アニメーションを作る上でゲームに教えてもらったこと

2月17日に3回目の生ゲーム会「なんてことなの。生ゲーム会~アウトサイダー・インディーゲーム祭り~」を開催した。会場も大きくなって 100人を超えるお客さんが来てくれてとても有難かった。今回もあまり知られていない海外のインディーゲームをたくさん紹介した。

イベントの3日前にニンテンドーダイレクトの発表があったのでそれにちなんで「誰も知らないニンテンドーダイレクト」として絵が適当すぎるマリオや、

一見ゲームボーイ風の単なるシンセソフトや、

「ポケモンGO」ならぬ「ポケモンゴル」などを紹介した。

他にもこんまりをいじり倒してるインディーゲームを見て「ホントに向こうでも流行ってるんだなー」と思いを馳せたり、

なんてことなの。独自の「トリミングが雑な写真を使ったゲームは信用できる理論」に基づいた最高ゲームをやったり、

世界観が独特でまさにアウトサイダーとしか言いようのないアドベンチャーゲームをやったり、

雑多かつ盛りだくさんの一夜はあっという間に終わった。きっと世界でもほとんど遊ばれていないであろうゲームを大勢の人と一緒に見て遊べて楽しかった。他に遊んだゲームはこんな感じとか(大体20本前後遊んだ)。

実は今回一番気になったゲーム

色んなゲームを紹介する中でさらっと通り過ぎてしまったけど実は今回見つけた中で最も個人的に興味を持ったのは「Nasty」というゲームだった。そこにはアニメーション作家の自分がなぜこうも表現としてのゲームに魅了され続けているかという答えがあるような気がした。(そしてそれはあまりに個人的な感想だからイベントでは軽い紹介だけに留めた)

「Nasty」のタイトル画面はなかなか気合いが入っている。リアルタッチな2人の男が銃器をもって構えている様が描かれそれは強大な敵との激しい戦いを想像させる。土埃、飛び散る薬莢、血しぶきと聞こえる断末魔…。しかしゲームが始まってみると辺りにスコーンと気持ちいいくらい拍子が抜ける音が響く。

かわいい。かんわいい。あんなにも鬼気迫る表情だった兵士はドットになりてるてる坊主のようなあっさりとした顔になった。そしてさぞや強大かと思われた敵はふがふがしたかわいいエイリアンだった。固定画面で全ての敵を倒すと次のステージへの扉が開くとてもオールドスクールなシステムも意外。

そして取ると得点が入るアイテムはフルーツだ。主人公兵士なんだからせめて札束とか宝石とかの方がいいんじゃないかな…。全体を見るとこんなに可愛いのに主人公の攻撃はほとんど魂斗羅のような激しさ(ほぼまんま)を持っていて「Nasty」の世界観はとてもちぐはぐなものに見える。

だがこのちぐはぐさを持っていることこそが自分が「Nasty」から強烈にゲームらしさを感じる原因にもなっている。

ゲームが過去に蓄積してきたお約束という名の記号

マリオに出てくるコインがコインになった理由はここで生みの親である宮本茂氏本人の口から語られているようにとても考え抜かれたものだ。他の敵キャラと同じように有機物にしてしまうと敵だと勘違いされてしまう可能性があったからプレイヤーが「絶対に欲しい!」と思えるお金にした。

マリオが爆発的にヒットしたおかげでゲームの中にコインが出てくればそれは取っても(触れても)いいアイテムだと認識されるようになった。他にもロードランナーのフルーツやゼルダのルピーなど、様々なゲームが遊ばれる毎に「お約束」が確立されていきそれはゲームが蓄積する膨大な記憶となり、記号となった。(同じように敵や攻撃方法も発明されマネされていくうちにいくつかの定型が生まれた。それは時代を経てグラフィックの幅を持ったことによりさらに細分化される。例えばゲームに慣れ親しんだ者ならばドット絵の主人公が手ぶらの場合とりあえず出てきた敵を踏んでみようと思うだろうし頭身の高いリアルなグラフィックのゲームなら殴れるボタンがないか探すか、逃げるだろう)

おそらく「Nasty」の作者は好きなゲームの持っているお約束をほぼ無意識に組み合わせたんだと思う。それらが元々選ばれていた意味や経緯には思いも馳せずただ「ゲームの持つ記号の記憶」の中から好きな物を採用した。だからこそ「Nasty」はちぐはぐな世界観になってしまったけれど、でも(ここからがとても重要だが)「Nasty」は記号の集積だからこそ娯楽としては何一つ破綻していない。

(終盤になると主人公の火力も納得の難易度になってくる)

ビジュアルより先にルールがある

きっとある程度ゲームに慣れ親しんだプレイヤーなら初見でも「Nasty」をほぼ引っかかることなくプレイできてしまうだろう。

・スクロールしない固定のステージ
・主人公は銃(飛び道具)で攻撃する
・敵に触れると死ぬ
・敵をすべて倒すとステージクリア
・アイテムを取ると得点がアップする

「Nasty」のゲームのルールは基本的にはこれくらい。例えば主人公を兵士じゃなくロックマンのようなキャラにしてみたり、アイテムをフルーツじゃなく宝石にしてみると少しは世界観の整合は取れるかもしれない。
でも逆に言えばどんなビジュアルであってもこのルールとシステムさえ守られていれば「Nasty」の遊びの根幹は保証される


ゲームは娯楽だからビジュアルの世界観がちぐはぐであっても遊びとして成立していればそれこそが整合だといえる(事実、「Nasty」は遊んでみるとけっこうおもしろい)。

これは多くのゲームのビジュアルがルールやシステムありきで決まっていることを示していると思う。絵やアニメーションのみではゲームにならないのだから当たり前といえば当たり前のことだけどこの考えは絵が描けないのにアニメーション作家になった自分にとてもフィットするし、救いに近いシンパシーを覚える。(個人的に現在ビジュアルを伴う表現の中で最も豊かなのがインディーも含めたゲームの世界だと思っていて、それはこのゲームとして成立していればビジュアルはいかようでも構わないという優先順位の妙が生み出す幅ゆえだと思う)

意味を伝えることこそが大切でそこに技巧は問わない

自分が絵が描けないのにアニメーション作家をしていることはこのnoteに書いた。26歳から始めたがその時点でなんの技術も持っておらず趣味で絵を描いていたわけでもない。とにかくこの仕事をする上で本当になんの武器も経験もなかった。

最初の5年くらいは必至で技術を習得しようとしたけど、習得しようとする技術の先にはすでに優れた先人がたくさんいて才能ある彼らは毎日研鑽も重ねていたしその多くが自分よりも若かった。この差はどうやっても埋まらないと絶望したこともあったけど、そもそも自分がアニメーションを作りたいと思ったのは以下のような理由からだった。

絵が描けなくてもアニメーションが作れると思ったのはこの表現の中に開かれていた自由を信じたからだった。アニメーションは何でもできる。好きなキャラを出し、好きな動きをつけて、好きな街を描き、好きな空の色を塗って、好きな位置から好きなカメラで好きなように撮ることができる。重力も慣性も自分の気分で思いのまま描ける。そして、もっとも重要で自分が信じて掴みたかったのはそのすべてを自分の意志で「描かなくてもいい」という選択の自由だった。

「描かなくてもいい」ということは言い換えれば「自分の伝えたい意味さえ伝わればいい」ということ。森を描くのにリアルな木々を何万本も描く必要なんてない。それに気づいた後の自分が作ったアニメーションではただ手を広げただけのサーファーが波っぽいものの上を移動することがベースになっていて、まったくもってアスリート的に技巧を凝らしたアニメーションを作る考えから離れている。このアニメーションは海外の動画サイトで評価してもらえた。

この考えに至れたのは記号の集積であるゲームに自分が慣れ親しんでいた経験が大きいと思う。アニメーションに直接関係する武器は何一つ持っていなかったがゲームに没頭してきた経験がアニメーションを作る上で自分の武器になってくれた。

ルールやシステムが全うされていれば絵が破綻していても遊べてしまう、というゲームの大きな特徴を自分のアニメーション制作に置き換える。また、ハードのスペックの制約によってグラフィックを制限された中で工夫しながら意味を伝えようとしてきたレトロハードの名作たちの事も頭に浮かんだ。自分は絵が描けないアニメーション作家だが絵が描けないということを逆手にとった自分にしか思いつけない応用や工夫がきっとある。自分の実力のなさに思わず祈りを捧げてしまう夜もあるけれど、ゲーマーにいつか祈りが届くことを教えてくれたのだって神でも仏でもなく「MOTHER2」だろう。

長くなったけどいま自分が思っているのはこんな所です。最後まで読んでくれてありがとう。自分は今年少し長いアニメーションを作る予定でいて、それは普段紹介してるゲーム達に負けないように良いものにしようと思ってます。まだまだ完成は先になると思うけど、見てくれたら嬉しいです。次のゲーム会は東京で5月、6月には大阪でもやろうと思っています。ゲームは本当にすばらしい。遊ぶたびにその想いが強くなる。今回来れた人も来れなかった人もまた会いましょう。


イベントで紹介したゲームと紹介できなかったゲームを紹介した後夜祭配信

今年完成予定のアニメーションの制作日記。月額1000円だけど思ってることをほとんど書いてます。

配信はけっこうな頻度でやってるんでいつか良かったら見にきてください。

それにしても「Nasty」はジャケの絵と中身の絵がぜんぜん違うのもゲームのお約束を体現してるみたいで好きだな。


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