えてしまった。
その後詳しい仕事の話となり、
「目立たず無難な服装、私服、マスク、帽子、イヤホン、モバイルバッテリー、セロテープを準備してください。明日から仕事になります。よろしくお願いします。」
そう言われた私は、言われるがままに物の準備をし、翌日から働くことになった。

朝9時にレンタカーを借り、指定された場所まで向かう。
到着し次第、指示役から連絡が来るまで待機となる。
待機場所は基本的にネットカフェが多かった。
基本的には連絡は来ず、2時間毎くらいに新たに場所を指定され、そこへ向かって待機。そして夕方になると、「本日は終わりです。また明日お願いします。」その連絡が来たらその日の「業務」は終了である。
しばらく、そんな日々が続いた。なんのお金も入らず、ネットカフェを転々とする毎日が一週間ほど続いたとき、ついに連絡が来た。

「案件です。住所を送るのでそこの近くのコインパーキングに向かってください。ついたら目立たず無難な服に着替えてからイヤホンをつけて電話ください。」

緊張する。着替え終わった私は電話をかける。

「警察官の斎藤と名乗ってください。家の前までついたら教えてください。」そう言う指示役の後ろから別の人の声が聞こえる。
何を話しているかまでは聞こえないが、これから向かう客、すなわち「被害者」となる人と話しているのである。

家の前まで到着し、指示役に到着したことを伝えると、「インターホンを押して下さい。」
私は緊張で胸が張り裂けそうになりながらインターホンを押す。すると中から、優しそうな顔をしたお婆さんが出てきた。玄関先までお邪魔し、指示役から指示されるがまま会話すると、お婆さんの手から三枚の銀行のキャッシュカードを渡された。そしてハサミを借り、指示役のいう通り、カードを真っ二つに切った。
目の前で真っ二つに切ることで、もう使えないという安心感を与えているのである。
お婆さんに見送られ、「客宅」を後にする。

安心したと話す優しいお婆さんの顔が忘れられない。
とても苦しかった。これを書いている今でも苦しい。

近くのコンビニのトイレに入り、真っ二つに切ったクレジットカードをセロテープでくっつける。そうすることでATMに差し込んで通常通り使えるのだ。

その後車に戻り、指示役に伝えると、今度は近くのATMの場所が送られてくる。
そこへ向かうと、「私服に着替え、絶対にマスク、帽子を被ってください。スマホは通話状態のままでポケットに入れて、限度額まで引き出してください。終わったら声をかけて、ATMを離れるまでは絶対に話しかけないでください。」

伝えられた暗証番号を使い、順番に引き出していく。
三枚のキャッシュカードから50万円ずつ、合計150万円を引き出しATMを後にする。

終わったことを伝えると、指示役からは「別のコンビニでレターパックを買ってください。報酬の7.5万円と、経費の2万円の合計9.5万円を抜いたらレターパックに入れて、○○公園の公衆トイレに入ってください。」
指定されたトイレに行き、数分待つと、5回ノックをされた。
ドアを少し開け、隙間から現金の入ったレターパックを渡す。
相手の顔を見ることはない。

「本日はこれで終わりです。明日の朝は今日の板を使って朝抜きからスタートです。お疲れさまでした。」
板はキャッシュカードのこと、朝抜きは朝にまた引き出すことである。

私は車で帰りながら、こんなに簡単に手元に残った9.5万円を見た。
これで朝抜きが成功すれば追加で7.5万円。これを何件もこなせば月に100万円稼ぐのも夢じゃない。そんなことを考える私の頭の中は、おかしくなってしまい、恐怖よりもお金が手に入る楽しみが生まれてしまっていた。

初案件から少し経った頃、流行りのコロナウイルスにかかったり、単純に風邪を引いて体調を崩し1か月半近く休んでいた。体調がよくなり、また仕事再開したが、初案件の時に月100万も夢じゃないと思えるほど現実はそう甘くもなく、あまり案件を取れずに暇な日々が多かった。

そんな中で私は犯罪で稼ぐことは良くない、捕まりたくない。と、何度か辞めさせてほしい、と指示役に伝えていた。
しかし、私のすべての情報を握っている指示役は、「辞めてもいいけど、親にも彼女にも大学にも警察にも連絡するし、ネット上にも情報上げるけどいい?」と脅してきていたのだ。そんなことを言われ辞められるわけもなく、初案件から4か月経った頃、私はまた案件に向かっていた。
客宅の前に到着し、表札を確認していた時のことだ。誰かに肩を叩かれる。
後ろを見ると、私服の警察官が警察手帳をこちらに向け立っていた。
私はそこで人生初めての職務質問に遭った。

なぜこんな住宅街にいるのか、何をしているのか等聞かれつつ、指示役とは電話が繋がりっぱなしだった。
そして警察官がテレグラムで通話中なのを発見し、それを切断した後即座に私が立っていた家にインターホンを押す。そして出てきたお婆さんに話を聞いていた。
もちろんお婆さんの元には詐欺の電話がかかってきていたのだ。
それを確認した警察官は増援を頼んだ上で私に署への同行を頼んできた。
私は断れるわけもなく、パトカーで警察署へ連れていかれたのだ。

もちろん初めにリクルーターが言っていた、見張りも護衛もいるわけがない。弁護士なんてものも来ないし、誰が助けてくれるわけでもないのだ。

警察署に連れていかれた私は約5時間にわたる事情聴取を受けた。
初めての体験に恐怖で私は正直に自分のしてきたことを話せなかったのだ。
スマホの解析もされたのだが、職務質問をされた時も、客宅のインターホンを押す前だったこともあり、確たる証拠が出なかったのか、その時は解放されたのだ。

解放されて安心したのもつかの間、私は本格的に自分が捕まる可能性が高いことに焦っていた。私のテレグラムがオンラインになったことで、また指示役から連絡が来た。自分が解放されたことに驚いていたが、指示役は私にある提案をしてきた。

「海外に来るつもりはないですか?そのまま日本にいても時間の問題で捕まりますし、こちらに来ればそんな心配もなく自由に暮らせますよ。また、数年待てば日本にも帰れます。」

そう言われた私は、指示されるがままに即座にパスポートを発行し、彼女や友達に嘘をつき、海外へ飛び立ってしまった。
そう、国外逃亡をしてしまったのだ。

海外某国へ到着すると、現地人でスタッフを名乗る女性が片言の日本語で話しかけてきた。その女性に連れられ、車で数時間のとある一軒家に連れてこられた。私は、そこでパスポートを取り上げられてしまった。

そこには自分と年齢の近い数名の日本人がいて、皆かけ子だった。
マニュアル、かけ電と呼ばれるスマホを渡され、私もかけ子をするように言われたのだ。

私は自分を責め続けた。なぜもっと早く自首しなかったのか。なぜあの取り調べのとき正直に言わなかったのか。
皆にバレたくない、捕まるのが怖い。そんなくだらない思いのせいで、自首はおろか、自分の意志で日本に帰国することさえ出来なくなってしまったのだ。

海外でのかけ子としての生活がスタートした私は慣れない海外生活と、自分の置かれた現状に精神を病み、体調を崩し切ってしまい、体重も一気に10Kg近く瘦せてしまった。
そんな中かけ子も出来ず、案件も一つも取れずに一か月が経っていた。
私はある時、「見張りもいないわけだし、ずっとかけないで案件を取らなければ要らない人間として帰れないか?」と思い、自主的に電話をかけないでいた。

そんな生活を二か月半ほどしたとき、私の彼女と友達の元に警察から電話が来たのだ。内容はもちろん私のこと。親の元には出国してすぐに警察からの連絡が行っていた。
もちろん彼女も友達も警察に知っていることをすべて話した。それを知った私は、やっと正直にすべてを話せることにとても安心した。

皆に全てを包み隠さず話した私は、心の荷が下り、再度指示役に、自分の彼女、友達の元に警察から連絡が行き、皆知っていることを話したことを伝えた上で、日本に帰国して出頭したいことを伝えた。
すると私の予想は当たり、一つも案件を取っておらず、警察からも捜査をされていて、皆が色々話している私のことを要らない人間と判断したのか、パスポートを返してもらい、今は空港近くのホテルで一人で帰りの日を待っている。

さて、ここまでが私がしてきたこと、そして今置かれている現状である。
私は受け子をしてきて、海外逃亡し、かけ子となったが、上記の通りかけ子としての仕事はしていない為、そちらを詳しく書くことはできなかった。

私は彼女や友達を通し、警察にもう少しで帰国、出頭することを伝えてはいるが、現在まだ逮捕もされておらず、日本に帰国してからの流れも正直確実にはわからない。ただ、スマートフォンも押収され、長時間にわたる取り調べや勾留を経て裁判に進み、然るべき判決を下されると思う。
今はネット上で調べただけの知識でしか今後の自分がどうなるかの予想をすることしかできない。

ただ、それでも分かることは、近年特殊詐欺は厳罰化の流れがかなり強い。
高齢者を騙して金銭を奪っているのだ。この字面で分かるほどに凶悪な犯罪であり、常識のある人間のすることではない。
最近話題となっているルフィの関わる事件も記憶に新しい方も多いと思う。
あちらも事件内容は私がしたことと似たようなものも多く、日本中に特殊詐欺というものを今まで以上に強く伝えた事件だったと思う。

私は勿論初犯ではあるが、海外逃亡してしまっていることもあり、おそらく長期間刑務所に行くことになると思う。
それは自分のやってまったことであり、償わないといけないことなので真摯に受け止める気でいる。
また当たり前だが前科がつく。日本という国において、前科持ちの人間への見る目は厳しいものだ。しかも、自分が苦労するのは自業自得なのでまだ仕方ないが、自分の家族、彼氏彼女、友人含め身近な存在全員にも迷惑をかけることになり得るのだ。
それは自分が苦労するとか、耐えるとかでは到底済まされない。

出所したら被害者の方にできるだけ早く被害金を弁済したい気持ちは勿論あるが、被害者の方々はご高齢で受け取っていただけるかもわからない。
中には、詐欺に遭い、そのことを家族含め誰にも言えなかったり、お金を騙し取られたことを責められて自殺してしまう方もいるらしい。

勿論私一人が受け子をしなかったからと言って、特殊詐欺の被害が一つ減るかはわからない。詐欺業界は常に人手不足であり、Twitterで検索してみればわかるように、「闇バイト」の募集ツイートは数多くある。
ただ、それでもこの記事を読んでくれた貴方が考え直してくれれば、詐欺の被害は一つでも減らせるかもしれない。

先程も書いた通り、私が今後どのような道筋を辿っていくかはわからない。
ただ、この記事を読んで一人でも思いとどまってくれる方がいることを願っている。

「一回だけやって辞めればいい」と思っている方もいると思う。だが、応募した詐欺グループは貴方の全ての情報を掴んでいて、それで脅して長く働かせようとする。一度だけやって辞めることなど出来ないのだ。
また、実際に働いて、手元に多額の現金が来たとき、貴方はもう少しだけ、となってしまうと思う。

そして受け子を始めようか悩んでいる貴方は、今まともな精神状態ではない。私もそうだった。まともなら犯罪をしてまでお金を稼ごうとはならないのだ。お金に困り果てて本当にどうしようもないのであれば、周囲に恥を恐れず相談するべきだ。犯罪を犯すよりも、前科がつくよりもずっといい。

そして、受け子は絶対に捕まる。
捕まらないのであれば受け子の募集なんてしないし、大々的なニュースにもなっていない。
リクルーターの言う、「捕まった人間はいない。見張りも護衛もついている。」当たり前だが、そんなわけもないし、たかが使い捨ての駒に過ぎない人間にそこまでの手間も払わない。

貴方はこの記事を読んでどう思っただろうか。この記事を読んでまで、それでも受け子等をすると言うのであれば、私はもう止められない。
私は何も調べずに、何も考えずに始めてしまったが、貴方はこうして調べて、読めている。少しでも考え直してほしい。
私は、始めた後にこんなことをしなければよかったと後悔したが、それではもう遅いのだ。
私は受け子を始めてしまっただけでなく、海外逃亡犯にまでなってしまったのだ。

良ければだが、noteに私のように受け子をして逮捕された方で記事を残している方がいる。そちらの記事も調べて読んでみてほしい。

最後に、私はこれで日本に帰国し、出頭する。その後出られるのは保釈かもしれないし、刑期満了後かもしれない。
更新ができるかはわからないが、少しでも多くの方にこの記事が届いてくれることを祈っている。


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