松井 創(Hajime Matsui)

専門学校で建築を、大学で都市を学ぶ。オンとオフな場が交差するコミュニティに興味がある。…

松井 創(Hajime Matsui)

専門学校で建築を、大学で都市を学ぶ。オンとオフな場が交差するコミュニティに興味がある。ロフトワークにて都市と空間をテーマとするLayout Unitの事業責任者(CLO)として活動している。100BANCHの発起人、オーガナイザー。

最近の記事

エリア名をデザインする(後編)

前編に続きエリア名のデザインについて、AkeruEを事例に紹介します。ギリシャ語をベースに空間の機能と特徴を表す各エリア名を考えるにあたり、一番最初に考えたのがメインゾーンのコスモスとアストロでした。いずれも宇宙(コスモス)そして天体(アストロ)を表す言葉ですが、AkeruEにおいては、子供の体験が異なります。 ASTROASTRO(アストロ)は、様々な美術展示、科学展示そしてSTEAM展示と呼ぶ作品が展示されているエリアの名前としました。ASTROは「星々の」「天体の」を

    • エリア名をデザインする(前編)

      AkeruE(アケルエ)のネーミングと共に施設内の各エリアの名前も考えました。現在、アケルエには8つのゾーンそれぞれに名前がついています。 これらはコンセプトづくりの比較的早い段階で考えて、各エリアの詳細を検討をするにあたってのタグラインとし、また空間設計やプログラムを具体化していく上での拠り所となるように企画。この分散する8つの世界観が関係しあってアケルエの全体像を構成するよう計画しています。エリア一つ一つは独立した機能をもちますが、それが隣り合って相乗効果が生まれる空間

      • 誰でもできる。空間のネーミング・スキル

        昔から「名は体を表す」と言われます。名付けはコンセプト・メイキングの要であり、アイデンティティの確立であり、ブランディングそのもの。親が子供に名前つけるとき、どんな人であって欲しいか願いを込めたり、料理店のオーナーがコンセプトを店名で表現したり。ネーミングとは、誰もができるクリエイティブで楽しい行為です。 私自身、息子の名前をつける時は人生で一番悩みましたが、とても楽しく豊かな時間でした。息子の「昴(スバル)」という名前には、「たくさんの星のまとまりである昴のように、個人の

        • YOUはなぜレイアウトに参加?

          自分の場合、「YOUは、なぜレイアウトをつくった?」が正しいとして。 2017年10月。ロフトワークの中に事業責任者というポジションをつくった。組織のヒエラルキーもカリスマ経営陣によるトップダウンのマネジメントもコンプライアンスも求めない、でも従業員100人を超える法人というロフトワークあって、事業ユニット(&事業責任者)という仕組みは、全社的に新しいチャレンジだった。会社的にも役職や役員を増やすより、新しい事業ユニットの数を増やすという話が今も進んでいる。 事業ユニット

        エリア名をデザインする(後編)

          自然と不自然

          緊急事態宣言下のモーニング・ルーティンは息子との散歩でした。近所の公園まで虫取り網とカゴをもって毎朝、探検&虫取りに出かけます。でも、ここは東京の人工の埋立地、東雲。捕まえられる虫は、せいぜいダンゴムシかミミズ程度だと思ったら、意外と色んな虫が捕まえられる。息子は、何か新しい昆虫を捕まえるまでは家に帰えらせてくれません。最初は苦行でしたが、これが毎日ZOOMミーティング漬けの生活のなかで大事なリフレッシュタイムとなり、早朝の誰も歩いていない公園を息子と二人で過ごす時間は、自粛

          こんな時だからこそ、祭のススメ

          2020年。たくさんのイベントや祭が中止または延期になりました。オリパラのような世界規模の祭典から、100年以上続く伝統的な祭まで今年は中止となるほど。地球上からハレの日が、ほとんど消えてしまいました。 未来をつくる実験区100BANCHの周年祭・ナナナナ祭も「中止」が浮上しました。去年の模様がこれですからね。 「密です。」...はい。 メンバーの一部からは、「祭りをやっている場合じゃないのでは?」「日々のメンバーの活動を個々に支援したい」という声も挙がっていました。途

          こんな時だからこそ、祭のススメ

          リアルな場の価値はどうなるか −コワーキング編−

          コワーキングスペースという場に取り組んで約8年。コロナショックを経て、これからのコワーキングがどうなるか【before/with/after COVID-19】の視点で考察してみました。 BeforeコロナのコワーキングスペースWith/Afterコロナにおける複数のコワーキング様式を提示する為にも、議論の土台として最初に「個ワーキング」と「Co.ワーキング」という二つのコンセプトの違いを紹介します。(これまでのコワーキングスペースをBeforeと表現しますが、この二つは、

          リアルな場の価値はどうなるか −コワーキング編−

          人生の転換点になった七冊の本

          ブックカバー・チャレンジが回ってきて、「絶対、三日坊主になること間違いなし」と思い、まとめて7冊を書く(ルール逸脱)。どうせなら、本の虫だった若き日に読んで、人生を変えた(のかもしれない)7冊を選んでみたところ、半生まとめのようなチャレンジになった。 高校1年生のときに通っていた塾の先生に薦められて読んだ本。「明日は世界を-Tomorrow the WOrld.」というメッセージに感化され、何を血迷ったか日本の大学受験をせずに英語を磨いてアメリカの大学への留学すること目指し

          人生の転換点になった七冊の本

          未来共創空間は、幕の内弁当のようでありたい。

          QWSがオープンした。いまこそ共創空間という場のコンセプトづくりについて、書いておきたい。 QWSは、幕内弁当のようにつくった。いや、QWSに限らず100BANCHもLODGEも、これまでの未来共創空間をプロデュースするなかでこだわってきたのが「幕の内弁当のような空間」だ。(空間だけでなく関係者も。) 色んな惣菜(素材=機能をもった部屋)が同梱されていて、間仕切りは、ほとんどなく、お惣菜それぞれを食べたり、時々お米を挟んだり、一緒に口の中で混ぜ合わせて味わったり。幕の内弁

          未来共創空間は、幕の内弁当のようでありたい。

          活動に二十四節気をとりいれてみる

          3月21日は春分の日。祝日なので多くの人が春のおとずれを感じながら休日を楽しんでいるだろう。 この「春分」は暦の中でもお馴染みだが、1年間で他に23種類あると知っている人はあまりいない。自分は誕生日が「大寒(たいかん。一年で一番寒い日とされる)」なので、小さい頃から、カレンダーに書かれていて、気にしてきた。春分や大寒などの暦の節目を二十四節気という。 二十四節気(にじゅうしせっき)とは、1太陽年を日数(平気法)あるいは太陽の黄道上の視位置(定気法)によって24等分し、

          活動に二十四節気をとりいれてみる

          業績を向上させたいなら創造性の追求からはじめよう

          この記事がビジネス界隈で話題だ。今日現在Facebookで1.5万シェアされている。 SNS界隈の共感コメントの多くは、記事前半の「管理すれば、業績の低迷を助長する」という提言の部分にあるように見受けられるが、この記事の大事な内容は後半にある。いかに創造性を高めて、いい仕事をするか、そして業績向上へつなげるかだ。当該記事では、その逆説的な文脈は割愛されている(ように読めた)ので、自分なりに考察してみた。 つまり、この図を逆に回したらいい。 とてもシンプルな理論だ。「業績

          業績を向上させたいなら創造性の追求からはじめよう

          ナントカと煙は高いところが好き

          日の入り直後の六本木ヒルズの屋上スカイデッキにて。 始めての都市に行ったら、その土地で一番高い建物に登って、眼下の街を俯瞰してみる。シカゴ、シドニー、ニューヨーク、ロンドン、パリ、毎度どの景色にも感動するし、見渡す限り人の仕事の結果うまれた代物ということに畏怖の念もおぼえる。 東京。感動と畏怖を合わせ持つ大都市。 この大都市には「何でも実現できる。」と思わせる魔力がある。東京に暮らし働いていると、その錯覚を起こさせる。 人間なんて非力なのに、やりたいと願ったことは(や

          ナントカと煙は高いところが好き

          200年前の一般人を20年前からベンチマークに

          菜の花の沖 (著者:司馬 遼太郎) 20年前、祖父が全巻を送ってくれて、初めて読んだ。 江戸時代後期、廻船(=かいせん: 海運による商業)で函館の発展に貢献し、私財で公共事業も行った高田屋嘉兵衛の一生をダイナミックに描く、実話をもとにした歴史小説。 船と海に魅せられた青年が船乗りとして活躍し、自分の船を手に入れ、創意と工夫をもって時代の荒波の中を生き抜いた。 嘉兵衛は、青年期に淡路島の地元を半ば村八分で飛び出し、堺の港の廻船問屋で丁稚奉公から初めて沖船頭になる。(当時で

          200年前の一般人を20年前からベンチマークに

          平日とは。

          わけあって、月曜から金曜まで5日間を振り返ってみる。 月曜日 オフィスデー(とバースデー) 毎週月曜の始まりは、ロフトワーク社員全員が集まって朝会をやっている。直近のイベント共有やマネジメント陣からの話、全社連絡などを共有しあう。この日は、ロフトワーク 19周年で毎年恒例の大きなケーキを囲んで集合写真。自分もこの写真に映るのは7回目(?)。ロフトワーク暦の3分の1には関われている計算に。 全体の朝会が終わって、チームの定例ミーティング。レイアウトチームは10名、それぞれ

          羨望する南池袋公園

          地域住民だけでなく遠方からも足を運ぶ人々で賑わう南池袋公園のこと。 2月の週末に訪れた公園内ではnest marche が開かれていて、想像以上に賑わっていた。少し温かくなったとはいえ、まだ寒いはずなのに、ここだけ気温が2〜3度高く感じる。 "賑わい"の定義は難しい。人がたくさん集まってさえいれば「賑わっている」とは言い切れない。イベントをしているからとも限らない。 この日の南池袋公園には、それぞれが、それぞれに幸せそうな顔で満たされていた。人の数だけ幸せがある、そう確

          羨望する南池袋公園

          卒業作品展にみる時代性

          先日、都内の某芸術大学の卒業作品展を観に行った。卒制展に行くことで、今の学生/若者が何を考え何を表現するかを知ることは、その時代性も知れる良い機会だ。 期待して行った某芸大の作品展だが、今回は少し物足りなかった。過去毎回、二、三件くらいは琴線に触れるような作品があったが数年ぶりに訪れた卒展は心踊るものが少なく感じた。 例えば建築学科の作品は、多くが都市の隙間や余白、都市の歴史資産の在り方と活用をテーマとして、その間を埋めるような建築的提案をしている。今っぽい。日本のトレン

          卒業作品展にみる時代性