物語100連発 その20 ~World Recorder 4~

「なによ、久々の再開だっていうのに。」
「でもシャルロットは喜んでたみたいだぞ、
俺と二人の時はあんなに落ち着いてなかったし。」
「そう?」
早足で転送の部屋に入る。
「これ、二人同時に行けるのか?」
意外とせまいこの黒い円柱からはみ出るとどうなるのか不安でしょうがない。
「大丈夫よ。こうすれば。」
茜が体に抱きついてくる。
「まぁ、そうだな。」
パッ
再び来た時と同じ視覚の変化をたどり、
戻れた。
ガチャッ
扉が‏開き、ホスト風の男が顔を出す。
「ゴホン、戻ってきたか。司令室に来い。」
ガチャッ
「気不味かったんだろうな。」
「うん、ジュリエットには後であたしから言っとくわ。」
ホストみたいな格好してるのに、名前がジュリエットか。
ほんと、変わってるな。
俺達は二人して食料庫で適当なものを見繕い、
といってもあのペースト状のやつしかないんだが
腹6分目にして、司令室に向かった。
プシューッ
如何にも密閉されていたかのような、
音を上げながら扉が開く。
イギリスのあのギーギなる扉とは天地の差だな、
飯は逆だけど。
「さて、よく来てくれたな。
それではまずはこれを見てもらおう。」
コートの男がこれまた変なリモコンを操作し、
奥にある巨大ディスプレイを起動する、
だが操作が分からないらしく、入力切り替えを何周もする。
「司令は昔から機械オンチの栄司司令って有名なの。」
茜がボソッとコート男の弱点を俺の耳元でつぶやく。
「はぁーい、わたくしのでばーんのようですね。」
後ろから現れた博士が司令から
リモコンを受け取り、すばやく操作する。
パッ
一瞬だけ画像があらかったが、
すぐに綺麗な画面が表示される。
「ゴホンッ、博士、これからは時間厳守でお願いしよう。」
「わーかりまーした。」
カタカタカタ
素早く端末に何かを打ち込む。
ボウッ
一瞬何かのノイズが入った後、
街の様子が写される。
これは多分監視カメラの映像だ。
3人の人がナイフで切り合っている。
地面のいたるところに真っ赤な模様が描かれる、
バサッ
1人が倒れた。
残り2人はずっと睨み合う。
そして画面端に何かが写った瞬間に
急に力を失い、前のめりに倒れる。
パッ
画面が真っ黒に戻る。
「現在、君と茜が住んでいた街のいたるところで
こういった殺人が頻発している、
ちなみに最後のは銃弾だ、あの街の治安維持組織を襲って手に入れたのだろう。
これを見せたのは他でもない、計画がフェーズ1へと移行したことを、
君に報告しておきたくてね。
もちろん、君がシャルロットと楽しんでいた間も映像は取ってある。
後で部屋に運ばせよう。
傍観者たる君にはそれらをしっかりと見つめて欲しい。」
「分かりました。」
「それと茜、君に頼みたいことがある。」
「何?」
司令と仲がいいのか、階級が違わないのか
意外とフランクだな。
「他でもない、昨日来た残党の殲滅だ。」
「分かりました、でも睦望と一緒でも?」
「構わないが、死守するように、
それなら1人連れて行け。」
何か怖いことになってないか?
「じゃあ、百姫さんで。」
「彼女なら適任だな。」
司令が手元の端末に向かい、
カタカタと何かを書き込む。
「いろいろ準備にかかるだろう、
先に入り口に行っておくと良い。」
俺と茜は例の入り口に向かう。
途中で簡易的な装備が入ったバッグをジュリエットから手渡された。
中には水2l、例のペーストが印刷された缶詰がいくつか、それに拳銃とホルスター。
俺がは拳銃を取り出して、
セーフティーとマガジンの中身を確認する。
「ああ、その拳銃ね。
当てにならないから、困ったらあたしが何とかするわ。」
それにムスッとしたジュリエットが
若干怒って
「茜は射撃訓練をサボりすぎだ、
いくら最上級の能力があろうとも、最後に頼りになるのは
フィジカルと、こういった原始的な武器だ。」
「それは、その、分かってる。」
茜も図星を付かれたように声が小さい。
「そうだ、睦望、これも渡しておこう。」
デカめのナイフ、きちんと鞘に入っている。
「丁寧にありがとうございます。」
「何、最初会った時に手酷くしてしまったからな、
そのお詫びというのもなんだが。」
「あの時は俺も、何にも分からないで、殴りかかって、
すいません。」
「いや、いいんだ。」
「あらあらあら~。」
後ろから艷やかな声が聞こえる。
振り返ると、黒の上着に、白のパンツを着た、女性。
胸部の膨らみから思わず牛を連想してしまう。
「お邪魔だったかしら、続けて続けて。」
「彼女は百姫さんだ、
頼りにはなるが、その気をつけてな。」
ジュリエットが同情気味の視線を一瞬向けたあと、
すぐに走って立ち去る。
これは、過去に何かあったんだな。
「百姫!」
そう言って茜がぎゅーと抱きつく。
凄いな、抱きついてもなお、はみ出す胸部の肉。
何というか、狐女にも負けていないぞ。
「ちょっと茜、そっちの子が?」
「うん、睦望。
今回の大戦の」
「普通の男の子じゃない!!」
百姫さんは、何かめっちゃ目を輝かせてる。
ゲームでレアキャラを引いたみたいな感じで。
ペコッ
「宜しくおねがいします。」
俺は角度30度に完全調整されたOZIGIを披露する。
こういうのは第一印象が大事だからな。
ん?何か迫ってきてる?
頭を上げると
ポヨン
百姫さんの胸に頭が当たる。
「す、すいません。」
素早く後ろに下がる。
ポヨン
後頭部が柔らかいものに当たる。
二人いたのか!
見た目が全く同じだ。
「分かった? これが私の能力よ。」
「分かった? これが私の能力よ。」
ほぼ同時に前後から話しかけられる。
分身を作れる能力。
パッ
後ろの百姫さんが唐突に消える。
「百姫、あんたね~。」
「あらあら、お姉さん張り切りすぎちゃったわ~。
腰が痛くなってきたから、背負って?」
そう言いながら近づいて凄い力で回れ右させ、
俺の背に飛び乗る。
重っ くはない。
だが、感触的に危険な感じしかしない。
「やめなさい!」
ペシッペシッ
どこから出したのかわからん、ハリセンで
百姫さんの頭をペシペシ叩く。
「嫉妬かしら?」
「どうでもいいでしょ~~!!」
そう言いながら
ビュッパチッ
ハリセンが出せる域を越えた音が鳴った後、
体が軽くなる。
降りてくれたのか、いや足が浮いてる。
「ちょっと怖いんですが。」
「大丈夫、リラックスして。」
耳元で優しく囁かれて背中がビクッとなる。
そもそも背中の感触的に出来ねぇよ!!
「ちょっと、基地内でサイコキネシスは禁止でしょ!」
「細工してるの、若い娘には無理でしょうけどね~。」
既にかなり浮いていたので3mほど下から茜が叫ぶ。
それを百姫さんがおちょくる形、女の喧嘩って怖いな。
「入り口まで借りるわ。」
そう言うと、
スススッ
まるで水の中を進むみたいに一定の速度で天井スレスレを移動する。
「お、覚えてなさいよ!睦望!!」
何でなんだよ!
茜は廊下を走りながら付いて来る。
「ちょっと、速くするわね。」
ビュッ
急に速くなる。
だが振動がないせいか酔う感じじゃない。
入り口のコンクリートの壁が見えてきた。
派手に壊されてたが、直ったんだな。
「えいっ。」
胸を俺の背中に押しつけ、
腕で扉を開くような動作をした瞬間、
ゴゴゴッ
コンクリートの壁が以前見たのより
かなり速く開いていく。
あんなデカくて重いものを、サイコキネシスで動かしたんだ。
「凄いでしょ?」
「す、凄いです。」
胸と、能力どっちの意味でもな。
スタッ
徐々に高さが落ちていき、
地面に降りる、そして百姫さんも俺の背から降りてくれる。
ほんと、心臓に悪いなこの人。
ずっと心臓がバクバク言ってたよ。
タタタタッ
「はっ、はっ、やっと着いた!!」
人間の膂力ではない感じの見事な走りで
わずか数秒後に茜が現れる。
「睦望、覚えてなさいよ。」
ギロッと俺の方を睨む茜はとんでもなく怖い、
まるで般若面のようだ。
「全く、最近の若い娘は。」
「うっさいわね、オバサン!」
「オバサン!?
茜ちゃんだってあたしと7個しか変わらないでしょ!!」
「7個も違うんですぅ~。」
「茜、今のは言いすぎだろ。」
俺は百姫さんに胸を貸してもらった恩もあり、茜を注意しとく。
「睦望ぃ~!?」
茜が顔面全体に血管を浮かび上がらせ、キレる。
やっちまった。
「あんたなんて。
百姫に守ってもらいなさいよ。
あたしは知らないから。」
「いや、すまん。」
「もう知らないって言ってんの。」
俺は茜の方に近づいていき、
グッ
手を握る。
「すまなかった。」
「こんなことで許されると思ってんの。
その、今回だけよ。」
「分かってる。」
横でそのやり取りを見ていた百姫さんがこれ以上ないほどニヤけてる。
「若いって良いわね。」
「百姫さんもまだまだお若く、お美しゅうございます。」
照れちまった俺よ、また何を口走ってんだ!
合ってるけどね、
実際年齢は俺より一回り上っぽいが
ファッションモデルとかに出てきそうなレベルだ、
一生かかっても会えないレベルの美貌を持ってる。
ゴキッ
手を握り返す茜の握力が関節に異音を上げさせる。
俺は左手で茜の手の甲に”おせじ”と書く。
弱いやつのの二枚舌外交って強いられてするもんなんだな。
「茜ちゃん、そういうわけだから。」
そう言うと、百姫さんが俺の左手を掴む。
「とにかくとぶから。」
「ポイントは?」
「適当で。」
「それじゃあ、せーのっ。」
パッ
瞬時に視界が虹色のモヤに包まれる。
イギリスにとばされた時と同じやつだ。
パッ
今度は短いな。
「頭下げて。」
茜が俺の頭を掴んで下に押しながら告げる。
百姫さんは既に俺の左手を掴んだまましゃがんでいた。
辺りは森、ただ鬱蒼と木が生い茂っている。
それに下草も全くかられていない、
私有地とかじゃないな。
「これで見て、あっちよ。」
渡された変な形の棒にレンズが着いただけのものを
覗きこむと、透視なのか木が一部だけ透けて見える。
百姫さんが指さした方には昨日襲撃してきた部隊と同じスーツの人間が
20、いや奥にまだいる、30人はいる。
外して分かったが視力増強も出来るのか、凄いな。
「あの人数をたった二人で、
それも茜と百姫さんが?」
残念ながら俺は戦えそうもないぞ。
あの分厚いスーツの感じからして
渡されたナイフも拳銃も効かないだろう。
何より、俺は従軍経験も格闘技の経験もない。
「当たり前でしょ。言っとくけど、
あたしはジュリエットと司令を合わせたよりは強いのよ。」
あの如何にも軍人 といった感じの男20人をわずか数分で殲滅した二人よりもさらに上なのか。
いや、正確には俺が部屋で衝撃を聞いてからあそこに着いた時には既に
1人として生きていなかった。
「あたし1人で行くから、百姫は睦望をよろしく。」
いつの間にか雰囲気が変わっていた茜が百姫さんに託すように告げる。
「任せて。」
茜がバッと奴らの前に飛び出る。
俺は再びあのレンズで覗き込む。
40mはあろうかという距離を2歩か3歩で詰める。
そして後ろから近づきまず5人、
茜が指で銃の形のジャスチャーを向けた途端に倒れる。
「どうした!!! 敵しゅっ」
叫んだ男の声が響くが、既に倒れ始める。
「敵は1人だだ!!」
6人倒した時点で気づかれた。
恐らく、赤外線か何かで茜の姿を捕らえたんだろう。
「タイプA!!」
やっぱり敵もバカじゃない、
何か秘策があるんだろう。
いっせいに逃げていくが恐らく罠だろう。
次の瞬間
ビュッ
ドォォォォォォォン
何かが発射される音に続いて爆風で俺の体が飛び、
後ろの木にぶつかる。
トンッ
百姫さんのサイコキネシスで衝撃はない。
「伏せて、また来る。」
百姫さんが俺の体を抑えて素早く、匍匐する。
ビュッ
ドォォォォォォォン
また爆風だ、
木の破片がいくつも飛んでくるが、
全て百姫さんが手で払った方へ飛んでいく。
俺はもう一度何とかあのレンズを覗きこむ。
かつて彼らがいた場所は地面ごとくり抜かれたようになっていた。
「全く、あの娘ったら。」
「その、これ茜が?」
「ええ、と言ってもあの娘にとっては
ちょっと腕を振った程度よ。」
「ちょっとですか。」
「ちょっとよ。
ちなみに私もこのくらいは出来るわ。」
自慢げにこっちを見てくる。
何というか凄い世界だな、
だいぶ前に見た第2時世界大戦の兵器も顔負けだよ。
「ちょっと怖くなった?」
「怖いです。でも目を放したらいけない気がして。」
「そうね。」
昨日、見届けると誓ったばっかりだしな。
「そろそろ終わりそうね。」
奥から何だあれは!
四角くて巨大な車に、いくつも射出口がある。
「戦車ね、それもだいぶ良いやつみたいよ。」
戦車!
そんなものを相手にするのか。
「まぁ、と言っても国際情勢の影響を受けなかった
後進国から買った骨董品でしょうけど。」
ここ数十年、国際情勢が落ち着き払っていることもあり、
各国の軍事力の低下が激しいらしい、
今だ小数だが、存在するテロリスト相手には
各地の治安維持組織が向かうため、
軍事力というものの必要性が急激に下がった。
その結果兵器の大量廃棄は国際問題にまでなったそうだ。
そして大量廃棄後が終了したのが5年前。
「あれはWW2後に最初に発明されたやつでしょうね。
と言ってもただの機械のおもちゃ。
ちょっとこっち見て?」
そう言って百姫さんが俺の頭を掴んで胸の方に顔を向けさせられる。
パッ
今度は閃光が走る。
「終わった、もう良いわよ。」
「あ、ありがとうございます。」
「ふふっ、あの娘の閃光を直接見ると、
失明はしないけど、目を痛めるから気をつけてね。」
確かに、反対側を向いていたが、ものすごい光だった。
そして金属の溶けたような独特の匂いがしてくる。
茜があの戦車をやったのか。
「終わった。ちゃんと見てた?って百姫!」
俺は匍匐したまま百姫さんに片手で抱きしめられた体勢でいる。
ビュッ
俺の匍匐しているわずか50cm辺りの土が数十cmほどの深さでえぐれる。
「何してんの?」
「こ、これは、その茜の閃光が、危ないからって。」
「そ、そうよね。」
助かった。
百姫さんの腕を何とか解き、
立ち上がると
茜はいつもの茜だった。
「もう帰りましょ。お腹減った。」
「フレイム喫茶に行く、じゃあね。」
百姫さんが急に俺の腕を取り、
パッ
瞬間移動を発動する。
パッ
今度は一瞬だ、
そしてここは?
建物の中、それも日が一切さしてない。
地下か?
「あの娘、味覚障害っぽいから気をつけてね。」
そう言いながら俺の腕をグイグイ引っ張って階段を上がる。
「ここ、あたし達とつながりのある数少ない飲食でね、
重宝するのよね。」
「マスター、彼が例の子よ~。いつもの頂戴。」
階段を登りきった直後に誰かに話しかける。
上に出ると、木製のイスと机で統一されたカッコイイ感じのカフェに出た。
だが誰も居ない。
「おかしいわね~。いつもこの時間には。」
「百姫?」
奥のカウンターから凛々しい女性の声がする。
だが姿が見えない。
ぴょこ
カウンターの下から整ったショートヘアの女性が顔をだす。
「その子がね。」
そう言って立ち上がると、背が高い180はありそうだ。
それにマスターと言われるだけあって、
バーテンダー服を着ているが、
めちゃくちゃ様になってる。
茜があんなの着てもネタにしかならん。
「何、じっと見つめちゃって、
もしかしては年上好き?」
マスターは百姫さんより少し年上っぽいが、
それがまた大人の魅力を醸し出している。
「百姫さんとは違った魅力がっ」
ドスッ
後ろから蹴り飛ばされ床に倒れる。
誰だよ!
振り返ると茜が居た。
「百姫がどうだって?」
ゴミを見るような目でこっちを睨んでくる、茜。
穴があったら入りたい。
またやっちまった。
「ふふっ、睦望君よく見てるのね。」
百姫さんが照れながら倒れた俺に手を貸してくれる。
「全く、とにかく飯よ、飯!」
かなり不機嫌そうな声で飯飯叫ぶ茜をよそに、
マスターがコーヒーを入れ始める。
マイペースだなこの人。
「はやーく、お腹へった!
雅はやくー。」
腹が減ると人格が変わる茜、
こいつ何重人格だよ。
「おまたせしました、茜さま。」
マスター雅はドンッと
どこからか出したパンの耳の山を置き、
俺と百姫さんの所にはサンドイッチとコーヒーを置く。
茜の額にブチブチっと血管が浮かび上がる。
サッ
俺は茜のパンの耳とサンドイッチを素早く交換する。
「ああ、間違いました。」
さも何もなかったかのように
雅さんが俺の前のパンの耳を取り去り、
何かを塗り、オーブンで焼き始める。
何かバターと甘い匂いがしてくる。
その間、俺の両隣に座っていたというか
俺がそうなるように間に割り込んだ二人は
サンドイッチをガツガツ食っていた。
俺はコーヒーをちまちま飲む。
時々、俺を挟んで目から殺気みたいなものを出し合うのだが、
喧嘩するほど仲が良いってやつだろ、多分。
「大変おまたせいたしました。」
出てきたのはミルクのような白い液体と、
スィーツ風にアレンジされたパンの耳。
「じゃ、あたしは帰る。
支払いはあたし名義で。」
そう言って茜は立ち上がり、地下に降りていく。
「ふふっ、邪魔者は消えたし、二人で楽しみましょ。」
上着を急に脱いで上がTシャツ一枚になった百姫さん、
より胸部が強調され、危険だ。
シャルロットと違うが、大人の女性特有のいい匂いするし。
「百姫、それ以上は。」
「分かってる、続きは部屋でね。」
ッツ
口に入っていたパンの耳の破片が気管に入りそうになる。
何か、リバースの連中は俺が食べ物を食うのに恨みでもあるのか。
俺は口直しに白い液体を飲むが、
うまい。
微妙な加減で酸味と甘味が調和している。
「その、これは?」
「プロテインです。」
「え?」
「ホントです。」
こんな神がかった味のプロテインがあるとは、
流石はリバースだな。
普通はスィーツと付け合わせて飲めるもんじゃない。
「すごいですね、どこの?」
「うちのです。」
これを自作出来るとか凄すぎるだろ。
パンの耳の味付けも完璧だし、
半端ないなこの人。
結構量があったが、全部食べきってしまった。
ってしまった!
財布が意外と心もとないんだ!
タクシーのにぃちゃんにカッコつけるのに
手持ちのやつのほぼ全部をだしちゃったんだ。
「その、百姫さん、悪いんですが、割り勘ってことで。」
「お姉さんが払ってあげるわ。
全部、あたし持ちでいいから。」
「かしこまりました。」
自慢げにこちらにウィンク、
百姫さんが眩しくて見えない、
何か後光が見える気がしてきたよ。
「この借りは必ず返すんで。」
「ええ。出世払いってことにしときましょ。」
帰りも同じ方法で行くとのことで、
二人で階段を降りる。
「すいません、俺が不用意なばっかに。」
「良いのよ、あたしが誘ったんだし。」
そう言うとこっちに近づいてきて
チュッ
俺の右頬に唇で触れる。
顔が熱くなる。
そして嫋やかな体を押しつけ、
指先で俺の体をそっと撫でる。
クソっ、理性がやられるっ。
体がなぜか動かない、いつの間にか暗示でもかけられたみたいだ。
「百姫?忘れ物。」
上から雅さんが覗き込んでくる。
そして俺と百姫さんを見るや否や
急速に目が光を失っていき。
「百姫、もう二度と来んな。」
外見からは想像出来ないほどのドスの聞いた声が
地下にこだました。
かくして百姫さんは数ヶ月の間出禁にされた。

数時間後
俺は部屋に戻り、届いた映像をひたすら見ていた。
ある者は銃、あるものは刃物で、
ひたすらに争っていた。
治安維持組織最大のセキモの隊員が
時々それらに応戦し、彼らを薙ぎ払うこともあった。
彼らは治安維持の名目の元、
既に過去の軍隊に迫る武力を保有していた。
近く戦争が起きるかも知れない。
それも歴史としては久しぶりに国と国ではなく、
営利組織と営利組織の総力戦。
コンコン
「入るぞ。」
ジュリエットが入ってきた。
「調子はどうだ?」
「おかげさまで一生分の人の死を見ることが出来たよ。」
「ああ、だから言ったろう、慣れる と。」
「その通りだったよ。」
「ああ、だがお前はお前だ、
リバースのセカンドとは違い、ファースト、即ち人間だ。
お前なりの視点が大事になることもあるだろう。
よろしく頼む。」
「こちらこそ。」
「それじゃ、いい夢を。」
片手で手を振りながら、
ジュリエットが外に出ていく。
出ていくときまでギザなやつだ、嫌な感じはしないけどな。
あとジュリエットってやっぱ男なのか。
さっき傍に着た時何かいい匂いしたし。
「睦望?部屋にいる?入るよ?」
茜か、客が多いな。
茜が部屋に入ってくる。
片手に何かアルコールっぽい瓶を片手に構えながら。
「その、酒か?」
「うん、あんた下戸なのよね、
酒じゃなくて良いから付き合いなさいよ。」
俺は部屋に備えてあった給湯器で
食料庫からパクったミルクの粉を溶かし、飲む。
飲めないわけじゃないな。
何というかただ薄い牛乳って感じがする。
「聞きそびれたんだが、ジュリエットは男なのか?」
「はぁ?」
何かマズイこと聞いたかな。
「女でしょ。英語の名前しらないの?」
「いや、そのカッコイイから。」
「あんなのがカッコイイわけないでしょ。
既婚者だし。
あんたも会ったでしょ、ロミオってハーフ。」
「そうだったのか、まだ若そうなのに。」
「まぁ、若作りはしてるわね。」
「辛口だな。お前の事心配してくれてたろ。」
「それはそうだけど、
ボーイッシュな感じでクールで、気に入らないというか。」
完全に嫉妬じゃねえか、
酒のせいか残念さが増してきたな。
「はーい!!睦望くーん!」
バッ
急にどこからか湧いて出た百姫さん、
顔がかなり赤いし、くせぇ、酒に飲まれてるなこれ。
「百姫さん、もう寝た方が、
かなり酔ってるみたいですし。」
そう言うと後ろに隠していたらしいワイングラスを
取り出しながら迫ってくる。
薄着になっているせいで大迫力のあれの輪郭が露わに、
その迫力におされベッドの前まで退行させられる。
「じゃあ、お姉さんと寝よっか?ゲプッ」
「酔ってるみたいなので、僕が部屋まで送りますよ。」
間一髪、ゲップがかなり臭かったのもあり、理性が戻ってきた
何とかまともに応対できる。
ナイス!俺の理性!!
「あたしは~?」
既に俺の座っていたイスでぐでぐでに体を揺らす茜、
お前もか!!
こうして俺は酔った二人の手を引いて
部屋の入り口まで送る。
たまたま隣の部屋だったので、
俺はそのままダッシュで自分の部屋まで戻った。

部屋に戻って一息ついていると、
シャルロットのコインが光りだした。
この流れ、まさか!
コインが空中に浮かび上がり、壁に光が収束していく。
念の為、例の首輪を嵌めておく。
「おーい、妾の声が聞こえるかの?」
やっぱりか。
「聞こえるぞ、シャルロットか?」
「そうじゃ、流石は我が妾。」
「めかけってのは違うけどな。元気にしてたか?」
「当然じゃ、何時でもお主の子を産めるように、
っと傍観者としての責務に励むのも良いが、
たまには妾に顔見せをせよ。」
「そうは言っても朝別れてからまだ1日も立ってないだろ。」
「妾にとっては一日は千秋なのじゃ!バカッ!」
パッ
光が消え去り、浮いていたコインが再び俺の胸元に戻る。
俺はどっと疲れが出たのか、
ベッドに横になるとそのまま夢に落ちた。

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筋坊主

物語100連発 改

物語の体操より薫陶を賜りました。 僕が考える楽しい物語を書いていきます。 いいねorコメントをよろしくお願いします!
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