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遮音シートの施工要領・誇大広告

通常の遮音シート(厚さ約1ミリから2ミリ程度)は、工事現場の遮音と資材などの飛散を防ぐ目的で、膜のように使用されたのが最初でした。

大半の製品の宣伝にはメーカーの透過損失と優れた遮音効果という謳い文句が付けられており、一般ユーザーに限らず多くの建築士が何も考えずに現場の防音工事に使用しています。
しかし、大半の現場で、間違った設計仕様と施工要領で使われています。

誤解していただきたくないのは、市販品の全てがダメだということではなく、正しい施工要領で使用すれば防音効果が出る製品も必ずあるということです。問題は該当する製品の情報がネット上には出てこないので、一般ユーザー(建築士を含む)には判別するのが難しいという事実です。

遮音シートは捨て貼り工法で無力化される

大半の製品の説明書には既存の壁面や面材に重ねて施工することになっていますが、それは大きな間違いです。
遮音材は製品より面密度の大きい面材(合板や石膏ボードなど)の上に重ねて施工しても透過損失は向上しません。
*日本音響学会の実験データでも明らかになっています。

元々、面密度の比較的小さい遮音シートは軸組の上に幕のように張って使用するものであり、建築現場の囲いのような使い方をするものです。
木造建物に使用する場合は、壁面の軸組に最初にタッカーなどの金物で隙間なく貼り付け、その上に合板などの面材を施工して遮音効果が出るものです。ですが、面密度が約4kg/m2以下の製品を使用しても余り防音効果はアップしません。
市販されている製品の多くは、面密度が約2kg/m2から3.5kg/m2程度です。

捨て貼り工法に適した遮音材

捨て貼り工法に適した遮音材は柔軟性が有り、面密度が5kg/m2以上の製品でです。面密度が大きいほど防音効果がアップします。

最適な遮音材の材質は高比重の樹脂やアスファルト基材です。ブチルゴムも良いのですが、大きな資材ほど、つなぎ目が捩れて隙間が生じるため施工しにくいだけでなく、単価が高いため費用対効果に問題があります。

専門メーカーの受注生産の遮音材は通称「遮音ゴムマット」または「アスファルト遮音シート」と呼ばれています。
最低でも面密度は約6kg/m2以上あり、面材に重ねると透過損失(遮音性能)がほぼ右肩上がりになります。
この製品は、柔軟性が有り制振性能も兼ね備えているのが特長です。面密度が大きくなるほど低い周波数帯の遮音能力もアップします。

なお、防音材は単一の製品を重ねるよりも、異なる特性の製品を複数重ねたほうが弱点が少なくなり、相乗効果が期待できます。

以上の内容を考慮して製品選定を検討されることをお勧めします。

『防音職人は、緊急事態などを契機として、国立駅南口における防音相談を休止しました。』
諸経費を節約しながら、自宅マンションの仕事場で防音相談をお受けするのが普通のスタイルとなりました。経費を節約した分は、防音設計費用を値引きして依頼者に還元しています。
*仕事場は国立音楽大学附属小学校の近所にあります。JR国立駅から徒歩18分。南武線・西国立駅(各駅停車)から徒歩9分です。


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