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【KBO】ABS ロボット審判元年

KBOは今シーズンからロボット審判(AI審判ともいう 以下ABSと表記)とピッチクロック(ただし本格的な罰則は来年度から)を導入しました。
ピッチクロックの本格的な導入は来年度なのでアジア球界で最初に導入したロボット審判に今回はフォーカスしたいと思います。

今年のルール変更(画像は聯合ニュースより)


ABSの運用方法

画像を参考にロボット審判の運用方法を説明しますと
野球場に設置された専用カメラが投手の投げたボールの軌道や着地地点を把握

ABSがストライクかボールを判定する

主審がイヤホンで判定された結果を聞いてコールする
といった流れになります。

各球団にはABSで判定された結果をダグアウトに備えられたタブレットPCに送信されます。

もし機械に不具合や故障があった場合は審判が判定をする、というルールもあります。

ここまでのABS導入をした事で起こったことをまとめてみました。


①試合時間が短縮された

2024年度のKBOオープン戦(46試合)は昨年度のオープン戦(47試合)と比べて試合時間が19分短縮することに成功しました。
23年度は2時間58分、24年度は2時間39分

そのうち14試合は2時間半以下を記録しました(23年度の2時間半以下の試合は2試合だけ)。
もちろんABSだけでなくピッチクロック守備シフト制限といったMLBでも導入されている制度をアジアで最初に導入したことも時間短縮に繋がったといえます。


②選手と審判間の不信感が消える

これまでは審判が見て判断をするので打席に立つ選手や取る捕手が納得しない・不満に感じる場面が多々ありました。そして審判に抗議をしたりして時間が過ぎていくこともありました。
これからはストライクゾーンに入った球は確実にストライク判定、外れたらボール判定とあらかじめ決まっているので選手はストレスなくプレーできる事でしょう(たまに映像を見ると驚くところもある)。
そして抗議することも減ることで時短にもつながります。

③前代未聞の抗議が起こる

4月14日、三星ライオンズvsNCダイノスでの試合
投手が2球目を投げた時、審判は「ボール」とコール。しかし、NC側が備えられたタブレットで確認したところABSでの判定は「ストライク」となっていた為に監督が審判団に抗議をしました。
4人の審判団は集まったもののすでに5球目を投げていたので結果は変わらず抗議は受け入れられませんでした。

以前からタブレットから送信された結果が瞬時に来ないことで現場から不満の声が上がっていましたが14日の試合でついに誤審となってしまったのです

翌日の15日、KBOは事態を重く見てその日出場した審判を「職務排除」という出場停止より重い処分を下しました。
KBOが下した理由は、

この判定によって試合操作をしてしまった(実際にそのミスがあった後逆転打を打たれて負けた)

自分自身のミスがあったにも関わらず嘘や言い訳を4審との協議が全国の生中継に広がり信頼低下をした事が挙げられます。

実際の映像↑

KBOは今後ABSを運用する現場が誤審等ないよう積極的に介入する事で改善していく方針となりました。

ABSが無ければこのような抗議をする必要もありませんでした。
ですが、導入された事で最終的な権限はABSの判定になります。しかし、審判自らがストライクをボールを言ったりその逆を言う事で審判が試合を操作するリスクもあるというのがKBOの考えとなります。

審判に抗議する監督(画像はSPOTV NEWSより)


④球場ごとにストライクゾーンが若干違う

今年MLBから韓国に戻った柳賢振
昨日どこに投げればストライク取ってくれるかゾーンを研究した上で登板したのに全然違う」と試合後の会見で語りました。
ストライクゾーンが修正されていると意味です。

KBOが直ちにデータを出した結果「ストライクゾーン0.78cmの差があった」と公表。

制球が武器な柳賢振こそできることであり疑問を持ったことだということでしょう。

野球場ごとにゾーンが違う」という不満が少なくありません。かつ今年はABS導入1年目との事もあり現場の様々な場所から意見が出ています。
しかし、柳賢振が登板した日とその前日は同じ球場であり誤差があるのはかなり問題といえます。
修正して良い方向に進まないといけないと思われます。

⑤四球数が増えた


これまでフレーミングの効果によってボールゾーンがストライク判定され三振になる事が多かった昨年度。
今年はストライクゾーンが絶対的に決まっているのでフレーミング効果ならストライクでも確実にボール判定される事が増えました。
もしボールがストライクコールされるとしたらそれは球場による錯覚なのだろうと見ています。

マイナーリーグでは既にABSは導入済みで超が付くほど打高投低の世界になりました。
KBOは元々打高投低なのでまだそのような変化は見られない印象ですが、今後そこにも注目をしていきたいと思います。


⑥捕手の評価基準が変わる可能性

SNSなどではよく「フレーミング」という言葉をよく耳にします。
フレーミングとはストライクを確実にストライクにし、審判の目を上手く利用してゾーンから外れている球をストライク判定させたりすることです。即ち綺麗な取り方が求められます。
しかし、ABSが導入された事でこのフレーミングは不要なものとなりました。
ストライクゾーンに入ればどんな取り方でもストライクだからです。

ロッテジャイアンツの劉江南捕手は
フレーミングはもう無用な物となりました。ベテランから若手まで皆フレーミングの練習ではなく送球やブロッキングの練習により力を入れるようになりました」とコメントをしています。

劉江南捕手はフレーミングの上手い捕手として知られています。
ABSが導入されてから機敏な動きができるよう減量し、投手のフォークやスプリットといった落ちるボールを逸らさず抑えるようブロッキングの練習を増やしました。

最後に


確実に申し上げられるのは、SNSでよく見る「フレーミング論争」はABSの導入によって消えます。
綺麗に取ろうが大雑把に取ろうがストライクゾーンに入ればストライクです。

機械が判定をするので様々な意見や不満をよく見ます。これまで見た事ないような世界なので私自身も追うのが大変な部分もあります。

一方で概ね満足をしているという反応もあります。審判の判定が全てだったのでABSが判定をすればストライクゾーンを確実に取ってくれます。
MLBやNPBがこのシステムを導入するかは分かりませんが、野球観が全て変わってくるシステムであるので面白いと思います。


参考

ヘッダーは本人撮影

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