マーケティングツールとしての大阪の「永住権付与」案

今年2月、大阪府と大阪市が提案した「金融・資産運用特区」に関する内容が公表され、大きな話題を呼びました。特に注目されたのは、投資家ビザの新設に関する提案です。これにより、成長産業への約1億2000万円の投資、または政府への一定期間の預託を3年以内に行った場合、永住権が付与されるという内容です。


大阪金融・資産運用特区の提案とその衝撃

この大阪の「永住権付与」案、「そこまで言ってしまうのか・・」という衝撃をもって受け入れ取られた方も多かったのではないでしょうか?

というのも、永住権というのは、素行が善良であること、社会保険や納税義務の履行状況、日本の国益に反する人物でないかなど非常に総合的な観点から慎重な審査が行われる在留資格であり、一定額以上の資産を有していたり投資を行うことだけをもって取得できる在留資格では決してないという認識があるためです。

これまでにも、優れた人材を引き寄せるインセンティブとして、永住権が活用される例は見られました。特に、日本の経済成長に寄与すると見なされる高度な専門技術を持つ人材の誘致を目的として、永住申請の要件を緩和する措置が講じられてきました。しかし、これは申請プロセスを容易にするという側面に留まり、「永住権の付与」そのものを意味するものではありませんでした。そのため、この発表を見守った関係者の中には、「あーっ、言っちゃったねー・・」という反応を示した方も少なくなかったのではないでしょうか。

大阪府・大阪市の詳細な提案内容はこちら

これまでと同じことをやっていても仕方ない?!大阪の野心と本気


一方で、こうした「一線を超えた」ともとれる投資への優遇措置は、大阪の本気度を表しているとも言え、これまでと同じことやっていても変化は望めない、という強い決意の現れともとれるのではないかと考えます。

大阪と言えば、来年には万博を控え、2030年には統合型IRリゾートの開業を予定しています。さらに「国際金融都市OSAKA」というキャッチフレーズを掲げ2021年3月から、行政と経済界がタッグを組んだ活動を行っています。

「国際金融都市OSAKA」

https://global-financial-city-osaka.jp/about/

ホームページを見ると、国際金融都市OSAKA推進委員会の会長として挨拶するのは関西に本社または活動拠点を持つ主要企業・団体を会員とする関西経済連合会会長。その下に大阪府知事の写真が続きます。他の自治体の提案と比べると、地元経済界の強い存在感が感じられるのが大阪の特徴です。

国際金融都市構想では、関西経済のプレゼンスの上昇、そしてさらに国際金融都市としての地位獲得が目標として掲げられており、単なる特区構想を超えた「大阪が国際金融都市にになる」という強い意志と本気度を感じさせます。

投資ビザと大阪の未来


賛否両論はあるものの、日本の在留資格はアジアの富裕層の間で非常に人気があることを考えると、永住権をインセンティブにして投資を呼び込むというのは、確かに最も効果がある方法に思えます

そして「本当に効く政策を」、と考えたとき、例えばシンガポールや香港の投資ビザよりもはるかに安価な投資である1億2000万円の投資は
絶妙な価格設定のようにも思えます。

決して悪くはないものの、お役所主導の案という印象の東京・福岡・札幌案に比べると、ある意味「生生しさ」のようなものを感じます。(金融・資産運用特区は、日本の資産運用業界への新規参入を促進するための特別区域の構想であり、大阪に、東京、福岡、札幌が公募に基づき提案を行っています。)

これからの大阪、どうなっていくのか期待して見守りたいと思います。





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