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遮音材のコインシデンスと一般建材

今まで投稿してきた記事の内容を再掲を含めて加筆して概要を述べます。
*最も質問の多い内容を踏まえて整理します。
硬質系「遮音材」(一般建材を含む)は、主に空気伝播音の遮断に効果のある素材ですが、透過損失(遮断性能)を周波数帯別にみると特性が異なります。

石膏ボードは低音域(概ね125Hz以下)と高音域(概ね2000Hz以上)に弱点があり、高音域ではコインシデンスと呼ばれる顕著な遮音低下が起きます。

合板は概ね緩やかな右肩上がりの透過損失になりますが、石膏ボードと同じくコインシデンスの起きる周波数帯があり、必ず弱点があります。ただし、コインシデンスが起きる周波数帯は構造用合板、シージングボードなど製品によって異なり、ずれます。

ですが、石膏ボードと合板は遮音特性が異なるので、併用することによって質量則を超える防音効果を出すことができるため、単一素材を重ねる工法よりも有利になります。

専門的な防音材を併用すると、コインシデンスなど弱点を抑えることができますので、音響・防音設計において、効果的に活用したいものです。石膏ボード+合板+防音材という複合的な組み合わせが望ましいです。

遮音材の理想

遮音材にとって重要な要素は、面密度と柔軟性です。面密度が低いと遮音性が低くなり、硬質だとコインシデンスなど特定の周波数帯での質量則を大幅に下回る遮音低下が起きるからです。※防音材にとって致命的な弱点になります。
現場での施工効率や使い勝手の良さを考慮すると、高比重で柔軟性・耐久性があり、厚さ2ミリ~4ミリの製品がベストです。

以上の要件を満たす製品は、合成ゴム(塩ビなどの樹脂)、アスファルト基材、ブチルゴムで造られています。
*ブチルシートは大きなサイズでは使いにくい上に単価が高いので、小さな制振シートや制振テープ(防水)として製品化されています。
*比較的大きなサイズの製品は、合成ゴムとアスファルト基材で生産されています。
このうち、再生ゴム(リサイクルゴムチップなど)の含有量が多い製品は耐久性に難があり、品質にバラつきがあるだけでなく、経年的に遮音効果が急速に低下します。

予算不足で専門的な遮音材が入手できない場合

一般的な建材製品でも防音効果を高めることが可能です。

それは構造用合板と軟質系シージングボードを併用する仕様です。
分析すると、構造用合板は遮音材と制振材としての機能を持っており、軟質シージングボードは吸音材の機能を持っているため、両者は非常に相性が良い製品です。

大きな利点は、大工職人にとって使いやすい一般的な建材であり、組み合わせ方が容易なことです。
空気伝播音の遮音だけでなく、振動音など固体伝播音を軽減する効果もありますので、木造の音楽防音室にも活用できます。

また、下地の軸組としては木材が最も相性がよく、建物構造としては、木造軸組在来工法が最適です。

以上の内容は、担当した建築現場で検証した分析です。もちろん、専門的な防音材との組み合わせは相性が良いです。
これから木造建物の防音設計や現場施工の管理を行う担当者は参考にしてください。

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