埋葬

あなたのこと

「これは全部夢かもしれない」

早朝の人気のない明るい道路をバイクの後ろに乗りながら走ったとき、気温も匂いも光もびっくりするほど心地よかった。風が髪の毛をぐしゃぐしゃにするけどどうでもよかった。

わたしの家の前で二人でしゃがんで煙草を吸った。アリが大きな荷物を抱えてトコトコ歩いていたからその近くに灰を落としてびっくりさせてやろうとしてたら、やることが幼稚園児みたいと笑われた。この前毛布に潜ると落ち着くと言う話をしたら猫みたいだ

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「愛は無力」

元気?とあなたから久々にメッセージが来て、腹が立って元気、とだけ送った。嘘じゃなかった。わたしは前に比べたら遥かに元気になっていた。肌が荒れることもなくなった。爪にはいつも綺麗なネイルが施してあるし、髪色もいつも綺麗だ。そこそこ幸せなのだ、今が。

俺は元気なんかじゃないと返ってきた。舌がざらざらする。なんでお前だけ、とでも言いたげな文字の羅列だった。

わたしが全部だめになって泣いたときあなた

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「明日がないってこと、はじめからそんなのわかってたよ」

鈍い気怠さ。読みかけの小説。なくなった目薬。爪の金色の石。眠たくて死んでしまいそうだ。歯医者をすっぽかしたこと。目の奥の色。今の職場の上司が優しいこと。優しくされるたびに横にいるのがあなただったらいいのにと思ってた。返事はない。もう思わなくなった。

あなたの話をするとき、昔話になっていることに気付いた。あの日々はもう遠くなってしまった。ばかみたいな職場でやけくそになって働いて、一人で煙を吐いてた

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「思い出の数だけきっと理由を求めてしまうのでしょう」

職場を辞める時、本当はずっと好きだったとあなたに伝えた。別に答えなんか求めてなかった。全部終わらせようと思った。もう大嫌いだと伝えた。あなたは何も言わずわたしの頭をずっと撫でてた。

新しい職場ではみんな優しかった。給料面でも優遇され、今のところは妬み僻みを敵意として誰かにぶつけるような人間も見当たらない。仕事は確かに大変だけど、満足していた。いつの間にかあなたを思い出すことも少なくなった。泣かな

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「溺れた日々が終わるとき」

こんな憂鬱だけではおさまらないような気持ちで日記を書くのは久々かもしれない。悲しいとか悔しいとかもちろんそういう感情はあるけれど、何かがぽっかり空いたような気持ちでここ二、三日を過ごしてる。

愛おしくて憎くて殺してやりたいといった衝動的な気持ちを抱いたのは初めてだと思う。あなたの真っ黒な瞳を思い出す。イライラしながらタバコを次から次へと吸っては捨てる指も。どこで間違えたのかがわからない。そもそも

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「crybaby」

最近気付いたら泣いている。おかしいなぁって思いながらごしごし目をこすったあとに、指についたマスカラをティッシュで拭く。痛みに弱くなったのか、それともわたしに浴びせられる痛みが増えたのかは分からない。わたしは本当にすぐ泣くようになった。

男の人に好かれれば好かれるほど素敵だと十代の頃は思っていた。左手の人差し指にできた切り傷を伸びた爪でなぞる。22歳になったわたしは、昔より遥かに異性に好かれるよう

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