『心はいつも子どもたちといっしょ in SAGAMIHARA』展示会場の下見

写真展『淋しさのかたまり』が終わったばかりだが、8月11日から9月2日まで展示することになった『心はいつも子どもたちといっしょ』の会場、相模原市民ギャラリーのアートスポットを観てきた。

『心はいつも子どもたちといっしょ』は、東日本大震災以来、神奈川県町田市や相模原市で行われている「母ちゃんず」の保養キャンプに参加する福島の子どもとお母さんの姿と、彼らの切実な言葉を展示する活動だ。

母ちゃんずは、東日本大震災発生時、神奈川県相模原市にある共同保育の幼児園「つちのこくらぶ」に子どもを通わせていた保護者有志が、保養キャンプを運営するために結成したお母さんグループのこと。また、保養キャンプは、短期間でも放射線量が高い場所を離れることで、体内に取り込んだ放射性物質が排出されるなど、心身のリフレッシュ効果が期待され、放射線の影響を心配して外遊びが制限されている子どもたちには、体力回復や免疫力の増加もあると考えられている。

2012年の第1回キャンプから撮影を続けているが、去年の暮れ、保養キャンプに参加しているお母さんたちから聞く福島の実状とぼくの周囲の認識との間にあるあまりにも大きなギャップに耐えられなくなり、今年の3.11に都内の池袋で第1回展示を行った。すると、その展示を観た多摩市の市議会委員が「ウチでもやって」とお誘い下さり、5月末から6月上旬に多摩市で開催した。また更に、多摩展を観たフォトシティさがみはら実行委員の方からお声がかかり、今回の相模原展につながったという有り難い巡り合わせだ。

そして、まったく同じ期間に、隣接する大ホールでは、日本写真界の重鎮、江成常夫さんの写真展「After The TSUNAMI 東日本大震災」が開かれる。展示の規模はまったく違うものの、「大震災」という共通のテーマがあり、勝手に相乗効果を上げられないかともくろんでいる。大先輩の胸を借りて、福島の実状と母ちゃんずの行いを少しでも多くの人に知ってもらいたい。

また、会期が重なる8・9月に、同市内にある城山保険福祉センターでも展示が可能になった。偶然にも、用意している写真を半分ずつ展示してちょうどいいくらいのスペースなので、双方同時に展示し、途中で差し替えを行ってもよいなと思っている。

最善の展示方法は何か。いや、最善を超える展示にしたい。

最後に、長くなるけれど『心はいつも子どもたちといっしょ』の公式facrbookに書いているあいさつ文を、ここに載せておきたい。

○『心はいつも子どもたちといっしょ』ごあいさつ

私が、神奈川県相模原市を中心に活動するお母さんグループ「母ちゃんず」が福島県からお母さんと子どもたちを招く保養キャンプにはじめてお邪魔したのは、東日本大震災が起こった翌年の2012年、1回目のキャンプでした。その時は雑誌の取材でしたが、2回目以降は個人的に通い、お母さんと子どもたちのポートレートを撮影して差し上げています。
私はひとりっ子で、両親は共働きだったため、一緒に遊んでいる友達が家に帰っても暗くなるまでひとりで遊んでいるような子どもでした。そして、父と母は、長い別居の末、離婚しました。そのため、仲睦まじく同じ時を過ごす親子の姿に憧れがあり、撮影では、保養キャンプであることも忘れて、ただただ、親子の愛おしい姿に心打たれながらシャッターを切っています。みなさん、本当にステキな笑顔、ハツラツとした表情を見せて下さり、いつも私の方が元気をもらっています。
ところが、お母さんたちに福島での生活について尋ねると、目に見えぬ放射能汚染がまだらに広がる土地で暮らす不安、甲状腺癌などの病気への恐怖、放射能汚染を話題にする人としない人との断絶に悩み、苦しんでいることを知り、写真の中の笑顔からは想像もつかない大きなギャップに打ちのめされていました。
また、母ちゃんずのメンバーには、福島から自主避難している人もいて、我が子を守りたい一心で福島を出たにもかかわらず、「仲間を置いて逃げてしまった」という後ろめたい気持ちに苛まれたり、実際にそういう目で見られてしまう場面もあって、福島で原発事故に遭ってしまった方々は、ひと言では言い表せない苦悩を抱えて暮らしています。
さらに、大きなギャップを感じるのが、私の知る限り、東京周辺から西側に暮らし人々のほとんどが、福島第一原発事故の放射能汚染問題を、あたかも「終わった過去の出来事」のように捉えていることです。
実際には、放射線量が高い地域は今もあちこちにあり、福島第一原発の燃料デブリ(原子炉圧力容器の下へ溶け落ちた核燃料が構造物などと固まったもの)はどのような状態になっているのかすら正確に掴めておらず、この問題の出口は、いまだ見えていません。そして、福島県というくくりは人間が決めたもので、放射能汚染がそこに限定されるはずはなく、段階的に変化しながら周辺に広がっています。
甲状腺癌については、「この震災以前、現在の精度で検査を行っていないのだから、増えているという主張はナンセンス」という意見があります。しかし、増えているかの議論とは別に、我が子や自分自身が、癌になり得る嚢胞(のうほう)が増えているか、癌になっているかを判断されることへの計り知れない不安と恐怖があります。こうした、科学的な数値では見えてこない、彼らの切実な声はほとんど伝えられていません。また、不安な日々から離れ、放射線量の低い場所で心身ともにリラックスできる保養キャンプについても、存在すら知らない人が圧倒的に多いのです。
少しでも多くの人が、この展示で、福島で暮らすお母さんや子どもたちの姿と保養キャンプの様子に触れ、「愛情」という普遍的な観点で放射能汚染の現状を自分のこと、自分と繋がっていることと捉え、「子どもたちの未来をどう守ったらよいか」、更には、「自分たちの生活環境をどうしていきたいか」を考え、自らの意見を持つきっかけにしてもらえたら幸いです。
このサイトでは、私が母ちゃんずの保養キャンプで撮影した写真、また、それに伴い、取材をした写真を展示する活動についてご報告していきます。
私自身、考えが及ばないことばかりです。この展示活動を繰り返すことで、自分の視野を広げていきたいと思っています。


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吉田智彦

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