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小説家の音楽遍歴〜高木敦史の場合〜#2

非ミュージシャンの音楽遍歴研究マガジン、第二回目のゲストは、小説「演奏しない軽音部と4枚のCD」作者の高木敦史さんをお迎えし、自身の音楽遍歴について語っていただきました。
スペシャカレッジ通信 串田

高木

浪人を経て大学に受かって、上京してきました。

串田

福島から東京に来たら、
だいぶ環境が変わりますよね。
CDショップが何店舗もある。

高木

最初は驚きました!
あとは大学入学を機にサークルに入ったんですよ。

串田

いきなりアクティブじゃないっすか!
中高生時代と変わりすぎじゃないですか?

高木

「お酒を飲むとみんなが仲良くしてくれる」というのがわかったんです!

串田

(笑)

高木

酔っぱらってるとよくわからないうちに
「また飲みに行こう!」とか誘っていただけるんですよ。

串田

酒の力で、友達ができた(笑)

高木

はい、できました。
お酒を飲めるようになってからは、飲んでいることが多かったですね。
ただ音楽に関しては、
「自分がこれを好きなのは自分だけがわかってればいいから、他の人にはわかってもらわなくてもいい」
という考えが根本にあったので、
あまり話しませんでした。

串田

今はほとんどコミュニケーションツールとして音楽が消費されてると思うので、ハッとしますね。
高木さんは、自分の趣味を他人に理解してもらうことには全く興味ないんですね。

高木

そうですね。
「彼らは彼らで楽しそうだし、僕は僕で楽しいから大丈夫」
という感覚でした。

串田

音楽を友達作りに利用しようという考えは全くありませんか?

高木

音楽詳しいから教えて、と言っていただいても、
「あなたの趣味がわからないから、まずそこから細かく教えてもらっていい?」
と言うと、相手が嫌になってしまいますね……

串田

なりますかね?

高木

例えば、ユニコーンが好きだったとして、
「すばらしい日々」という素晴らしい曲があるけれど、他はふざけてる歌も多い。「PTA〜光のネットワーク〜」という曲はTM NETWORKのような歌なんだけど……とか話し始めると、相手が黙ってしまいます。

串田

確かにめんどくさいかもしれませんね……(笑)

高木

音楽は友達を作る媒介にはなりませんでしたけど、酒はその媒介になりました。

串田

そうだそうだ、友達は酒の力でできたんだった。
大学の時は、進路に関して何か考えていたんですか?

高木

社会に出たくなかったので、講義に出てバイトをしてお酒を飲んで……という生活がずっと続けばいいのになって思っていました。

串田

意外に、小説のお話が出てこないですね。

高木

大学時代は小説を書いてなかったんです。
本は読んでました。「1日1春樹」でした。

串田

「1日1春樹」(笑)

高木

村上春樹さんの作品を通して外国文学にもはまるんですけど、
小説を書こうとは1ミリも思ってなかったですね。

串田

就職活動はされたんですか?

高木

漫画の編集者になりたい気持ちはまだあって、
就職活動はしたんですけど、全部落ちてしまいました。

串田

その気持ちは残ってたんですね。

高木

はい。その後、自分で漫画を描こうと思いたって、
25歳くらいの頃は出版社に漫画を持ち込んでいたんです。
その時に見ていただいた編集者さんからは、
「君の漫画は字が多すぎる」と指摘されていました。
その後も漫画はあまり上手くいかなくて。
小説を書いたら幸い上手くいきまして、今に至ってますね。

串田

小説を書くきっかけは何かあったんですか?

高木

雑誌を読んでたら、
新人賞をとってデビューされた作家さんのインタビューが掲載されていたんです。
インタビュー内で「小説を書いた理由は、30歳になったきっかけに何かをしようと思って」
とお答えになっていて。
その記事を読んでいたのが、僕が30歳になった当日だったので真似をしてみました。

串田

突然書いたんですか。
すごい理由ですね。
中学時代から大学時代にいたるまでのインプット生活は、執筆に役に立ってますか?

高木

最初に書いた小説に関してなんですが、
ある朝、本屋さんで本を手に取る……という夢を見た直後に目覚めたんです。
夢の中で手に取った本のような作品を書こうと思って、書きはじめました。その本の1行目らしいことを書いて、ある程度のページまでいったら止めようと思いながら。
そういう意味では、夢は過去に見たものでできているという話を聞いたことがあるので、過去の蓄積が役に立っているとは思いましたね。

串田

面白いですねー!
役立ってると思いたいところもありますし。
音楽も役立ってるといいですね。
でも、小説のタイトルが「演奏しない軽音部と4枚のCD」ですもんね。

高木

アイデアの中に音楽はありますね。
「演奏しない軽音部と4枚のCD」は、
CDの棚を見て、「ザイリーカで謎が作れそうだ」と思って書きはじめたんです。

串田

面白いですね。
これは全国のフレーミング・リップスファンにぜひぜひ伝えたいですね。

高木

ありがとうございます!
たぶん他の小説には無い要素だと思うので。

串田

音楽を文章にする時に気をつけることはありますか?

高木

細かく書きすぎてイメージを限定するのではなくて、
基本的な情報に自分の感想を入れる程度にとどめています。
押し付けがましいことはしたくなくて、
感情的にどのように処理するかは読者さんに任せたいと思っています。

串田

フレーミング・リップスを知らない人は、
本を読んでる時にどういう音楽が鳴ってるんですかね……。

高木

確かに、気になります。
音楽をテキストにすることは難しいですよね。
雑誌のライブレポートでも苦労して書かれていることが伝わるものもありますね。
僕の場合は、技量が無いこともあるとは思うんですが。

串田

では、最後に今はまってる音楽ってありますか?

高木

佐野元春ブームが来てますね。
あとは、トリプルファイヤーというバンドが好きです。

串田

おー。
トリプルファイヤーみたいな若いバンドも押さえてるんですね。
音楽は変わらずに掘っていらっしゃることが一発でわかりました。

高木

変わらず中古CDショップに行っています!

串田

そこは普遍的(笑)
本日はありがとうございました!

高木

ありがとうございました!

今回のインタビューは以上となります。

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