IMGP7948のコピー

発電用水車(素人工作)

木造で発電用の上掛け水車を作りました。上掛けとした理由は常に上流から小石や流木などの異物が流れて来ることがあるからです。また、季節や降雨によって極端な水量変化がある為、動作域が広い必要がありました。

木造なのは材料が安かったからです。直径170cmの水車で、12mm厚サブロクサイズのコンパネ4枚と、4mm厚サブロクサイズの耐水合板5枚を使って作りました。

コンパネ1枚で片側半周。半円2枚を防錆塗装したジュラルミン板で接合します。それを2セット作り、羽を両側から挟む構造です。

コンパネにトリマーで深さ5mm幅5mmの溝切りをして、その溝に4mm厚の耐水合板を嵌める構造です。水車の羽となる合板の両端にはアルミチャンネルとアングルを組み合わせた補強材を接着して強度を増し、溝からの脱落を防止しています。

軸は安く手に入るSUJ2のリニアシャフトです。軸と水車はブッシングプーリーに穴を開けてM6ボルト10本(両側で20本)で締結しています。

素人の日曜大工でも確実な工作ができるように、作り易く、構造はシンプルに、そして高効率を狙った設計です。CADを持っていなかったので、Macに付属するGrapherを使って、数式で図面がわりの線を引きました。現物には定規とコンパスだけあればカットや溝切りの線が引けます。

羽根の枚数は24枚としました。
分度器を使わずに、定規だけで単純に90度を等分して行くと、羽が16枚では疎過ぎて効率が悪く、32枚では密過ぎて開口面積が狭く水の出入りが悪くこれも効率が良くない。

そこで、sin30°=0.5を利用して、円の中心を通る直線の、中心から円周までの半分の長さの点で直交する直線が円周と交わる点を等分して行くことで、定規だけで円を24等分しました。

流体シミュレータが無いので、とりあえず作りやすいこの構造で考え得る高効率の条件を考察します。
上掛け水車なので、水の自由落下の速度よりも早い周速で回転することはトルクが0以下になるので不可能です。この時水車は理論上の最高速度で回転しています。
一方、回転を停止させた状態では、バケットに満たされた水に働く重力によって回転軸にトルクを生じます。この時水車は理論上の最大トルクを発生しています。

ここで、出力p[W]はトルクτ[N*m]と角速度ω[rad/s]の積(p=τω)なので、上記の両極端な状態では水車出力p=0であり、その間の速度域の何処かに最大出力点が存在することになります。

自由落下の速度は変えられないので、停止状態の水車で有効径のバケット中を出来るだけ水で満たすような羽の配置、つまり、静止トルクが最大になるような羽の形や配置が高効率化への方向性となります。厳密には遠心力と落下速度の影響を受けるのでその限りではありませんが、そうした動的な状態の計算はシミュレータが無ければ正確性に欠けるので、この際行わない事にします。
というか出来ませんし(笑)。

そのほか、想定される水量の出入りを妨げない開口面積と、流入して来た水が羽に当たった際に出来るだけ抵抗にならず、バケットが真下に来たときに水が確実に排水される羽根の角度、そして適切な有効径になるように羽の深さもにも注意を払う必要があります。これらの条件は背反するので、ちょうど良い点を見つけ出す必要があり、そこが高効率化のミソでもあります。流体シミュレータが無くとも素人工作で工夫すれば意外と何とかなります。

この水車は直径170cm幅31.4cmで、最大出力0.8kW、最大トルク300N*mで設計しました。落差2mちょっとのところで発電に使っています。


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