目が覚めたら青空でいても立ってもいられず、目的地も決めずに電車に飛び乗った。海を見に行きたいがこの頃の日の入りの早さを考えると、江ノ島や鎌倉に着く頃には日が暮れてしまうので、妥協案としてお台場に行くことにした。秋の東京湾の透明度は意外にも高く、釣り禁止の桟橋付近では食べ頃のクロダイが悠々と泳いでいる。海岸沿いに歩いていくと、海上保安庁の所有する立ち入り禁止の岸壁に突き当たった。すぐに踵を返すのも損をした気分になるので、死角になる場所に隠れてマリファナを吸いながら、既に暮れ始めた空が理想的な色味を帯びるのを待つことにした。紫がかった北の空を背景に、西陽に照らされて黄金色になったトラックが、レインボーブリッジを忙しなく渡っている。狭い海を挟んで望む東京の街が一斉に輝いて、いつの間にか暗くなっていた空を照らし始めた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?