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地デジ波の測定法

この地デジ波を用いた天気予報は、経路中の媒質による電磁波の吸収特性の変化を捉える事で行います。

地デジ波の受信強度を測定し、遠くにある雨雲を検出する事で予測します。フラットフェージングの影響を受けにくいように近接したチャンネル間の受信強度を比較し、水力発電に寄与するような纏まった雨を降らせる厚い雨雲の有無に相関性のある情報を抽出します(にわか雨に惑わされないようにするのがミソです)。

そのためのアナログフロントエンドの設計として、受信部の構成を考えます。

このようなアプリケーションは今時安いSDRドングルとソフトウェアで手軽に作ってしまっても良いのですが、今回はヘテロダインを弄って遊びたいので趣味的にアナログ高周波信号処理のハードウェアを設計しました。

また、有り合わせのマイコン内蔵の低速な12ビットA/Dコンバータで信号を取り込むため、ダイレクトサンプリングするにはスペックが足りないので、時代にそぐわずアナログで信号処理する部分が少し多めです。

地デジ波の構造は、1チャンネルに6MHzの帯域が割り当てられており、その帯域を14等分したうち1個分を両端に半分ずつ隣接チャンネルとのスペースとして空け、5.57MHzの帯域の13個分がセグメントとして使用されます。中央の1個のセグメントがワンセグ用、残りの12個のセグメントが地デジフルセグ用となります。

各セグメントには432本のキャリアがあり、全13個のセグメントで端から端まで5617本のキャリアがあります。映像や音声、その他データなどが乗ったキャリアは常に変調されているため、それらの信号レベルを直接測定すると値が不安定になり、精密な測定には不向きです。しかし、上端のキャリアには変調されないパイロット信号が乗っており、これに焦点を絞る事で安定的に信号レベルを測定することができます。

パイロット信号に焦点を絞るには、古典的かつ今もなお代表的な受信方式であるスーパーヘテロダインを用います。まずはスーパーヘテロダインの設計をします。

スーパーヘテロダインの原理は、sin(α)sin(β)=[cos(α-β)-cos(α+β)]/2 を利用し、受信周波数f_RFと局部発振周波数f_LOをミキサー(この場合は乗算器)により乗算し、イメージ周波数として|f_RF-f_LO|とf_RF+f_LOを得たのち、バンドパスフィルタによりそのイメージ周波数の目的の帯域を選択して中間周波数f_IFを得るというものです。

今回のアプリケーションでは測定対象の周波数帯としてUHF帯の地デジ波(470MHz~710MHz)の他に、せっかくなので序でに電離層による異常伝播の観測にも使えるVHF帯のFM波(76MHz~108MHz)も扱います。

余裕を持って64MHz~770MHzあたりの範囲で受信できるように設計します。スーパーヘテロダインの受信範囲を決定づける中間周波数f_IFは、2*f_IFとIFバンドパスフィルタの帯域と肩特性を考慮して、ざっくり360MHz~420MHz程度が良いでしょう。

IFバンドパスフィルタの候補として、中心周波数400MHz通過帯域幅250kHzのSAWフィルタ(ナロー)、中心周波数386MHz通過帯域幅30MHzのパッシブフィルタ(ブロード)を選定しました。また、ミキサー(乗算器)としてADL5801、局部発振器としてADF4350を選定しました。

続いて、地デジパイロット信号を抽出できるように、より狭帯域で急峻なバンドパスフィルタを通す必要があります。そこで、続けてもう一段スーパーヘテロダインを用いて、IFフィルタとして水晶振動子を利用して自作したラダー型クリスタルフィルタに通します。

マッチングトランスはコア材としてT-25-2を2つ重ね、φ0.2mmのポリウレタン線を30回と18回巻きました(巻線比5:8)。水晶振動子はその辺に転がっていたものを無選別で使用しました。シールドケースは0.8mm厚の銅張基板をハサミで切って半田付けして組みました。

初段IFフィルタがナローの場合、NTSCカラーサブキャリア用の水晶振動子を用いた3.579545MHz6素子(通過帯域幅0.5kHz)を使用します。

初段IFフィルタがブロードの場合、32MHz6素子(通過帯域幅6kHz)または、3次オーバートーンクリスタルを用いた48MHz6素子(通過帯域幅15kHz)を使用します。

2段目ミキサーとしてAD831、2段目局部発振器としてADF4350を選定しました。

32MHzと48MHzのフィルタはパイロット信号を抽出するにはまだ狭帯域化が不十分なので、更にもう一段スーパーヘテロダインを用いて、3.579545MHzのフィルタを通します。

3段目ミキサーとしてNJM2594を選定しました、3段目局部発振器は未定です。

クリスタルフィルタはロスが大きいので、場合によってはプリアンプかポストアンプが必要になるかもしれません。また、必要に応じてIFにAGCを挿入すべきかもしれません。

これらの回路を通して特定のチャンネルのパイロット信号を抽出したのち、ログアンプAD8310に入力して対数スケールに変換した後、マイコン内蔵のA/Dコンバータで取り込んで信号レベルを測定します。

以上の回路構成を、アンテナを含めた全体像として示します。

初段IFフィルタがナローの場合は以下のようになります。

初段IFフィルタがブロードの場合は、ヘテロダイン部は以下のようになります。

これから部品の調達が完了次第、実験を通してFM波の測定を含めた適切な構成を検討していこうと思います。

また、マイコン内蔵の低速なA/Dコンバータで不十分なスペックながら無理矢理ダイレクトサンプリングしてデジタル信号処理によるAMやFMの復調が可能か実験してみようと思います。その場合、ナイキスト周波数の関係で最終的な中間周波数は500kHz以下にする必要があります。

今回は実験的にAmazonで入手可能な電子部品を主に用いて構成しました。ダブルバランスドミキサや局部発振器用のPLLシンセサイザモジュールの基板が数千円で手に入ります。その他はおなじみ秋月電子と有り合わせで調達しました。

#実験 #アンテナ #電波 #高周波 #スーパーヘテロダイン #DIY

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