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防音効果を左右する細かい工夫

防音工事は普通のリフォーム工事に比べて手間がかかり、工期も長めに設定します。ところが、請け負う工事業者は、親会社の指示で出来るだけ工期を短くして人件費をケチろうとします。

私の現場では施主及び提携先に繰り返し、「手間を惜しむと防音効果が下がるので、じっくりと施工してください。」と伝えます。

手作りのオーダー防音ドアも同じことであり、部材のつなぎ目などを手を抜くと性能が下がります。

木造防音室の防音ドアの事例

ある現場で、取引先建築士に外注した木製防音ドアですが、約束の遮音性能よりも約10dB程度不足して、私が設計した間仕切り壁よりも約10dB低い状況になりました。施主に約束していたD-45よりもワンランク下がりD-40になってしまいましたが、実害はなく、近所へも気になるような音漏れにはなっていないので、施主も納得してくれました。

通常、木製防音ドアの限界はD-40だと私は認識していたのですが、取引先建築士が自信たっぷりに強調するので、既製品よりも高いレベルで値段が大差ないのならばと思い、発注しました。現場を担当した提携先の若い建築士の耳には、私が設計した防音壁のほうが大分性能が高いように聴こえたそうです。(若い人のほうが比較的高い周波数の音を判別できる)

D-50にならなかった要因は、私の経験値や既往の事例によると「部材の突きつけの隙間処理が甘かった。部材のシールを忘れた。」という要因が考えられます。これによって500Hz以上の周波数帯の遮音性能(透過損失)が約10dB低下することがわかっています。おそらく、今回の件の理由はこれでしょう。製作した職人のレベルが低かったと思います。

防音効果を左右する隙間処理と下地補強

どんな優秀な防音材を使用しても、つなぎ目のシールを忘れたり、突きつけが甘いと、中高音域の遮音性能が半減します。これは細かいことですが、防音工事では基本中の基本なので、提携先にもうるさいほど注意しています。

それと床などの防振・制振性能は下地補強の有無で決まります。どんなに分厚い防音構造を造っても、費用対効果は低くなります。逆に言えば、基本事項を遵守すれば、私の防音設計の仕様書と施工要領に基づいて施工していただければ費用対効果は高くなります。

コロンブスの卵と同じで、種明かしをすると皆さん納得されます。あとは、使用する防音材の選定と組み合わせ、工法で勝負は決まります。

ちなみに、私の隙間処理の仕様は、どんな現場でも確実に入手できる気密テープを複数組み合わせます。少々手間がかかりますが、資材費用は安く、普通の遮音テープより粘着力があり耐久性があります。しかも、建築業者が使い慣れている資材ですので、彼らも手間を惜しむこと無く、素直に私の指示書に従ってくれます。シールにはコーキング材は使用しません。

ただし、石膏ボードのつなぎ目のシールにはコーキング材を使用します。これは大事なことです。(表層の仕上げの石膏ボードの場合は、仕上げの塗装・壁紙を考慮してパテ処理になります。)

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