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フヴェルゲルミル伝承記 -1.5.6「通信が障害」

はじめに

 Gott kvöld!(ゴットクルット! ※こんばんは!)

 最近、(英語が苦手なのに)アイスランド語(古ノルド語まで勉強できれば完璧)を勉強してみようかとYouTubeを見てたりします。
 この話の元ネタ(?)である北欧神話の関係です。
 こんな感じでちょくちょく前置きとかにアイスランド語でも突っ込んでいこうかと思ってます。

 では、どうぞ。

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第1章 第5話
第6節「通信が障害」

 イルムガルトとの通信を終わらせたアルフはルネをイルムガルトの所に送り、襲い来るモグラ型の魔物の頭を槍で貫いた。

「っはぁ、危ねぇ……」

 扉の前に押し寄せる魔物を全て倒したアルフはイルムガルトとは反対の方向に向かっていた。

 アルフの進む方向はイルムガルトの進んだ先の反対。
 単純に魔物の数が多い方向がそちらだからだ。

 道の先に進む。
 いつの間にかルネが戻ってきていた。
 所々壁が壊れている事から、襲ってきた魔物は強引にここを突破したのだろう。
 ならば、真っ直ぐに進めば魔物達の親玉に辿り着けるかもしれない。

「それにしても、一体、どんだけ魔物がいるんだ!?」

 知性のない魔物は殺気を隠そうともしない。
 本来なら死角だらけの砦内だが、傭兵仕込の殺気を感じる能力《カン》を持つアルフにとっては無いも同然だった。
 雷撃の槍で群れに穴を開けては、群れが穴をふさぐ。
 群れから飛び出た魔物を突いて弾いての繰り返しで、なかなか先に進めない。
 もちろん油断すれば、魔物の群れに飲み込まれてしまうので一切気が抜けない。

 そんな事を繰り返して、突如、アルフは悪寒を感じた。
 反射的に飛びのき距離をとる。

「ぐぁっ、クソ! またコレかよ!!」

 視界が揺れ、吐き気がこみ上げる。

「魔物より、こっちの方が厄介じゃねーか……」

 視界がイルムガルトと共有され、彼女の光景が写る。
 目の前に、バケモノのような白い手が二つ、浮いている。
 片方の手には少女らしき人間が握られていた。

「おい、イルムガルト。どうした! 人質でも取られたか!?」

「リーゼ。どう?」

「リーゼ? おい、何言ってんだ!?」

「姉さん!?」

 リーゼと呼ばれた少女は彼女を掴んだその手ごとイルムガルトの方に振り向いた。
 その少女の袖が、長いスカートが遠心力に任せて、たなびいた。その袖には、スカートには身体《しん》が入《とお》ってなかった。

 それで、理解した。リーゼと呼ばれた少女はあの手を自身の手足代わりに使っているのだという事に。
 それで、理解できなくなった。イルムガルトが通信をしながらもアルフの声に反応しない事に。
 とにかく、話を聞くしかないようだ。

 目の前に迫り来る敵を切りつけ、蹴飛ばす。
 吹き飛んだ、魔物は後続の魔物に衝突し、隊列が乱れる。

(やり辛ぇ……)

「どうもこうもありませんよ。何とかここまで持ち直せた所です。次の手を打とうにもあの『輝く災い《ブリーキンダ・ベル》』が厄介すぎます」

「珍しいわね。アナタがそこまで言うなんて」

 槍の雷撃で魔物の群れに穴を開ける。
 開いた穴に突撃し、魔物を中から切り崩す。

「いえ、問題は彼らが今まで以上に戦略・戦術面に長けている事です。こちらの穴が悉《ことごと》く突かれている。今までの力押しとは全く違う……おそらく、彼らの中に優秀な『参謀』がいるはずです」

「参謀? 知性のある魔物の存在は聞いたが、そこまでのヤツもいるのか?」

 そんなアルフの呟きにもイルムガルトは答えない。

「何とか第二砦まで奪還できれば……」

「なるほど……」

 イルムガルトの視線がリーゼと名乗る少女から外れる。

「アルフ、聞こえたわね」

「ああ、クソッ!いつまで接続し続けているんだ!いい加減慣れてきちまったじゃねーか!!」

「あら、良かったじゃない」

「で、第二砦まで突っ切ればいいのか!?」

「ええ、お願い」

 そう言ってイルムガルトの通信が切れた。

「ふぅ、ようやく……」

 そう安堵した瞬間、再び視界が揺れた。

「しまっ!?」

 アルフがよろめき、その隙を狙うかのように、魔物『コボルト』の棍棒を受ける。
 今までの『雑種』と違う、純粋種の魔物だ。
 その力も他の魔物とは桁違いだ。
 咄嗟に受身を取り、魔物の死体をクッションにしたおかげでダメージを最小限に抑えた。

「ぐぅ!」

「あ、ああ、お兄ちゃん、ゴメン!」

「いや、いい……で、何だ?」

 アルフは起き上がったと同時、コボルトの追撃を避ける。

「あ、そうだ!おじさんが、ヴィズルおじさんが……!!」

「おい、落ち着いて話せ!ヴィズルがどうかしたのか?!」

 棍棒を槍で受け流し、足払いをする。
 よろめいたコボルトの顔面を突いて、絶命させる。

「あ、あの、おじさんがラーナっていう女の人に叩かれたがってて……!」

「は?」

 いきなりのカミングアウト。
 ナナの視点から見えるヴィズルは確かに、見たことない女性に飛び込んで引っぱたかれているように見える。
 この非常時にナニ性癖を暴発させてんだあのオヤジと一瞬頭の血管が切れそうになるアルフだった。

「おおおい!? んな事誰も言ってねぇ! ここにいるヤツらに当たらないようにしてるだけだろうが!!」

「あ、ああ、そうだった!」

「素で間違えたのかよ!ぐぁっ!!」

 ラーナと呼ばれる女性の持つ棒が倒れた兵士へと伸びるとすかさずヴィズルが割ってはたかれる。
 なるほど、旗から見ればナナの言った通りのように見える。

(意外と、余裕なんじゃないか?)

 そう言っている間に、ラーナと呼ばれる女は二、三攻撃を繰り返していた。

「あ~ら~、大見得を切ってるわりに~、ど~したのぉ~」

 のんびりした口調とは裏腹に攻撃はすばやく、見る見るうちにヴィズルが傷つけられていく。

「うぐぁ!!」

「と、とにかくお兄ちゃん。何とかできない!?」

「あー、くそ、分かった! ルネ、お前はナナの所でヴィズルの補助をしろ。目標はラーナと名乗る女の排除。だが深追いはするな。ナナ達のいる場所から撤退させるだけでいい!!」

「了解」

 ルネは魔方陣を展開して消える。

 通信が切れ、アルフは頭を振ると敵陣を突っ切り第一砦を抜けた。
 砦を通り抜けると、その先に第二砦がある。
 第一砦と第二砦の間は距離があり、その間には通常森が広がっている。
 森にする事で道に迷いやすくし、その中に数々の罠を仕掛ける事によって進軍を遅らせるのだ。
 『通常』と言ったのは、現在は魔物の進軍で、森の木々がなぎ倒されていたからだ。
 そこはすでに倒木が散らばるだけのただの広場と化していた。

 アルフは木々を避けつつ第二砦へと向かう。

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霜海

自作ゲーム製作者です。 ゲームを作っては作り直しの繰り返しで、全然進まず、試行錯誤中。 文章力(表現力)強化の為、色々思った事や試した事など、雑記として綴っていく予定です。 もしかしたら、今の作品を小説で書いてみるかもしれません。

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