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“架け橋的な役割を担いたい” アート×人×社会をつなげる 新麻記子さん

作詞家やライターをはじめ、コーディネーター、キュレーター、ディレクターなど多岐に渡った活動を通して、アートの魅力をお伝えしている、新麻記子さんにお話をお伺いしました。

新麻記子さんプロフィール
出身地:大阪
活動地域:東京、横浜、香川県・小豆島
経歴:音楽専門学校の作詞科コースで山田ひろし氏に師事。卒業後、1年間ヴォイストレーナーをしながら、メジャークレジットを取得。作詞家業をベースに置きながら、アート関係の執筆を手掛ける。アート専門WEB媒体の運営・編集・ライターを経て、フリーランスに転身。現在はアートの輪を広げたいという想いから、 Classy Academy 代表の石井江奈氏と共催で【Classy アート鑑賞会】を開催し、東京都内にある『ワインワークス南青山』や香川県小豆島にある『Gallery KUROgO』のアーティストブッキングや、展覧会関連のPRディレクションやイベント企画なども行う。
現在の職業及び活動:作詞家、ライター、コーディネーター、キュレーター、ディレクター
座右の銘:温故知新

アートに触れることは人を知ること、アートを鑑賞することは社会を考えること

記者  新さんはどんな夢やビジョンをお持ちですか?

新麻記子さん(以下、新 敬称略)申し訳ないのですが…なりたい職業や大きなビジョンはまだ明確ではありません(笑)。しかし、“架け橋的な役割を担いたい” “文化の底上げをはかりたい"という想いがあります。

例えば作詞家でしたら、音楽と聴者との間に言葉を持たせて、さらに音楽をイメージしやすくするはたらきを意識します。同じように美術展レポートや映画作品の紹介するライターなら、会場内の様子や見どころを分かりやすくお伝えし、少しでも多くの方々に興味を持ってもらえるような記事になるよう執筆しています。鑑賞してみたい想いがあったとしても、なかなかその一歩が踏み出しにくい人も多いですからね。

そして、「もっと日常生活の一部にアートを取り入れてほしい!私たちの暮らしにはアートが密接に関係していることに気付いてほしい!」。そのためには、芸術、音楽、映画、その他諸々をジャンルで区切らずに、全体的に文化として捉えて、底上げをしないといけない!と思い、立ち回っていたら自然と役割が増えていきました(笑)

記者  では、アートと、人と、社会をつなげていった先にどんな社会をつくりたいですか?

 アートが生活の中に身近にある社会。そしてクリエイティブな活動をされている方々が、経済的にも精神的にもゆとりを持って、制作に集中して打ちこめる環境を維持できるような社会にしたいですね。
今はまだアートへの関心がない方々に興味を持ってもらえるようにしたいですし、アートが身近にあり、必需品だと気づいて欲しい。その上で、表層のものではなくて背景にも触れることで、作家や作品について真剣に考えていただける機会があるような社会をつくりたいです。何千年、何百年、何十年、それだけ経過しても遺されているというアートは、人間にとって必要不可欠なものだと思いますからね。

アートは歴史や社会を学べることはもちろん、人間そのものを知ることができる教材だと言えると思います。そういったことを学んでいかないと、今より争いごとが増えて世界が荒んでしまうと思うんです誰もそんな世界には住みたくはないですし(笑)。作品を通して過去を紐解いていくと、人の過ちなどの負から生み出された表現もあるんですよね。そこから受け取る事実を蔑ろにせず、そういった側面も受け入れながら、新たな気持ちで学べたらいいと思います。

日本では教育的な部分においてそういったアートの力を活用していないように感じます。それはまだまだ可能性があるという裏返しなのですが。以前、海外の美術館に足を運んだ際に、講師が戦争画を前にしながら生徒達に「こういう歴史があったんだよ!」ということをレクチャーしているところに数多く出くわしました。受験のための歴史勉強、教科書だけを通しての教えには違和感を感じてしまいます。どうしても暗記になってしまうし、その時代のことを現実的に考えられない、それではもう一歩踏み込んで人のことを想像できないですよね。

記者   本当にそうですね。人間にとって普遍的なものは、絶対意味が存在しますし、大切なものだと思います。そのことからの学びを生かしていくことは、豊かな社会を築いていくことに繋がっていきますね。

アーティストやクリエイターと社会つなげる架け橋になりたい

記者   新さんが制作する側ではなく、伝える側に重きを置いているのは、何か理由がありますか?

  アートに救われたことがあるんです。だからこそ、それを生み出す力のあるアーティストやクリエイターの方々には幸せでいてほしい。こういうことを申し上げると偽善っぽくて嫌なんですけど(笑)。作品を売ることで食べていくのに難しい友人作家の姿から「自分はこの人たちに対して何かできないかな?」と考えました。今までライターやSNSを通じて構築してきた関係や人脈があるので、それを生かせるのではないかな?と気付き、作家をフォローしながら発展していく方向に導いていけたら嬉しいと感じます。

それが、“架け橋的な役割”へとつながっていくのですが、アーティストも、クリエーターも、ただ創作して完結するのではなく、その創作物と社会をつなげて発展していけると、新たな世界が見えてくると思うんですよね。作家にとって発展していくことが、知名度となり、評価となり、販売価格をあげられるキッカケとなり、精神的にも経済的にも余裕を持てるのではないかと信じています。
仲介や紹介としてお仕事をさせていただく場合は、紹介先の意図を汲み取り、予算も視野に入れながら、作家の想いを自由に思い描けるように努めることはもちろん。さらに、並行してその先にいる鑑賞者や利用者に対して、キチンと伝わるように考えながら企画を進めていくことも大事です。
お互いが直接繋がってしまうことは簡単なのですが、上手くいっているケースだけではないので、その時に自分を使ってくれる意味が生まれると思います。間に人を介したほうが物事が円滑に進んだり、アイディアが増える場合があるでしょうし、制作への集中も高まるかもしれません。繋げた社会側からも同様な良さがあると思います。
それは私の “架け橋的な役割”だけでなく、“文化の底上げをはかりたい" という目的にも繋がっていきます。

記者  それら“文化の底上げをはかる"目的を実現するために、どんな計画をお持ちですか? 

すでに始まっていることもあり、詳細は企業秘密ですが(笑)作家の作品が展示だけにとどまらない仕掛を提案しています。企業が文化的な活動を支援していることは、企業にとっても、社会にとっても、プラスですよね。その上で作家とつなげ、知名度をアップさせながら、プラスにはたらきかけられるように、ビジネス的な仕組みづくりを今後もご提案させていただく予定です。

企業にはアートへの関心を持っていただくことに加え、その興味を持続するために見識を深めていただくためには、私がアートの素晴らしさを伝えていかなければならないし…その上で、上記以外のメリットや金銭面を潤していかないといけません。そうでないと企画の継続はできませんから、それを念頭に置きながら仕事しています。

記者  素敵ですね。今どんな活動をされていっらしゃいますか?

新   1、2ヵ月に1度にはClassy Academy代表の石井江奈さんと、もっと身近にアートを感じてもらえる何方でも参加可能なアート鑑賞会を開催しています。コーディネーターとしては企業のプロジェクトに対して、アーティスト、クリエーターなどをブッキングしています。キュレーターとしては飲食店とギャラリーである「ワインワークス南青山」で2ヶ月に一回、小豆島・二十四の瞳映画村内にある「GALLRY KUROgO」での企画をお預かりしています。他にも、企画に派生して、PRの記事作成。また、フライヤー、PR動画などの販促物のディレクションなども 。クライアントの予算をもとに、節約部分などを算出してみて、できることを最大限に考えます。あっ!もちろん作詞家業をベースに、web媒体でライターとして記事を執筆させていただいていますよ。

人と人との関係性を構築していくことは、労力がかかるということ。
そして情報やアイディアはタダではないですし、だからこそそこに対しての発言には責任が発生するものだと思っています。

記者  まさに人と人の間に入っていらっしゃるんですね!

新  そうですね。「意外と真面目なんですね」と言われます。褒められていると勝手に思っていますが(笑)。色々と気苦労もたえませんが、それも含めて…諦めた…悟った…(笑)。というか、その部分も含めて私の仕事だと思って、させていただいております。

多様性は、全てを受け入れることではなく、異なりを理解したうえで受け入れること

記者  新さんが「人と人、人と社会をつなげていきたい」というビジョンを持つようになったきっかけは何でしょうか?

   ライターとして作家にインタビューをしたり、友人作家から生の声を聞くと、「どうしてこんなに大変なんだろう?こんなに労力をかけたものが知られていないんだろう?」って。1人の声は社会の声だと思うし、もっとその声に耳を傾けてもいいんじゃないのかな?と思ったことがキッカケです。

記者  なるほど。様々な立場の方の声に耳を傾けることは、社会の多様性を受け入れることにもつながっていきますよね?

 よく多様性と言うけれど、様々な事情を抱えている人がいるということを、理解する必要があると思うんです。例えば、最近の物事だと…「LGBTを認めましょう」というはたらきかけはいいと思うんですよ。一方で、そういう教育を受けてきていない世代の人もいて、なかなかそれを理解できなかったりすると思うんです。そういう世代の方々のことも知り、時間がかかってしまうこと。心を広くして待ってあげたり、事情を踏まえて受け入れるのが、本当の多様性だと思うんです。事情もわかった上で認識するということかな。

これはアート鑑賞会にもつながるのですが、自分自身が同作品/同作家/同美術展に対して素直に感じたことをシッカリと受けとめた上で、他者が同じ物事を鑑賞して感じたことに耳を傾け、改めてその視点でも鑑賞してみることから、自分では気づけなかった発見があると思うんです。ただ、その他者の意見に対して肯定や否定もせず、“他人の視点”で物事を見つめること、それが人への理解へとつながっていきます。その上で初期段階で自分が感じたこと“+α”の認識を得ること、それこそが多様性への一歩だと思います。

記者「多様性に対して受け入れていきたい」と思うようになったきっかけはありますか?

 小学生の時に様々な家庭環境の子が多かったのですが、ある時仲良い友達の親御さんから自分の子どもには告げずに、「あなたはいいけれど、あの子は連れてこないで…ウチの子とあの子と遊ぶときには公園にでも行ってちょうだい」と言われたりして。子供の時はただ単純に仲良くしたいし、仲間外れはいけないと思っていたから、そこに対して「なんでその子だけダメなんだろう?」って疑問でしたね。後で、◯◯ちゃんのお母さんにこんなことを言われたよ!と親に話すと、丁寧に事情を教えてもらったけど、あまり理解できなかったのですが。。。
家庭環境とかの格差は当たり前にあるし、それぞれ事情を抱えていることもわかる。だけど、生まれや育ちをまでを否定して、その子を判断しまうのはちょっと違うかな?と。「それはそれとして、一緒に学ぶ権利、一緒に遊ぶ権利はあるんじゃない?」って思っていました。

記者  そういった経験が、人の多様性を理解することに加えて、その差異を認識した上で、人と人を繋げていく活動に繋がっていくんですね。貴重なお話をありがとうございました!

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新麻記子さんに関する情報はこちら↓

WEB媒体【La vie pianissimo】:https://lvp-mag.com/writers/makiko/

Instagram:https://www.instagram.com/shin_makiko/?hl=ja

Classy アート鑑賞会:https://classy-art.peatix.com/view


【編集後記】
インタビューさせていただいた菅と村田です。
今回、アート感溢れる素敵なご自宅の空間で取材をさせていただきました。
新さんのお話を伺い、色々なお仕事に取り組まれながらもその根底には一貫した想いがあって活動されている姿勢に刺激を受けました。
今後のご活躍を心から応援しています!


この記事はリライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達”にも掲載されています。

https://note.mu/19960301/m/m891c62a08b36

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