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さもありなん。野音でスペアザは最高だ。

日比谷野外音楽堂。

それは、僕が人生を突き動かされた「さんぴんキャンプ」というヒップホップのイベントが行われた場所で、中学時代はもちろん、今だってそのビデオ(いまはYouTubeだけど)を頻繁に見直すぐらいに愛している。

だから、自分にとっての野音は少し特別なものである。あの序章がいいんだ。HAZUのミラーボールって曲に合わせて、日比谷公園に集うB-BOYをコラージュしたもの。

ブレイクダンス、スケボー、グラフィティ。

深い緑の中に彼らがいて、イベントの開始を待ちわびている。

とても美しい光景だ。

そんな野音に初めて行った。SPECIAL OTHERSのライブだった。野音は思っていたより小さくて、扇状の形状でその根元にステージがある。ステージに向かって段々になっているからとても見晴らしがよくて、周辺には高層ビルがいっぱい。

ケーダブが言っていた、薬害エイズ、犯行現場なんだよってパンチラインがあるんだけど、僕にとっては、厚生労働省じゃなく、この場所こそが犯行現場であり、(自分の)歴史の1ページ目なのだ。

SPECIAL OTHERSは、一昨年フジロックで観て以来、自分の生活に着実に入り込んできていて、気づくとiTunesにこしらえた彼らのプレイリストを聴いている。彼らの音楽はとにかく曲名が覚えられない。歌詞がないからなのか、BGM的な音楽だからなのか。だから、ライブに来てるのに、曲名がわかるものが数曲しかないという稀有な状況だった。

ライブが始まると、案の定それは最高で、徐々に陶酔を極めていく。酒はたらふくあったし、最近お気に入りのシンガポール初のポークジャーキーまで買い込んでるから、もう完璧だ。ビールから始まり、チューハイ、友達お手製のハイボールと杯はすすむ。

会場は扇状だから横を見ると、ズラーっとしかし湾曲しながら人々が楽しんでいる様子が見える。他のライブにはなく、みな一様にお酒を片手にゆらゆらと揺れている。ライブなのだが彼らは自らが酒のアテになるかのように、音を紡いでいく。あるインタビューで、「クラブでやることが多かったし、とにかく踊ってもらってなんぼ」的なことを言っていたが、まさにそれを体現していたと思う。

MCが入ることなく、ストイックに曲を重ね、一時間ぐらいたっただろうか。演奏を終えると、

「じゃ、次のセッションもお楽しみに!」

と言って、一度下がっていった。自分たちのライブなのに、すごく他人事というか、舞台装置に徹していることがわかった瞬間だった。

快晴といい音楽と酒と肴。いよいよ、あとは日が落ちてくるのを待つばかりだ。全体の明度が落ちてきて、それに合わせるように、音のテンションも上がっていく。名曲「ローレンテッキュ」でそのグルーブは最高潮に達した。

「なんだ、ここは天国かよ。天国酒場かよ」

と昇天しかかったのは言うまでもなく、その後はただひたすらにこの時間に感謝したものだ。もはや、スペアザ以前にこの野音が最高なんじゃないか。なんなら、野音の公演すべてにおいて、この感覚を味わえるなら、毎週末野音(ジャンル問わず)もさもありなん、と思ったり。

遠くで味わう非日常は最高だが、近くても非日常を味わえるカードをいくつ持つのか。それって人生を楽しむための重要な要素だ。歳を経るごとに、人は快適さを求め、我慢をする意味を失っていく。

例えば、二子玉のBBQってやっぱ、あれ気持ちいけど大変だよねとか、GWに人混みに行って、いちいち並んで食べたくもない料理を食べることを避けるようになる。

枠にとらわれて、その中で楽しさを見出そうとする、がんじがらめのカゴの中の鳥。人はきっとどこまでも羽ばたけるのに、勝手に枠にはまっていって(自ら)窮屈になる。

どこまでも飛んでいけたらいいのに。

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