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木造ピアノ室と防音材

最初に提示する「新築ピアノ室の防音計画書」における想定遮音性能はD-55です。これは、私の推奨する建物構造が前提になります。

ですが、大半の担当現場のピアノ防音室の依頼者のご報告では、夜遅くの演奏にも問題ないレベルだと言われます。
防音職人の標準的な防音設計では、通常の現場で期待できる防音材の防音効果をワンランク下げて評価しています。

このため、想定以上の防音効果が出る場合があります。先日、完成したピアノ教室の防音室は、依頼者によると24時間演奏も出来そうなレベルで安心できますと言われました。
施主(依頼者)が、私の提案を忠実に守って新築業者と粘り強く交渉したり、工事中の担当職人と打合せした努力の賜物です。

防音設計は、依頼者のご理解が有ってこそ実現するものだと思います。万能ではありません。
今回の投稿記事は、先日完成したピアノ室の続報として分析した内容を述べたいと思います。※関連記事:新築のピアノ・リトミック教室

木造ピアノ室における防音材の効果予測

防音職人では、現場で使用する防音材の効果を、完成前と完成後に精密測定(外注)したり、現場担当の建築士が測定用に持ち込むスピーカー・アンプ(音源)で完成前にチェックして分析した資料をストックしています。
主にピアノ室(新築とリフォーム)において計測します。

それは、ピアノは空気音と固体音を幅広い周波数で出すことが出来るため、防音効果を測定分析するには好都合だからです。
空気音だけでは、遮音材と吸音材の効果しか分析できませんが、固体音の音漏れチェックをすることによって、制振材の効果も予測できます。

特に、グランドピアノの重低音が床などを伝播して音漏れすることによって、防音効果の評価を大幅に下げてしまうのです。
なので、制振材を併用した防音効果の評価はかなり重要です。

私が担当するピアノ室の防音設計は、今までストックした経験値をもとに予測しています。

防音設計と相乗効果

想定を上回る防音の相乗効果が出やすいのが「木造軸組在来工法」の特長と言えます。逆にツーバイ工法では、ワンランク以上低下します。

相乗効果の主な要因は「木造と防音材の相性」および「見えない床下・天井裏、壁内部の空間における音の減衰」です。

逆に設計仕様を誤ると、内部空間において過剰な共振が生じて防音効果を低下させてしまう。
また、木製品やボード類の音響透過損失の傾向を知らないと使用する防音材との相乗効果は出すことが出来ません。
一般的な建築材にも遮音性能があり、透過損失など特性を持っています。

防音材と建築材の双方の特性を経験則として把握していないと、相乗効果が期待できるような防音設計は出来ないのです。

多くの専門業者が分厚い構造体で遮音設計を行うのは、以上のような内容を軽視しているからです。無駄な力技のような設計をしているのかもしれません。当然、費用対効果も低くなります。

防音職人では出来る限り、空間を狭くしないように配慮して防音設計を行っています。結果として建築費用が少しでも安くなればと考えています。
また、構造的な安全性を重視して、現場の施工要領も作成しています。


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