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フランケンシュタインとは誰か?

#読書の秋2021 #フランケンシュタイン

フランケンシュタイン

フランケンシュタインと言う名前を
知らない人はいないと思います。

あの、顔に縫った痕のある
2メートルを超える大男…

それを造った科学者
それがフランケンシュタイン。

ヴィクター・フランケンシュタイン


あの、顔に縫った痕のある
2メートルを超える大男には
名前はありません。

名もない、怪物かいぶつです。

『フランケンシュタイン』(Frankenstein)は、イギリスの小説家、メアリー・シェリーが1818年3月11日に匿名で出版した小説。原題は『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』


作者のメアリー・シェリーは女性で
執筆したのは19才のとき。
匿名で出版したのは、
当時は女性が本を執筆することには
社会的な抵抗があったから、とか。

フランス革命や、ナポレオンの失脚、
産業革命など、
社会を取り巻く環境が大きく変化し
不安が渦巻く時代に書かれました。

1931年アメリカで公開された映画
「フランケンシュタイン」のビジュアルが、
あまりにも強烈だったため

また、映画がヒットしたために
原作の小説を読む人が
あまりいなかったことも

あの怪物=フランケンシュタイン

という誤解をまねく原因になった
とも言われています。

日本だけでなく、イギリスでも
多くの人が、そう誤解しているそうです。

「フランケンシュタイン」は
どんなお話か?


「フランケンシュタイン」は
ホラーではありません。


<あらすじ>
裕福で優秀な科学者
ヴィクター・フランケンシュタインは
「自分の手で、生命を造り出したい」
と言う衝動にかられ

死体を掘り起こし
繋ぎ合わせ…
2メートルを超える
大男を完成させます。

その大男・怪物に命が宿り
目覚めたとき

見かけの醜さにおびえ
怪物を置き去りにして
実験室から逃げ出してしまいます。

生まれたばかりの怪物は
言葉も何もわからない
生まれたばかりの、ただの子供。

しかし、街に出ると
その見た目の醜さから
人々から石を投げられ
攻撃されてしまいます。

森に逃げ込み
そこで暮らす一家の暮らしを
観察し、言葉を覚え

本を読み、歴史、宗教、風習
人間のさまざまな活動の知識を得ます。

人間同士が争う、
悪徳と流血の物語には
嫌悪感を覚え目をそらし

ゲーテを読み感動もする

読書家でとても頭がいい

それが初期の怪物。

森で暮らす、盲目の老人から
「あなたからは誠実さを感じる」
と言われ

老人の家族と、
友達になろうとするが…

帰宅した老人の家族から
老人を襲う怪物とみなされ
殺されそうになる

さらに、
自分の出生の秘密を知り
絶望し、人間への復讐を誓う。


人間だったら、こんなときどうするか?
たくさんの本を読み、勤勉だった怪物は
人間が絶望したときどうするか
それを知っていたのです。


ここからは
皆さんが想像する通りの
ストーリーだと思います。

怪物は自分を造った科学者
フランケンシュタインを探し出し
彼をまわりの人々を
次々に殺していきます。

でも、フランケンシュタインのことは
殺しませんでした。

自分を孤独から
救い出すことができるのは
自分を造ったフランケンシュタイン
だけだと思っていたからです。

怪物を作っておきながら
その醜さに怯え、逃げ出し
こんなひどい目に合わせた…

そんなフランケンシュタインを
恨んでいたけど

でも、それは、だれからも愛されずに
寂しかったから

自分を造ったフランケンシュタインは
自分を愛するべきだ
と考えていたのかも知れません。


怪物の最後の言葉

もう太陽や星を見ることも
そよ風が頬に触れるのを
感じることもない。
光も心も感覚も、
消えてしまうのだ。
だが、そうなることを、
おれは幸せだと
思わなければならない。


復讐に燃え
殺戮さつりくを繰り返した怪物ですが
最後まで人間らしい
清らかな心を持ち合わせていた。


そんなお話です。



怪物は見た目が醜かっただけ。

目の見えない老人だけは
怪物の誠実な心を感じた。

名前がないということは
社会から、その存在が
認知されていないこと。

人間としての苦しみを
苦しみぬいた。

科学の功罪。

このお話しのキーワードは
こんな感じでしょうか。


科学によって作り出されたものが
予期しない結果をもたらす…という
現代のSFの基礎となるような発想で書かれた
最初の作品とされていて

人間として認められていない存在の方が、
人間とは何か、生きるとは何か、
を真剣に考える…
そんな数々のストーリーは、この作品から
生まれたのかも知れませんね。

恐ろしい殺戮さつりくの描写だけでなく
怪物の心に寄り添って読んでみると
新しい発見があるかも知れません。


知っているようで知らない
フランケンシュタイン

一度、手に取って
読んでみてはいかがでしょうか☆彡



*この記事は、NHK100分de名著の解説も参考に書きました。