物語100連発その2 ~オーガ・ハザード Japanese bio hazard~

「国際法の条文にある通り、身柄の保護を求める。」
「了解した。 22:53分 身柄を保護する。」
体を両側の電極みたいなのに捕らえられた。両腕には拘束具、両足には電子錠、首にはタグを付けられた。
こうして俺は初めて外国に脚を踏み入れることになった。

数日前、
俺はただの大学生をしていた。
かなり平凡な大学で偏差値で言えば全国平均レベル、卒業生の評価もまちまちと言った。
いわゆるただの地方大学だ。俺はその中でも平均的な成績だと思う。
勉学に励んではいるが、まぁ上には上がいるし、もっと上もいる。
最近補助金がどうのとかで論文数が下がっているとか上がっているとか。

いつも通り、楽しい講義の時間を終え、
ここからは体育の時間、近場のジムに寄って軽く汗を流すのがいつものルーティンだ。
幸いなことにガラガラだった。
一通りのルーティンをこなすと、シャワーを借り、自宅へ。
やっと1日が終わる。
ベッドへ寝転がると、そのまま深い眠りに落ちる。
こんな毎日がずっと続けばいいな~、楽だし。

キーキッキー。
部屋の窓からの異音で目を覚ます。
二重ガラスが爪で引っかかれた音だ。
何かと思ってカーテンを開ける。
「ガーッ!」こちらに気づいた人の形をした怪物が爪で窓をこすっていた。
その姿はまるで、鬼、そう御伽噺にでも出てきそうな鬼なのだ。
皮膚は真っ赤、顔は表情筋が異常に張り詰め、目には、頭からは黒い異物が1つ 鹿の角のように、そしてぶくぶくに肥大化した腹部。
俺は走った、玄関の覗き穴めがけて、こいつらは俺たち人間の天敵であると本能で感じることが出来た。
覗き込むとそこにはやはり鬼が居た。だが幸いなことにこちらには気づいていなかった。
俺は思いっきり扉を蹴る開けると鬼をドアを挟んで反対側に追い詰めることに成功する。
逃げられる! これで!
「ガーッ!!」背後からの声。後ろだと!
俺は全力でドアを引き戻し、鍵とチェーンをかける。
幸いなことに奴らには知能がないらしく、
視覚以外で人を認識していないらしい。
ドアを閉じた瞬間に興味を失ったかのように他の場所にふらふらと歩いて行く。
以前見た酒が入りすぎた俺の知り合いの佐藤に似ている。
今なら出来上がった佐藤の方がはるかにマシだって分かるぜ。
俺は今、完全に八方塞がり、いや正確には六方なわけだが。
それにここはマンションの2階窓側とドア側の他には白色の壁。
上下には当たり前だが、白色の天井とフローリング。
こういう時は落ち着いて警察を呼べば良いんだ。
この国は法治国家、治安維持のための専門家がいるじゃないか。
素早くケータイを取り出し、 ーーーガラケーとみんなからはバカにされるが
タイプ、いつもの発信音声が再生される。
だがいくら待ってもつながらない。
なぜだ! どうしたんだ。
こうなれば、と思いPCをワンタッチで起動し、
ゴーグルクルーズで蓬原県警のHPのアドレスを打ち込む。
つながらない。
というより他のサイトにすらつながらない。
急いで部屋のLANケーブルと端末を確認する。
電源は付いてるが、光回線のマークが付いていない。
なんどもケーブルを抜き差しするが、変わらない。
完全に孤立させられた。
こうなったら自力で脱出路を見つけるしか無い。
1年前、日曜大工で使った工具を棚から全て取り出し、並べてみる。
が、どれもあいつらと戦えそうなものはない。
あいつらは何か本質的に俺たち人間の上位の存在だ。
それは何となくだが分かる。
俺はここで死ぬのか、良くわからない人間の天敵に取り囲まれて。
食料も一人暮らしの癖で買い溜めはしてない。
最低限の2日分+地震用の非常食が2日分だ。
俺にはどうしようもない。
膝から力が抜ける。
手近にあった、ベッドに座り込むと今までの人生がまるで
映画のワンシーンのように頭に浮かび上がってきた。

ブルルルル
少し大きめの車のエンジン音が聞こえる。
自転車程度のスピードを出してるみたいだ。
「おーい、誰かいないか~? (キーン)」
拡声器で最後に異音が入る。
人がまだ生きてる。
俺は抜けた力を再び取り戻し、
ジムバッグを片手に
全力でドアを蹴り開ける。
そして、2階の壁を乗り越え飛び降りる。
体重が少し重くなったせいで、膝に違和感を感じたが、
とにかく走らないとだ!
俺は全力で声のした方に走る。
息が切れて、脚が重くなるが、走る。

そして、見えた。
人形の鬼を軍服を着た強面の女が漫画で見たようなデカイ銃で掃討しつつ、
覚醒器で若い女が再び。「だれか~ 出てきてよ~ 居るんでしょ~(キーン)」
と叫ぶ姿が、俺は肺に死ぬほど息を吸い込み。
「俺は、ここだ~~っ!」
たぶん一生で一番デカイ声を出した。
「お姉ちゃん、そこだよ!」
拡声器持ちの女が気づいたらしく、
デカめのトラックが迫ってくる。
「ブレーキ壊れて、止まれないから、飛び乗って!(キーン)」
そう言われたので焦って脇に避けて飛び乗る。
懸垂の容量で何とか上がることが出来た。
車高高すぎじゃないか? こんな車ありましたっけ?
「いや~、良かったよ。この地区の生き残りも全員 回収出来たみたいだし。」
「助けてくれてありがとう。命の恩人だ。俺は大学生をしている、いやしていた。佐々木というものだ。」
そういってジムバッグから財布を取り出し、名刺を渡した。
「はいは~い」そう言って名刺をひと目みた後に捨てやがった。
高校生だったころの同期を思い出すぜ。あいつも職業体験で名刺もらった後、写メって捨ててたな。
俺はちゃんと財布に収めてたのに。
「いちおう、自己紹介しとくよ、私はキララ、ハーフよ。」
いきなり偽名使ってきたか、まぁこんな状況だから良いけどね。
奥にも人がいるな。
「こんにちわ、俺は」
「聞いた、佐々木さんね。 桐生よ。」
そうぶっきらぼうに告げたこの寝起き臭が半端ない ーー髪ボサボサジャージ姿の女、腹立つな。
ただ長ドス持ってるから何も言えず、苦笑してトラックの真ん中あたりまで下がる。 
ヤクザなのかな、映画ではよく見るけどとりあえず距離キープ。
「おい、拳銃持ってるから距離とっても意味ねーぞ。」
読心術か 何かのマジックかな?
「どっちでもねえよ。 ただの体質だ。」
「そんな体質あってたまるか!」×2
おっとキララさんと声かぶりしてしまった。
「とにかく、安全な場所に行きたいんだが、その向かってるんだよな?」
「当たり前でしょ、これから向かうのはこの国で今一番安全な場所なんだよ。」
「ちょっと飛ばすから、全方位の扉締めて捕まってな。」
唐突に運転席からドスの聞いた女性の声が響くと同時に、
トラックの屋上にいた化物のような銃と給弾ベルトを構えた女性が降りてきた。
近くで見るとめっちゃ美人だな。怖いけど。
「俺は、佐々木。」
「笹井よ。」
なんとなく、こいつらのノリが解ってきた俺はぶっきらぼうに告げる。
キララさんが俺の乗ってきた方の扉を閉めると。
「おっしゃ、いくで~~」
その声が響いた瞬間にドン、いきなり、進行方向後ろにふっとばされる。
その後も着くまで、延々と四方の壁にぶち当たりまくり、
全身をアザだらけになりそうだ、もうお嫁にいけない。
途中で3人が居ないことに気づいたが、時既に遅し、あいつらだけ3つのハンモックの上で、
快適に過ごしてやがった。 降りたら絶対シバく。
なんだかんだで一番安全とされる場所につくのだった。
全身、打身のようなふらふらのまま、降りるとそこは
国防軍の基地だ。だが違和感しかない。
ぱっと見、軍服の女性が数人と、一般女性が数十人、そう女性しかいない。
「あんた今ハーレムとか思ったでしょ?」
「思ってない、というかどういうことなんだ?」
「あたしが知りたい。」
そう言って、運転手の女はそそくさと去っていた。 ーーーあとで聞いたが名前は斎藤と言うらしい。
キララがやっと降りてきた。随分と車内を楽しんでいらっしゃたようだ。
「とにかく、俺は好きに休ませてもらえる場所が欲しい。
どこか知らないか?」
「ん、どこでもいいんじゃない? あそこ以外。」
そう指さされた建物は軍が元々食堂として使っていた建物のようだ。
曲がったフォークとスプーンのシンボルが隣に立ってある。
「わかった。じゃあ、俺はあっちの建物で休ませてもらう。」
そう言って第5と書かれた建物を指差す。
「んじゃ、腹が減ったら適当に戻ってきなは~い。」
こうして俺はこの事件から見ず知らずの国防軍基地で暮らすことになった。

2~3日、俺は女性達から強制労働に借り出され、
キララからは軍事訓練らしき何かに借り出され、忙しい日々が続いた。
その合間に色々話を聞くことがあったのは不幸中の幸いかな。
ここ数日で聞いた話をまとめるとこうだ。
1あの人型の鬼は元は人間である。
2まず男は全員鬼化している。(俺はなぜか違うらしい) 
3女でも鬼化するが鬼龍神社のお守りを持ってた人は鬼化してない。
縁結びとか色々効果が歌われてただけあって結構な数の女性が持ってた。
4鬼龍神社には鬼があふれてて近づけない。
5鬼は角の本数で強さが決まってる。2本のやつだと超人的な身体能力でかつ頭か背骨を撃ち抜かないと止まらない。

数週間後、俺はこの州での生き残りを探しに行くという彼女らの提案に乗ることにした。
基地に残ってもどうせ事態は好転しないからな。あと雑用が想像以上にきつい。
今度は国境近くまで行くらしい、幸いなことに俺にも武器 ーーーと言ってもただの拳銃だが
の使用許可が降りた。今度の旅は2泊3日になるそうで、
少し不安もあるが斎藤さん曰く、期待の新人がいるから大丈夫とのことだった。
いや、元はただの一般人なんですがね。
ただ斎藤さん曰く鬼化してない人は何らかの特殊体質持ちらしい。
なにはともあれ、トラックは基地を旅立つ。
もう一度戻ってくるんだ、この場所に。
あの3人は何らかのサイキックってわけか。俺はたぶん例外みたいなもんだろ。
そんなことを考え
ダダダダッ、ダダダダッ!
トラックの壁越し馬かなにかの走る音が聞こえる。
「なんだ、馬の走る音?」とキララの方を見ると顔が青ざめていた。
「飛ばせ、逃げ切れ、やつだ!」突然運転席に向かって叫ぶ。
「りょーかい!」斎藤さんが急にアクセルを踏み込む、
俺は再び後ろの壁に衝突するが、キララと桐生はトラック天井に垂らしてあったロープに捕まる。
と同時に屋上にいる、笹井のライフルの発射音が響く。
「私は大丈夫、もっと飛ばして、たぶんアイツに銃は効かない。」
笹井さんらしくない、焦った声でそう告げると、たしかに、少し遠くから金属と金属がぶつかる音が聞こえる。
まさか、銃弾を切ってるのか!!俺はもっと耳を凝らす。
4足歩行で走ってる。速さはトラックと2:3ぐらい、このままじゃ追いつかれるぞ。
カーブでは若干こっちが速いようだが、直線で必ず詰められる。
時間の問題だ。誰かがアイツを足止めしないと、全員死ぬ。
ライフルが効かない相手に勝てるわけがない。
そう思った瞬間俺の左手、と左目が発熱し始めた。
「ちょっ、それ!」キララも気づいたみたいだ。
熱さが広がって、左半身が熱いが、痛くない。
まるで体の左半分だけがなくなったように。
俺は、彼女に手鏡を投げられ、右手で何とか取り自分に向けて愕然とする。
俺の目が鬼のものになっていた。そして左手は肩の辺りから赤熱し、真っ赤になっていた。
何だこれは、俺はズボン  ーーー彼女達の配慮で残った軍服をパクった
を巻き上げると左脚も赤熱し、真っ赤に腫れ上がっている。
「キャッ!」キララの声を無視しつつ、上をまくり上げると
やはり左半身だけが鬼のそれになっている。
「少しの間カーブせず直進してくれ。」キララに鏡を投げ返す。
そして俺はトラックの後ろのハッチを開ける。
「今まで、ありがとな。」
自分でも何をやってるのか分からないが、
こういう時に男は勝手に体が動くもんなんだな。
まぁ今まで彼女いたことないけど。
そんな感慨にひたりながら、遠くの鬼 ーートラックに道路標識を投げようと構える鬼
を見据える。「ちょっとだけ、両足で立てない赤ん坊とじゃれてくる。基地でまた会おう。」
そう言って、トラックから左手と左脚だけで着地する。
金属とアスファルトがこすれたような音を上げなら、何とか無事に着地。
後ろを振り返ると、桐生さんが、キララを現行犯逮捕みたいな感じで押さえつけ、
笹井さんは自分を固定してたワイヤーを外そうとして余計に絡ませ、
斎藤さんの涙がトラックの窓から落ちているのが左目でバッチリ見える。
最後に3人の可愛い所が見られて良かった。

遠くはなれていく、トラックを見送りながら、現状を確認するが
俺の左半身の身体能力と感覚器だけが異常に発達してて気持ち悪い。
左の頭部を触ると、角が3本と半分 ーーー角のちょうど右半分だけ切れてる感じで
生えてた。
そうしている間にゲストの登場だ、4足歩行の鬼 ーーーよし よんちゃんと呼ぼう
はさっきトラックに向けて投擲しようと目の前で引っこ抜いた道路標識を俺の脳天めがけて
数ヶ月前に乗った新幹線並のスピードで振り下ろす。
だがスローにしか見えない俺は左手でそっと誘導してやる。 俺の右横のマンホールのふたに落ちるように。
ガシャーッ、金属と金属の激しくぶつかる音が辺り一帯に鳴り響く、標識は90度ぐらい曲がり、
使い物にならなくなるが、左切り上げを繰り出してくる。
今度は反らせないが、捕まればいい。
俺は左手でそっと曲がった標識に捕まる、握りつぶさないようにそっと。
すると何も考えていないよんちゃんは振り払ったあと、俺を探しているらしい。
俺は勢いを殺さないようにそのままバク宙し、上空から左足のトーキックを後ろ頭に当てる。
昔ソローモーションで見た豆腐を地面から落としたかのようにゆっくり脳を潰し行く、
本気で蹴った反動で俺自信も回転し始めるが、何とか左手で着地する。
頭部のなくなった鬼はまだ動けるらしく、
こんどは俺とは反対側の方向に走り出す。
だがそっちにはあいつらがいるんだ、行かせるわけないだろ。
俺は左手で近くにあった、電信柱を握り削る。そうして出来た石の弾を相手の胴体の重心めがけて
思いっきり投げる。 
不思議なことに弾丸すら通しそうにない体表をやすやすと貫いて、150mほど先のマンションの一階を半壊させながら止まった。
どうなってるのかはさっぱり分からんが、何とか倒せたらしい。
安心したら力が抜けて、膝から地面に落ちた。
ぺちゃ、ぺちゃ、という謎の音が迫っているのが分かる、仕留めきれてなかったッ!
でももう体が動かない。
今度こそ、ここで終わりなのか....
意識が落ちていく、どこまでも、どこまでも。

「おい、起きろ!」
何か木の温かみを感じる。俺は生きてるのか?
「おいってば!」
俺はうっすら右目を開けると、知らない軍服を着た若い少年が俺を銃床でつついていた。
まるで汚いものを触るかのように。 「ここは?」
「ここはお前らの大好きな国 光栄人民共和国だ。と言っても貴様らよりは共産じみてないがな。」
「俺は軍服着てるが一般人だ。」
「そうは見えない、あの1週間目の鬼化を生き延びたんだろう?
その時点で逸般人だからな、ふははは。」
「寒いギャグはよしてくれ、とにかく国際法の条文にある通り、身柄の保護を求める。」
「了解した。 22:53分 身柄を保護する。」
身体を拘束された。両腕には拘束具、両足には電子錠、首にはタグを付けられた。
こうして俺は共産圏に初めて脚を踏み入れることになった、それと同時に強大な軍事国家 光栄の保護にあやかることになった。

この先も俺の戦いは続くんだろうな、
だがいつかあの基地に帰って、キララの本名を聞かないとな。

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圧倒的感謝!!

筋坊主

物語100連発 改

物語の体操より薫陶を賜りました。 僕が考える楽しい物語を書いていきます。 いいねorコメントをよろしくお願いします!
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