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多層構造の防音設計(住宅・音楽室)

木造住宅の音楽室や生活防音、マンションなど生活騒音対策を目的とする「防音設計」は、詳しい事例の検証や施工要領をまとめた書籍、ウェブサイトは、私の知る限り存在していないようです。

その中でも、私が開発した「多層構造の防音設計」は、質量則を超えた防音効果を出していますが、類似した工法・仕様を使っている専門家は少ないです。取引先の建築士が行っているスタジオ防音では、多層構造を構築していますが、使用する防音材の量や構造体の厚さが、私の設計仕様の倍以上です。

このため、狭小な木造住宅や狭い音楽室には適用できない手法です。ですが、他の専門業者に比べれば少し薄い構造です。使用している防音材は市販品ではなく、特定のメーカーが開発した受注生産品です。ネットで検索しても詳細は出てきません。ブラックボックスのように見えないのです。

多層構造の理論

多層構造の防音設計の理論は、周波数特性及び素材の組成が異なる複数の材を重ねて構築するものであり、質量則も考慮しています。

私の場合は、「遮音」「制振(防振)」「吸音」の3つの機能を重ねて施工するものですが、厚さは他の専門業者の半分以下です。D-50程度であれば、木造住宅において、防音施工は厚さ約40ミリで実現できます。

*参考記事:多層構造の防音効果

取引先の建築士とは異なり、専門的な防音材を多用するだけでなく、一般的な建材を組合せて設計します。約15年ほど、担当現場で計測したり、依頼者(施主)に楽器やピンクノイズなど音出ししていただいて検証しています。

また、共振を回避する伝統的な木造工法も併用します。普通の建築材による構造的補強で防音効果を高める工夫も行っています。

なので、私の防音設計は木造が得意な大工職人には理解しやすいのです。この点が、取引先のスタジオ防音とは異なります。

資産価値・生活空間を低下させない、出来る限り狭くしないこと、構造的な安全性を重視しています。

分厚い多層構造の事例

典型的な分厚い多層構造の事例は、他の専門業者が設計施工しているものが大半です。防音壁に使用している製品は「遮音パネル」「石膏ボード」「グラスウール」「音響化粧板」などです。

非常に古い設計仕様であり、空間を狭くします。木造住宅にD-50レベルの防音室を造るのに、壁を180ミリから250ミリ程度という分厚い防音施工にするため、約6帖の部屋が約4.5帖になってしまいます。

私の防音設計では、遮音パネルや石膏ボードは基本的に使用しません。新規の防音壁にはグラスウールも使用しません。

使用する製品を見ると、技術的なレベルが分かりますが、薄い遮音シートと石膏ボードだけで防音工事を行う業者は論外です。

私が防音設計を始めた約26年前から比べると技術は進歩しており、新しい設計仕様を持っていない業者は、「専門業者」とは呼べないでしょう。

ちなみに、私が使用している防音材は市販品よりも費用対効果が高いだけでなく、単価そのものも安いです。

後継製品を全国的に探したら、私の取引先メーカーが最安値であることが分かりました。類似品を通販サイトで販売している価格を調べたところ、2倍以上の単価の製品もありました。※遮音材を比較する場合は、同等の面密度であることが条件になります。

また、防音設計のレベルは、設計理論と使用する防音材に加えて、市販の木材、ALC、石膏ボードなど建築材に関する知識と経験が大きく左右すると考えています。

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