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【R5上下水道部門:上水道及び工業用水道】Ⅲ-2[添削論文]/技術士第二次試験

【1】 はじめに

 以前、私の下記noteで受講生さんの試験後の「再現論文」を投稿しました。

 この記事では、再現論文に対する添削事項、添削後の解答論文などを以下に掲載します。

※注意事項: 2024年4月16日(火)より、本記事の【5】以降は有料版とします。


【2】 問題文

 日本の水道は、人口減少に伴う給水収益の減少や水道事業者の技術者不足に加え、高度経済成長期において集中的に整備してきた水道施設の老朽化の増大が顕著となっている。また、耐震化の遅れや多数の水道事業者が小規模であり経営基盤が脆弱である。 これらの課題を解決し、 将来にわたり、安全な水の安定供給を維持していくためには、水道事業の基盤強化を図ることが急務となっている。
 上記の状況と改正水道法による国の基盤強化の基本的な方針を踏まえ、水道分野の技術
者として、以下の問いに答えよ。

(1)水道事業の持続性を確保するために、技術者としての立場で多面的な観点から検討すべき課題を3つ抽出し、 それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。

(2)前問(1)で抽出した課題から最も重要と考える課題を1つ挙げ、その課題に対する
複数の解決策を示せ。

(3)前問(2)で示したすべての解決策を実行しても新たに生じうるリスクと解決策につ
いて、専門技術を踏まえた考えを示せ。


【3】 再現論文(添削前:by 受講生)

(注)noteの表示上、項目名を下線で表示できないので、太字で表示させます。また、最後の1文も太字で表示させます。

(1)水道事業の持続性を確保する観点及びその課題
 我が国の水道事業の持続性を確保するために1)財政面、2)技術面、3)施設面の各観点に対する課題を以下に述べる。
●観点1:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。具体的には、水道料金の値上げ及び水道事業の民営化などが挙げられる。
●観点2:技術面の課題
 技術面の課題に対して、水道事業者の技術者不足を解消する必要がある。具体的には、技術者の育成及び技術者の定着を促す施策が必要である
●観点3:施設面の課題
 施設面の課題に対して、水道施設の老朽化を解消する必要がある。具体的には、水道管の更新及び耐震化の推進が必要である

(2)最重要課題及びその解決策
 前問で挙げた3つの課題のうち、最も重要な課題は「財政面の課題」である。以下に、その課題に対する複数の解決策を述べる。
1)水道料金の値上げ
 水道料金を値上げすることで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、料金値上げには、低所得者層への影響が懸念される。
2)水道事業の民営化
 水道事業を民営化することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、民営化には、水道事業の公共性が失われることが懸念される。
3)水道事業の統廃合
 水道事業を統廃合することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、統廃合には地域住民の反発が懸念される。

(3)新たに生じうるリスクと解決策
ⅰ)新たに生じうるリスク
・「水道料金の値上げ」によって、料金負担が重くなり、水道使用量の減少、水道料金の滞納、水道の不正使用などが生じる可能性がある。
・「水道事業の民営化」によって、民間企業が水道事業を運営することになるため、水道料金の値上げ、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大などが生じる可能性がある。
・「水道事業の統廃合」によって、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の運営効率の低下などが生じる可能性がある。
2)新たに生じうるリスクに対する解決策
 これらのリスクに対する解決策を以下に述べる。
・「水道料金の値上げによって生じるリスク」に対しては、水道料金の適正化による料金負担の軽減、水道使用量の減少に対する節水啓発活動の実施、水道料金の滞納に対する徹底した取り締まりを行う。
・「水道事業の民営化によって生じるリスク」に対しては、民間企業との契約において、水道サービスの質の維持、水道料金の適正化、水道事業の地域格差の是正などを明確に規定する。
・「水道事業の統廃合によって生じるリスク」に対しては、水道事業の運営効率の向上、水道サービスの質の維持、水道事業の地域格差の是正を行う。

以上

【4】 評価事項(By 小泉)

 上記記事で私が評価した事項を、以下に再掲します。

 この再現論文の受講生さんの試験結果A評価ではなかったそうです。(BかCは仰られません)。
 しかし、私の評価は当初Aと考えますていましたが、設問(1)及び(2)を再評価し「BC評価」としました。その根拠を以下に示します。

・設問(1)では観点を抽出し、その観点に対する課題を挙げており題意に沿っている。さらに文章が読みやすいため高く評価できる、と当初考えていましたが、「財政面の課題」を設問(2)で最重要課題と述べるため、3つの課題のうち、最後に記載するよう移動させました。
 さらに、各課題の中で次問(2)で問われる解決策を記載しているため、題意に沿った解答になっていない。


・設問(2)は設問に沿った解答であり、高く評価できる、と当初考えていましたが、添削過程で見直すと各解決策において、新たな懸念事項を記載しています。この懸念事項は設問(3)で述べればよいので、題意に沿った解答になっていないと判断します。【5】に示すとおり、設問(2)に対する解答は、ほぼ全面的に書き直しします。
 しかし、ここまで解答用紙に当てはめると、字数がもの足りないのがややマイナスポイント。

・設問(3)は設問に沿った解答であることを評価できる。
 なお、設問(2)の解答を見直したことで、設問(3)の解答を一部加筆・修正します。
・設問(1)~(3)すべて、題意に沿って解答しているため、A評価としてよいと考えます。

 ただし、本論文を解答用紙に本論文を当てはめると、3枚目の半分に満たない字数でした。
 以前、解答用紙3枚の問題に対し、解答用紙2枚目まで書けなくてA評価だった話を聞いたことがあるので、私はA評価はありえると思っていたのですが、この点については正直どう判断してよいかわからなくなりました。
 したがいまして、あえて修正するなら、もっと説明を付け加えることくらいかな、と考えています。

【5】 解答論文(添削過程:By 小泉)

 ➀追記・修正箇所を「太字」、②不要箇所を「取り消し線」、③部分的なアドバイスを「( )書き」で示しました。

(1)水道事業の持続性を確保する観点及びその課題
 我が国の水道事業の持続性を確保するために1)財政面、2)技術面、)施設面)財政面の各観点に対する課題を以下に述べる。
●観点1:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。具体的には、水道料金の値上げ及び水道事業の民営化などが挙げられる。

●観点1:技術面の課題
 技術面の課題に対して、水道事業者の技術者不足を解消する必要がある。具体的には、技術者の育成及び技術者の定着を促す施策が必要である。(←この1文が解決策に相当する)
●観点2:施設面の課題
 施設面の課題に対して、水道施設の老朽化を解消したうえに災害対策を実施する必要がある。具体的には、水道管の更新及び耐震化の推進が必要である。(←この1文が解決策に相当する)
●観点3:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。具体的には、水道料金の値上げ及び水道事業の民営化などが挙げられる。(←この1文が解決策に相当する)
 
(2)最重要課題及びその解決策
 前問で挙げた3つの課題のうち、最も重要な課題は「財政面の課題」であと考える。以下に、の課題に対する複数の解決策を述べる。
1)水道料金の値上げ
 水道料金を値上げすることで、事業体の収入が増加するため水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、料金値上げには、低所得者層への影響が懸念される。
2)水道事業の民営化
 水道事業を民営化することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、民営化には、水道事業の公共性が失われることが懸念される。
(↓ すべて書き直しします)
 民間企業による水道事業の運営により、経営効率が向上し、コスト削減が期待できる。また、民間企業は事業の拡大及び新規事業の開発により、収益を増やすことができる。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
3)水道事業の統廃合
 水道事業を統廃合することで、水道事業の財政基盤を強化することができる。ただし、統廃合には地域住民の反発が懸念される。事業の効率化が図られ、コスト削減が期待できる。また、統廃合により、水道事業の規模が拡大し、収益が増加することが期待されます。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
 
(3)新たに生じうるリスクと解決策
ⅰ)新たに生じうるリスク
・「水道料金の値上げ」によって、料金負担が重くなり、水道使用量の減少、低所得者層への影響、水道料金の滞納、水道の不正使用などが生じる可能性がある。
・「水道事業の民営化」によって、民間企業が水道事業を運営することになるため、水道料金の値上げ、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の公共性の喪失などが生じる可能性がある。
・「水道事業の統廃合」によって、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の運営効率の低下などが生じる可能性があるため、適切な規制、監督、及び慎重な検討が必要である。
2)新たに生じうるリスクに対する解決策
 これらのリスクに対する解決策を以下に述べる。
・「水道料金の値上げによって生じるリスク」に対しては、水道料金の適正化による料金負担の軽減、水道使用量の減少に対する節水啓発活動の実施、水道料金の滞納に対する徹底した取り締まりを行う。
・「水道事業の民営化によって生じるリスク」に対しては、民間企業との契約において、水道サービスの質の維持、水道料金の適正化、水道事業の地域格差の是正などを明確に規定する。
・「水道事業の統廃合によって生じるリスク」に対しては、水道事業の運営効率の向上、水道サービスの質の維持、水道事業の地域格差の是正を行う。

以上


 添削過程の解答論文だけでは、最終的にどんな論文になるのかわかりづらいと思いますので、下記【6】に添削後の解答論文を示します。
 なお、noteの表示の制約がありますので、実際の解答論文では太字で表示することはありません。鉛筆・シャープペン書きなので。
 下記【6】で太字で示した文字は、実際の解答論文では下線を引いて表示します。

【6】 解答論文(添削後:By 小泉)

(1)水道事業の持続性を確保する観点及びその課題
 我が国の水道事業の持続性を確保するために1)財政面、2)技術面、3)施設面の各観点に対する課題を以下に述べる。
●観点1:財政面の課題
 我が国の水道事業は財政基盤を強化する必要がある。
●観点2:技術面の課題
 技術面の課題に対して、水道事業者の技術者不足を解消する必要がある。
●観点3:施設面の課題
 施設面の課題に対して、水道施設の老朽化を解消したうえに災害対策を実施する必要がある。
 
(2)最重要課題及びその解決策
 前問で挙げた3つの課題のうち、最も重要な課題は「財政面の課題」と考える。以下に、この課題に対する解決策を述べる。
1)水道料金の値上げ
 水道料金を値上げすることで、事業体の収入が増加するため水道事業の財政基盤を強化することができる。
2)水道事業の民営化
 民間企業による水道事業の運営により、経営効率が向上し、コスト削減が期待できる。また、民間企業は事業の拡大及び新規事業の開発により、収益を増やすことができる。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
3)水道事業の統廃合
 水道事業を統廃合することで、事業の効率化が図られ、コスト削減が期待できる。また、統廃合により、水道事業の規模が拡大し、収益が増加することが期待されます。これらにより、自治体の財政基盤が強化され、公共サービスの維持・向上につながる。
 
(3)新たに生じうるリスクと解決策
ⅰ)新たに生じうるリスク
・「水道料金の値上げ」によって、料金負担が重くなり、水道使用量の減少、低所得者層への影響、水道料金の滞納、水道の不正使用などが生じる可能性がある。
・「水道事業の民営化」によって、民間企業が水道事業を運営することになるため、水道料金の値上げ、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の公共性の喪失などが生じる可能性がある。
・「水道事業の統廃合」によって、水道サービスの低下、水道事業の地域格差の拡大、水道事業の運営効率の低下などが生じる可能性があるため、適切な規制、監督、及び慎重な検討が必要である。
2)新たに生じうるリスクに対する解決策
・「水道料金の値上げによって生じるリスク」に対しては、水道料金の適正化による料金負担の軽減、水道使用量の減少に対する節水啓発活動の実施、水道料金の滞納に対する徹底した取り締まりを行う。
・「水道事業の民営化によって生じるリスク」に対しては、民間企業との契約において、水道サービスの質の維持、水道料金の適正化、水道事業の地域格差の是正などを明確に規定する。
・「水道事業の統廃合によって生じるリスク」に対しては、水道事業の運営効率の向上、水道サービスの質の維持、水道事業の地域格差の是正を行う。

以上

【7】 おわりに

 疑問点、さらなる改善事項等ありましたら、コメントをいただけますとありがたいです。
 
 よろしくお願いいたします。


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