short story series『と、私も前々から考えていた』「たばこ」case02

作・木庭美生

どうしよう。ほんとにどうしよう。怒られるかな。えぇ。やだな。

やっぱりやめとけばよかったかな…

ぼくの趣味はガラクタ集めでいつかこのガラクタでロボットなんかを作ってやろうと思ってる。だから普段からいろんな部品になるガラクタを拾ってるけど今日のは少し違くて、ちょっとの後悔。学校からの帰り道の途中、見つけてしまったから拾ってしまった。赤い箱。なんて読むのかわからない。ま、まる?

少し空いてるMarl boroと書かれた箱の隙間から見えるのは銀色の紙と、中身、たばこ。たばこは嫌いだ。臭いし。体に悪いらしいし。でも、かっこよかった。おじさん。ぼくのおじさん。親戚のおじさんとかじゃない。知らないおじさんだけどぼくの友達。よく公園でたばこを吸ってる。お母さんはぼくがおじさんとっしょにいるのをすごく嫌がる、なんでかわからないけど。たばこ臭いからかな。でも臭いけど、カッコいい。ぼくの憧れ。だからきっと魔がさしたんだ、やめたほうがいいと思ってたけど真似してみたくて。たばこを吸ったらおじさんと同じようになれるんじゃないかって。でもな。怒られるかな。どうしよう。おじさん。ばれたら怒られるかな、でもカッコよくなりたいな。でも、ばれなかったら…

よし。よしよし。吸うぞ。ぼくは吸ってやる。1回くらいきっと誰にもばれないさ。吸ってそれからおじさんに会いに行こう、ぼくももうかっこいい大人だって言ってやる。よし!

あれ。あれ。ん?あ、火。火がない。たばこは拾ったけど火なんて持ってないよ。なんだ、火がないんじゃ吸えないじゃないか。あーあ、かっこよくなれると思ったのに。どうしようかな、たばこってロボットにできるかな…むりか。これ、どうやって捨てよう。

2018年10月30日

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