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夢の話

はじめに

 今日見た夢が小説のネタになりそうだったので、ショートストーリー仕立てで書いてみます。
 ちなみにタイトルは目覚めた時、ふっと思いついたタイトルで意味は無いです。

 いやぁ、久々のバイオレンス系悪夢w

では、どうぞ。


僕と彼女のデスゲーム

 夢を見た。
 僕が『彼女』に殺される夢だ。

 銀色の肌が眩しい、巨大な建造物。
 その外から中に通じる大階段を僕は上っている。
 何故だろう、何かから逃げるように屋上に向かっている。

 階段を上りきると、その側面には止められたエスカレーター。
 そのエスカレーターの周囲には赤のポールが並べられ、黄色と黒のトラバーがかけられていた。
 一目で立ち入り禁止だと分かる。故障中か、整備中なのだろう。
 よくある光景だ。

 そんなエスカレーターから『彼女』が降りてきた。
 白いセーターに薄水色のロングスカート。
 黒髪長髪をなびかせた、いかにもおっとりとした雰囲気を纏う少女だった。
 エスカレーターを降りた『彼女』は僕の腕を掴む。
「やっと見つけた」
 その子は言う。
「君、そっちは危ないよ」
 その子の手はギリリと強い力で僕の腕を掴む。
「こっちに行こう」
 『彼女』は僕を引っ張ろうとして、その尋常じゃない雰囲気が恐ろしくて、そして、危機感がピークに達した僕は彼女の手を振り払って逃げた。
 彼女は追いかけてくる。
 楽しそうに、微笑みながら。
 何処から取り出したのか、その手には青いスタンガン。
 僕は悲鳴を上げながら逃げる。
 気がつけば、いつの間にか彼女のもう一つの手にはまた別のモノが握られていた。
 スタンガンも恐ろしかったが、そちらの方が尋常じゃない恐怖を感じた。
 それは、スタンガンほど、非日常的なものではない。
 それは、日常にありふれた、何処にでもあるようなもの。
 誰もが目にした事のあるようなモノ。

『鋏』

 掴まったらどうなるのかを如実に語る『彼女』の道具。
 運動が得意でない僕はすぐに息が上がり始める。
 やがて、追い詰められると、バカな方に思考が回りだしてしまった。
 『どうにか彼女の一撃を交わせれば、逃げられないか?』
 その思考。その希望。
 無数の選択肢は一つに固定されると、思考は一方に流れ続ける。
 そうしたら、すぐに一か八かの賭けに出た。

 当然、失敗した。

 万力のような力でつかまれ、振り回され、スタンガンを当てられる。
 倒れ込み、薄れ行く意識の中、彼女の手の鋏だけがやけに鮮明に浮いて見えた。

 茶色い木目をあしらった壁紙と、電球色のLEDライトが無駄に高級感を演出する、綺麗に清掃の行き届いたトイレの中で僕は惨殺され……そして目が覚めた。

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