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「山荘」

 脂が乗った秋刀魚と具たっぷりの味噌汁に麦とろご飯。秋刀魚無しの注文もできる。たしか献立はそれだけだったか。小石川の「坂の途中」にあるカウンターのみのお店。余計な口をいっかいきかない明るく温かそうな (でも、たぶん厳しい) 母親と思われる方が味噌汁を作り、温和そうな息子さん (だと思う) が秋刀魚を焼く。

 たしか秋刀魚付きで千円だったと思うが安くはない。が、他店の同額のランチより満腹感があった。店構えは覚えていないが、たぶん地味で、一見で入店したりはしないだろう。どこの街にも似たような店がある。長年やっていて献立も同じ。「時間が止まったような」などの陳腐な表現を一蹴する、頭だけではなく体が喜ぶ味。

 具沢山の味噌汁と選び抜かれていると思われる秋刀魚。母親と息子の淡々としつつも豊かな日々の営みを含め味わっていたのだろう。ググっても見つからないと思ったがありました。名は「麦とろ 多摩山荘」。写真を見る限り数十年前と変わっていない。食事処で「山荘」の名。山には行っていなかったが山荘には訪れていたのだな。