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サッカー文化とダイナミックプライシング

一般サポーターコラム【No.4】

札幌ドームで行われるコンサドーレ札幌VS浦和レッズのJリーグ最終戦。自由席のチケットの値段が話題になっていますね。
10月末の時点で8000円を超えたとか。
近年猛威を振るっている「ダイナミックプライシング」によるものです。

今回はこのダイナミックプライシングとサポーター文化のお話。

※筆者はレッズサポーターです。


ダイナミックプライシングとは


そもそもダイナミックプライシングとはなんでしょうか?(経済、経営の専門家ではない僕が解説するのもあれですが)
一言で言えば、
需要が高ければ値段も高くなり、需要が低ければ値段は安くなるです。

需要が高い=それを欲しい人、そこに行きたい人、利用したい人が多ければ高くなる。
1番分かりやすいのはホテル等宿泊施設ですかね?
長期休み、3連休の真ん中、クリスマスイブ、お盆などみんなが泊まりたい日は高い。

ホテル側(売り手)としては高くても満室になるのでさらなる利益が見込めます。
宿泊者(買い手)として高くはなりますが、高くなり利用者が減れば利用できる可能性が上がります。

逆に長期休みでもない平日など、需要が低い場合値段が下がります。
宿泊者としては安いという明確なメリットがあり、ホテル側としても宿泊者が0よりは、安くなっても利用客がいた方が利益になります。

個人的な考えにはなりますが、このように双方にメリットがあってこそ、ダイナミックプライシングは成立すると僕は思っています。
企業側にメリットがあるからこそやるとはいえ、消費者が納得しなければその場だけの利益になり、結果的にマイナスになるからです。

スポーツ観戦でのダイナミックプライシング

では本題です。
ここ1、2年でダイナミックプライシングを採用するクラブがJリーグにも出てきました。

採用、導入を初めて聞いた時「へぇーいいかも」と思ったのを覚えています。

個人的に想像した影響としては
①平日や下位チームの試合など、集客が見込めない試合でチケット代が下がり、「それなら行ってみようかな」という人たちを呼べる。
②チケット発売後に値上がりの可能性があるので、発売日にチケットが売れやすい。
③値段が確定しているシーズンチケット購入者が増える。
こういったことだったのですが、実際は違いました。

あくまでも「浦和目線」にはなってしまうのですが、浦和のように集客力があるチームのサポーターにとっては(導入しているチームばかりだと)毎試合アウェイのチケット代が高くなるということです。

発売日には定価なのであれば「すぐ買わなかったから悪い」で納得もできますが、発売日から2倍ではもうなす術がありません。


今回1番言いたいことが

Jリーグ(というかサッカー興行)でダイナミックプライシング導入は不適切

ということ。

ダイナミックプライシングのメリット、デメリット含めた利点は「あるものを買う」(ホテルに泊まる、スポーツを見る等含む)ときに、その物を買うという行為はそのままで自分で条件を選べる点です。


「Aというホテルに泊まる」という場合
人気シーズンの土曜日に5万円で泊まる。
人気シーズンだが平日に4万円で泊まる。
人気シーズンを避け土曜日に3万円で泊まる。
人気シーズンを避け平日に2万円で泊まる。

と、このように「Aホテルに泊まる」という結果は変わりませんが、値段を見ながら自分で条件を選べます。※金額の変更は大袈裟にしています。

新幹線や飛行機などは出発時間なども影響しますね。朝早くや夜遅くなど人が利用しづらい時間を選んで安く利用することができます。

その他遊園地、水族館などの観光、レジャー施設でも長期休暇期間は高いし2月や6月なんかの平日は安いです。それはもはや「当たり前」のこと。

ではスポーツ観戦だとどうか?
という点ですが、僕は「プロ野球ならありかな」と思ってます。いや、野球に限らないんですが「週に何日もできるスポーツ」なら成立するかなと。

安いから平日に行くか?
いや、仕事休めないから高いけど土日にしよう。

という「選択」ができます。
同じカードがどちらかのホームだけでも年間に10試合以上は(詳しくは知らない)あるわけで、まぁ選ぶ余地はあるでしょう。

ではJリーグは?
まず、ほとんどの場合開催は土日のみ。
そしてリーグの対戦カードは2試合、仮にアウェイ限定にすると1試合のみです。
すなわち選択の余地が「買う」か「買わない」しかありません。

しかも発売日に2倍に設定されているのです。

「ダイナミックプライシングとは需要による価格の上下だからしかたないだろ」という主張をされる方がよくいますが、そうではなく「需要が高いに決まっている試合」に関しては単純な値上げにしかならないのです。つまりその仕組みの導入からしておかしいと。

値上げをしたいのであれば初めから開幕戦や最終戦は1万でも2万でも設定すればいい。そうした場合批判は避けられないでしょう。しかしこの仕組みを導入することで「いや、自動的に決まっているんで」という逃げ道を作っているように思えます。

そもそも、特定のチームを応援し、サポーターという文化の根強いサッカーでこの仕組みを有意義に活用するのは非常に難しいと思います。
アウェイの座席数を可能な限り減らせばその席だけ値段を上げられますから。

ホテルで「埼玉の方が泊まれる部屋は2部屋しかないので、ダイナミックプライシングにより他の部屋より高いです」なんて言われたらビックリしますよね。

では

ダイナミックプライシングを成立させるにはどうしたらいいか?

例えばですが全席自由席ではどうでしょうか?
当然値段は一律で上下します。座席数=そのスタジアムのキャパですので、ほとんどの試合で大幅な値上げはなさそうです。値上げの場合もホーム、アウェイ関係ないのでアウェイサポーターだけが不満を訴えることもないですね。

いっそ全チームダイナミックプライシングにして、収入は全てJリーグが管理。収入額と入場者数によりクラブに分配する…とかでも良いかもしれません。高くてもそのチケット代が結果的に自分の贔屓チームに入れば納得できそうです。

でも多分現実的ではないです。
なぜかって、サッカーにはサポーターがいて、スタジアムを2分にして勝利を目指すから。
スタジアムに行く全員が「どちらかのサポーターではないサッカー好き」ならばいいんでしょうね。
なので代表戦では大賛成です。

と、長々語ってきましたが、これが「Jリーグでダイナミックプライシングは不適切」という理由です。

札幌が話題になっていますが、札幌は全対戦チームにこの仕組みを適用している訳で、もう「ダイナミックプライシングを導入」「最終戦が浦和」という時点でこうなることは決まっていました。

プラス要素で「小野伸二引退」「優勝の可能性が数字上残っている」ということが加わりますます需要が高まっていますね。

個人的には「後日プラス要素で値段が高くなる」というのはアリだと思います。ヨーイドンで購入した人が得をするのは健全と考えますので。

ただ、それでもやはり発売日には定価であって欲しいですし、値段の上限もあってほしい。

「贔屓チームがある以上成立しない」という僕の考えを前提にすると、導入を決定したJリーグとクラブはサポーター文化を軽視してるなぁと思うのです。

全員が贔屓チームのない「ただのサッカー好き」になることを望んでいるのかも…?
そうすればこれ以上なく適切なシステムかもしれませんね。名付けて「サポーター補完計画」。

目的の一つだった「転売防止」にもどれだけ効果があるのか疑問。

でも「いいかも」と思ったことも事実。
しっかりルールを決めて、仕組みを活かしてくれればそれが1番です。

以上です。お読みいただきありがとうございました。では、また次回!



…規制してほしいけど来年の浦和のやり返しもちょっとだけ見たい。

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