僕たちの宝物を探しに<夫婦世界一周紀78日目>
きっかけは3日前。ツアーガイドのオットマンが「お前たちに化石を見せてやる」と言ってきたところからだ。
宿の洗面所には一面の化石が散りばめられた大理石が使用されていた。てっきり人口的に作ったのかと思いきや、冗談じゃないとオットマン。
「これは全てサハラに転がっているんだぞ」
僕たちは半信半疑だった。サハラで化石が取れるイメージが湧かない。化石と言ったらほら、ヨウバケみたいなところをいうんでしょう。でっかいカニの化石が置いてあって、こんなのをとれるんだとワクワクしたものだ。結局取れたのはサンドボールっていう石が転がって、丸くなった石が石と同化したっていう結局石の化石。家族でも学校でも行ったけど、結局取れたのはサンドボールだけだった。石の化石ってそんなのありか。
ところが、オットマンに連れられて荒野に出て歩いた途端、
「ほらあった」
とオットマン。石にはくっきりとアンモナイトの痕が残っていた。
しかも、ここの化石は僕の知っている化石のあり方と全く違った。石に入っているのではなく、ただ「転がって」いるのだ。1億年前には海底だったというこの一帯だからこその奇跡だった。
ガイドで行くというから、てっきり人口の化石を入り混ぜたようなせこい場所なのかと思っていたのだ。それは完全に化石だった。天然だ。天然じゃないはずがない。
それからは夢中になって拾った。オットマンは見つけるのがめちゃくちゃ早い。ほら見つけたと言って辺りを丸く指差した。先に見つけられている中でアンモナイトを探すほど悔しいことはない。でもそれをやめてくれと説明することが出来なくて、オットマンにもう帰ろうぜと言われるまで夢中になって砂を荒らした。
次の日になっても僕とフウロは(ほとんど僕が)化石のことを忘れられなかった。僕が拾ったのは直径1センチほどの小さなアンモナイトだ。それでも立派なアンモナイトだが、せっかくここにきたのだ。手のひらサイズのでっかいアンモナイトを自分で見つけて持って帰りたい。僕にとってはどんなに高い香水よりも、何よりも手に入れたい宝物だった。
オットマンに頼んで、「化石を採取するだけ」というオリジナルのツアーを組んでもらい、グーグルマップにも乗っていない道無き道を走ること一時間。
車を降りると、大きな黒い石がゴロゴロしている地帯へと歩いて行った。
「Squid」
オットマンが呟いた。これはつまり、イカ。べレムナイトのことだろうか。だとしたら大変だ。べレムナイトの化石で残っているのは頭の部分だけだという。この70センチくらいの頭を持つイカなんて、直径7メートルにもなる巨大イカだ。その周りにある白い線も全部イカ。こういう石を薄く削って洗面台にするそうだ。持って帰りたいけどでかすぎ重すぎなので断念。
近くにはマップに乗っていない街がある。土で作られた乾燥した街。電気も通っていないらしい。まだこんな世界があるのかと驚かされる。
ここだ、と言うのでみんなで一生懸命アンモナイトを探す。完全にオットマン頼り。この周りに人家も人影も一切ない。少しでもずれたら化石は1ミリもないのだ。不思議と。
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ものづくり夫婦世界一周紀
2018年8月19日から12月9日までの114日間。 5大陸11カ国を巡る夫婦世界一周旅行。 その日、何を思っていたかを一年後に毎日連載し…
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