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【コラム】音楽してる人って洋楽って聞いたほういいの?

Hey!
この間、友人からとても良い質問をされたのでそれについて頑張って書こうと思います!C'mon Yo!

「ギターを始めてるけど、やっぱり洋楽のバンドも聞いたほう良いよね?でも全然ハマれなくて…」

カァ〜〜〜〜〜ッ!!!!!いい質問!!!
思えばバンドマンを長らくやっていると洋楽・邦楽の垣根が薄れていくもんで。
そういえばこういう疑問持たなくなっていったな…
というわけでこの友人へのアンサーを記事にして返そうと思います。
("洋楽"とは意味的には「日本以外の音楽」つまりインド音楽やアジアの音楽も入るが、ここでは「西洋音楽」、アメリカ・イギリスの西洋を中心としたものを以降では指す)


洋楽を聞くのは難しい?

まあまあね?言うて「洋楽もかっこいいね!」でハマって色々ディグるようになって終わりなんですよ。
というわけで、僕のこういうときのテッパンを聞いてもらいました。

Two Door Cinema Clubは邦楽と構成が似ていて、サビというものがわかりやすい。洋楽ロックバンド特有の湿っぽさや気だるさみたいなのも少なめなので受け入れやすいだろう。
Maroon5は日本でも人気だし、この「Sunday Morning」はなんか車のCMでも使われたしだいぶキャッチーなはず。
どうだ…どうだ…

「英語わかんないんで…歌詞がわかんないんですよね…それで全然入ってこなくて…」

そこかァ〜〜〜!
さて「洋楽を聴く」で現代の日本人がぶち当たるだろう歌詞の問題
これに関しては文化の由来が関わっていると私は感じている。マジの持論だが。
洋楽、西洋音楽のバンド音楽で考えてみよう。(クラシックまで遡るのは私には不可能…)

時は遡り、17〜18世紀。黒人を始め奴隷たちが働かされていた時代。当時に奴隷たちが士気を上げるため、また、弾圧された怒りや悲しみを合唱して発散させるために歌われた「労働歌」がブルースの始まりだと言われている。
時は経ち「女と遊びたい」「酒をたらふく飲みたい」「金がほしい」といった怒りの対象が人でないものも歌われるようになる。始めはアコースティックギターで語るように、狭いコミュニティで歌われるものだったが、ギタリストという概念が生まれ上手いギターがコミュニティからコミュニティにわたり重宝されるようになる…
待った、こう書いてたら一生終わらんな。一旦やめておこう。

こんな感じでブルースが始まり、ロックが始まり、現代のポップスが始まっていく(ここにヒップホップなんかも混ざるが)
ロックも、「激しいメッセージを伝えよう」「演奏に重きを置いて新しい音楽を作ろう」という心意気からハードロックが生まれ、サイケデリックやエレクトロが生まれ…と来ていった。

対して日本。私は平安まで日本の「邦楽」イズムは関係していると思う。
わかりやすい例で言うと和歌。五・七・五・七・七というリズムに合わせて愛や世の美しさを歌う…ここに邦楽の源流が含まれていると考える。そもそも「サビ」も「侘び寂び」の「寂び」が語源ですしね。
リズム、総じて伴奏部分に形式が決まっており、詩の中身の美しさで勝負するという文化が根付いているのではないか、と私は思っている。
「民謡」なんかは始まりはいわゆるアカペラ(+手拍子)が始まりなので、伴奏での、楽器でのアプローチよりも詩と歌声が重視されていたこともあり、そこから読み取っても日本の歌や歌詞重視な文化は根付いて続いているのではないかと考えられる。
以降の邦楽はジャズと唱歌が融合して歌謡曲が生まれたり、ロックやフォークを日本語詞と融合したりなど、西洋文化を積極的に受け入れていった。

ここまで歴史を簡単に書いたが…
まあ、つまるところ、歌詞や歌文化の強い日本人が、演奏重視文化の洋楽をいきなり受け入れようとしても難しいと思うのはしょうがないことなんじゃないかな、と私は思う。

さらに言えば、
歌詞や歌文化が強い=歌詞の意味、どう歌われているのか(メロディも含め)を尊重する
ということは、母国語でないと、母国語ではなくとも意味を掴みきれないと魅力を強く感じ取れないということにもなる。
そういう民族性であると私は考えるので、「意味がわからないので洋楽が聞けない」という意見に私は強く反対もできない。

音楽を作る人は洋楽を聴く必要はあるのか

次はこの論点で考えてみよう。
楽器という点で考えるなら前述の通り、先行しているのは海外なのだから取り入れるべきは洋楽なのではないかという意見もあるかもしれない。
ここに関して、私の持論で結論を述べるが「無理やり聴く必要はない」と答えるかなと。
現代の日本のアーティストは、すでに誰かをリスペクトしていて、そしてその誰かはさらに上の世代のアーティストをリスペクトしていて今に繋がっている。
だから、今音楽をしていこうという君(不特定多数)は今好きだと思うものを信じて、その人のエッセンスを受け取ろうとすればいいのではないだろうか。そこには洗練化された洋楽のエッセンスも受け取れることだろう。

断言するが「100%邦楽のエッセンスでできている音楽」はほぼないだろう。
あったとしたら逆にその曲こそめちゃめちゃ研究するべきである。
極論を言えば、ギターのチューニングもドレミファソラシドも五線譜も、すべて西洋文化なので現代の邦楽で西洋文化の影響下にないのは、ない。
マジの極論だが…雅楽とかになると別よ?J-POPでの話。

それはさておき、今聞いてる自分の好きな日本のアーティストから洋楽のエッセンスを汲み取り、遡っていくのが自然なのではないだろうか。
演奏に注目してもここは一緒だ。遡るのはググればすぐ。

例えば、椎名林檎が好きで弾き語りを始めたとしよう。

椎名林檎にはわかりやすくジャズのエッセンスがあるのでコードを学習していく際に、「このような曲を作りたい…」となって、そうなるためには?と調べてジャズを遡るには自然だろう。
人気曲の「丸の内サディスティック」、コード進行は良い感じにオシャレで、かつキャッチー。
今では「丸サ進行」なんてコード進行の王道として名前がついているが元々は「Just the two of us進行」という名前で呼ばれていた。「Just the two of us」は80年代のサックス奏者の名曲である。ここを遡っていくのは容易いし、実は「Just the two of us」よりもこの進行をしていたのはボビー・コールドウェルの「What You Won’t Do for Love」という曲があったり…
そう思うとジャズシンガーなんかもこんだけ遡ることができる。

東京事変に注目したとして、ギタリストの浮雲は椎名林檎と同様にジャズも源流に含まれているが、カントリーも大きく影響下にある。それをなんか朝の情報番組でやってた。「キラーチューン」「透明人間」なんかに見える縦横無尽に動き回るギターなんかはそれに近いのではないか。

上記2曲では"チキンピッキング"というカントリー独特の奏法を使用している。
ピックで普通に単音ピッキングするのとは別に、残りの中指やらなんやらでつまんで弾く奏法。カントリーギタリストのピートアンダーソンの動画を見るとわかりやすいかもしれない。

ここまで知り得るのは容易い。あとはもう「カントリー 有名曲」とかでググってハマってみるのもいいだろう。

そもそも「聞くべき音楽」はこの世に存在しないが、「聞くべきでない音楽」もまた存在しない、という思想を私は持っている。
つまり、無理やり勉強する必要はないが、少しでも興味がある・出たのならすべからく聞くべきだと考えている。
好きなバンドがいて、そのアーティストを聞きまくって、そして源流に気になったら調べてみるといいだろう。それが一番自然。もし、わからないときは俺に聞いてくれよな!

昔を知る必要はあるのか

「洋楽を聞く」というのはもちろん世界のトレンド、同世代の音楽を聞くという意味をあるが、ルーツを知る意味でも多く使われている。
特に「ロック」と「ヒップホップ」なんかは思いっきり源流は洋楽なのだから原点を知ろうと思うと邦楽ではカバーしきれない。「ジャズ」なんかもやはり本場は日本ではないため源流を研究し、極めようとしたら海を渡って考える必要はありそうだ。
ここで「昔を知る」ということがどういう意味を持つのか考えたいと思う。
前項目で触れた通り「聞くべき音楽」は存在しないと思っている。これはロックを知るという意味でもそうだと思う。信じるものを聞いていけ。ロックは自由を勝ち取るためのものなんだから自由でいろ。
ここはさておき「昔を知るために洋楽を聞くべき」という観点ではなく、「昔を知るために洋楽を聞くとこんな良いことがあるよ」という点でひとつアピールしたい点がある。
洋楽のルーツミュージックを聞くといいこと。それは、
「ジャンルの特徴を色濃く知れる」
だと思う。
「ロック」には様々なジャンルに分かれている。わかりやすいハードロックやメタルだけではなくオルタナティブ、ハードコア、グランジ…などなど多岐に分かれている。
その全ては洋楽で始まっているため、その起源を知れるし、その起源は起源であるため混ざりけがないのだ。
テキストで特徴なんか軽く知っておくとさらにわかりやすい。
私の好きなグランジを例に上げると、「NIRVANA」がグランジの原点バンドであるのは間違いない。

"汚れた"が語源であるジャンルで、メロディの取り方が気だるげ。ギターの歪みがざらついている。”静と動”を意識して作られており、サビに当たる部分で爆発する曲も多い。こんなことを「ほーん」くらいで知って「NIRVANA」を聞くと「あ〜〜そういうことね」みたいになるだろう。

邦楽バンドにおけるグランジも多数あるが、例えば「THE BACK HORN」なんかもグランジを源流とするバンドの1つ。

しかしバクホンは「グランジ+歌謡」みたいな感じもあるので"純粋なグランジを知る"という意味では、日本語だからわかりやすいという観点があったとしても「グランジを知る」という観点では敵わないだろう。


とまあ、ルーツミュージックを聞くことはそのジャンルの原点を知れる、という点で私は洋楽のルーツミュージックを聞くことを勧める理由にするだろう。

話は戻して

だいぶ話がそれてしまった…
件の友人の話へ戻ろう。

その友人へはオススメの洋楽を教えたところで、「歌詞がわかんないのでイマイチハマりきれない」という意見が出た。
ここまでのセクションの話をまとめると「本当に興味を持ったときに聞けばいいし、無理する必要ないんじゃない?」にはなる。

そしてこの"(洋楽に)本当に興味を持ったとき"が「歌以外に興味を持ったとき」になるんではなかろうか。

歌のルーツを探るというのは楽器以上に難しい。「声を出す」ということは多くの人たちにはルーツ関係なしに完結できるところではあるので、源流が含まれないこともある。歌の源流を辿っていく作業は相当の研究が必要になってくるだろう。歌だけで考えるなら洋楽を無理やり聞く必要はないし、興味を無理やり見出すのも難しいだろう。

つまりは逆説的に「歌以外に興味を持ったとき」は"洋楽に興味を持つ"チャンスなのではなかろうか、という言葉をその友人には送りたいと思う。

さて、その友人は音楽に対して真摯なため、こう思うであろう。
「じゃあ楽器の可能性に興味を持つってどうしたらいいの?」
単刀直入に言うと「分解して疑問を持って聞く」が答えなのではなかろうか。

曲全体で感じるのではなく、「なぜこのギターはこんな音をしているんだろう?」「こんなに踊れるようなビートなのはなんで?」細かいポイントに注目していく。
解像度を高めて聞く特訓?じゃないけど、そうしていくと楽曲の色々なポイントに目を配れるようになり、結果としてそこを研究にしていくにあたって「洋楽も聞いてみるか」と自然に手が伸びる状態になるだろう。
そのときは、きっと「なぜこのギターはこんな音をしているんだろう?」に注目して聞いているから歌詞が英語だから〜というデメリットは気にならない。

もちろん各パートを注意して聞いてみるのはもちろんそう。
イントロの入りのギターの刻み方は?ベースラインの流れは?ドラムのフィルは?バンドで合奏したときのグルーブは?
そんなところまで注目できるようになったら、君はもう洋楽(とも言わずすべての音楽)をディグる能力がついているのではなかろうか。

まとめ

ここまで来たら、あとはもうやるべきことは決まってる。
もし、君が音楽を作る人で「音楽を作るならイマイチハマらなくても洋楽を勉強しなきゃなのでは?」と思っているなら、そうではない。

「洋楽に本当に興味を持ったときに勉強すればよい」が私の持論だ。
そして「本当に興味を持ったとき」は、すでに視点が歌詞や言語が音楽を聞くときの障害にはなっていない。
「歌詞が英語だから聞けない」という部分は気にならなくなっているだろう。

そして、本当に興味を持つためには「音楽を分解して、疑問を持って聞く」ことが必要だろう。
というのが、私の持論である。

あー長くなった。「音楽を分解して、疑問を持って聞く」もまた一論書けそうだが今日はここらへんにしよう。
ご読了ありがとうございました。

参照;みの-戦いの音楽史


著者;ひろむ
サウラボのコンテンツディレクター。曲を作って歌う人。
ライターやラジオパーソナリティーといった側面も持つ。
Twitter:https://twitter.com/9630166

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