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小説家の音楽遍歴〜高木敦史の場合〜#1

非ミュージシャンの音楽遍歴研究マガジン、第二回目のゲストは、小説「演奏しない軽音部と4枚のCD」作者の高木敦史さんをお迎えし、自身の音楽遍歴について語っていただきました。
スペシャカレッジ通信 串田

串田

ザ・フレーミング・リップスが出てくる小説を初めて読みましたよ!

※小説「演奏しない軽音部と4枚のCD」に登場する4枚のCDのうちの一枚がザ・フレーミング・リップスの「ザイリーカ」

高木

ありがとうございます!
小説でも出てくるザ・フレーミング・リップスの「ザイリーカ」は、自分で中古CDショップに行って買ったんですよ。
分厚いパッケージがありまして、
「これ面白いな」と思ってレジに持って行ったら、
店員さんに「大丈夫ですか?」って言われて。
「CDに大丈夫とは……?」と思って買って帰ったら、
混乱しました。

串田

完成形が聞けないんですよね。
フレーミング・リップスで最初に買ったのはどの曲ですか?

高木

ヨシミ・バトルズ・ザ・ピンク・ロボッツ」ですね。
「ヨシミって何だろう?」と思って買いました。

串田

僕も一緒ですね。
フレーミング・リップスは様々な世代に受け入れられてるバンドですよね。
若い人からも人気ありそうですし。

高木

僕もそう思います。

串田

フレーミング・リップスが出てくる小説というだけで読みたい人は結構いると思います。
ちなみに僕もその一人で、小説を読ませていただきました。
高木さんは今おいくつなんですか?

高木

35歳です。

串田

そうなんですね。
では、過去に遡って音楽遍歴を聞いていきたいと思います。
本日はよろしくお願いします!

高木

よろしくお願いします!

串田

ではベタな質問ですが、
一番はじめに買ったCDは何でしょうか?

高木

ユニコーンの「働く男」のシングルですね。
中学校3年生の時に、
ユニコーンが解散したタイミングで「すばらしい日々」を聞いて、
「かっこいい!」と思って、中古CDショップに行って買いました。

串田

中学時代ってお金が無いから、
CDを買うって気合い入れなきゃだめじゃないっすか。
お金を貯めてCDにつぎ込んでいたんですか?

高木

基本はレンタルですね。
あとは中古CDショップに行ってました。
当時チェーン展開しているようなお店は周囲に無かったので、
個人で経営している古本屋さんの脇にあるCDの棚をあさってました。

串田

おーそうなんですね。
音楽情報はどうやって仕入れてました?

高木

レンタルショップに行って見ていました。

串田

見る(笑)

高木

CDでーた」とか「WHAT'S IN?」のような音楽雑誌のディスクレビュー欄もよく見ていましたね。
そこで見た好きそうなCDを適当に選んで買って、
(好みとは)外しちゃう(笑)

串田

外しますよね(笑)

高木

中高生時代はずーっと外しながら、
精度を上げていきましたね。
歳を重ねるごとにどんどん外さないようになっていきました。

串田

その時は、一人で曲を探してたんですか?

高木

そうですね。
友達はほとんどいなかったので、
全部一人でした……。

串田

一人ですか……。

高木

たまーに高校で、
前の席の人が「フリッパーズ・ギター」を聞いていて、
「オザケンだよね」とかぽろっと言うと、
「知ってるの?」みたいに反応をもらえて。
それから話をするんですけど、
その時だけ話をして終わっちゃいました。

串田

なるほど。
中学時代に将来やりたいことはあったんですか?

高木

上條淳士さんの『TO-Y』という漫画は、
吉川晃司さんとかサンプラザ中野さんを登場人物のモデルにしていて。
少年サンデーで連載していて好きだったんです。
その漫画を読んで「バンドってかっこいいな」と思ったんですけど、
バンド活動は友達がいて明るい人がするものだと思ってたんで……。

串田

諦めたんですね……。

高木

明るくて友達がいる人と同じスタートラインにはたてないだろうと思いこんでいて。
次に「こういう音楽を演奏する人にはなれないけど、こういう漫画を描く人にはなってみたい」と思って、
漫画家を目指してた時期もあったんですよね。
それから自分で漫画を描いてみたんですが、
いまいち上手くいかなかったんです。

串田

漫画と音楽だったんですね。
最初に聞いた洋楽は何ですか?

高木

Green Dayですね。

串田

意外!明るい!

高木

Green Dayの「Insomniac」だったと思います。
90年代後半にHi-STANDARDとか、パンクブームがありましたよね。
その流れで洋楽を聞いてみようと思って追いかけてたんです。
それでGreen Dayを聞いてました。

串田

Green Dayだったら、
クラスではまってる人が結構いたと思うんですが。

高木

そう思います。
僕以外の人は、
友達ネットワークを通して(趣味で)繋がってるとは思うんですが、
僕は相変わらず一人で聞いていました(笑)

串田

さ、寂しい……。

高木

ときどき音楽の話をしているグループに向かって
「その曲知ってるよ!」とか言ってみるんですけど、
声が通らないので、全然他の人に届かなくて。

串田

(笑)
言うのは言ってみたんですね。

高木

はい。
本当にときどき、勇気をふりしぼって言ってみても駄目でした。

串田

友達からではなく、
全部自分で(音楽を)掘っていったんですね。

高木

そうですね。
自分が気に入ったものを適当に選んでいたので、
体系化されていない部分があって。
「これが好きだったら、これも好きでしょう?」って人から薦めていただいても、
わからないことが多いんです。

串田

なるほど。
友達との話のなかで音楽の趣味は広がっていきますもんね。
でも高木さんは完全に独自の方法だから気づかない。
独自の模索方法の中で、何かこだわりとか探し方はありましたか?

高木

自分だけにしか通じない感覚なんですが、
たとえば漫画だと、「タイトルと作者名と出版社名」が調和してるものは絶対面白いんです。
そういうものをCDにも感じてましたね。
あとは、流行ってるものを聞くのが自分の楽しみ方としては面白くなくて、
前情報無しに買ってみて、「これがいいかどうかわからないな」って思っているときの感覚が好きです。

串田

わりと突き進むタイプですね。
我慢しながらわかるまで聞く。

高木

そうですね。
学生の時にブリットポップブームがあったんですけど、
僕にはよくわかりませんでした。
それから10年くらいたってから「オアシスいいなーっ」と思うことはありますけど(笑)

串田

高校の時はどういう音楽のはまり方をしてたんですか?

高木

当時NHK-FMで「ミュージックスクエア」という番組を放送していたんです。
売れている売れていない関係なくフルバージョンでかけてくれるので、
それをずーっと聞いていました。
聞いたなかでthe pillowsを気に入ってはまってましたね。
今でもライブに行っています。

串田

じゃあ初めてライブに行ったのは高校時代ですか?

高木

いえ、違います。
僕は郡山市という地方都市出身なのと、
当時は一人ぼっちなので、
そういう場所に行くという意識がなかったんです。
上京して、大学の友人に誘われていったのが最初のライブ経験です。
確かZABADAKでした。

串田

ZABADAK!
田舎で一人ぼっちだと、どういう高校生活をおくっていらっしゃったんですか?

高木

自転車で通える範囲の中古CDショップと古本屋をマッピングして、
巡回して行く生活でした。

串田

部活動はされなかったんですか?

高木

弓道部に入っていたんですけど、
毎日行かなきゃいけないのが嫌で辞めちゃいましたね。

串田

なるほど……その巡回って、
毎日行くんですよね?

高木

はい、毎日です。

串田

毎日行くと、どのCDが売れたのかわかるくらいになりますよね。

高木

そうです! そうです!
サザンオールスターズが抜けて、佐野元春が入ったぞ! みたいな日々でした。

串田

インターネットが無いときは、そうするしかないんですもんね(笑)

高木

インターネットは本当に便利ですね(笑)

串田

高校時代も、完全に孤独な世界で生きてますね。
友達を作ろうとしなかったんですか?

高木

変な自意識が強かったのかなと思います。
「他人の言うことなんか、聞いてもしょうがないんだ!」
とか思い込んでいたんですね。
いざ話してみて、こちらが知ったかぶりして返り討ちにあうのは嫌だから、
触らぬ神にたたり無しと思って毎日を過ごしてました。
「僕が他人を甘く見てることを他人は気づいているに違いないってことを自分が理解しているのがバレたら困る」
と思ってました。

串田

(笑)
ちなみに高校の時は成績はどうだったんでしょう?
大学は東京なんですもんね?

高木

そんなに良いほうではなかったです。
進学校だったので、大学に行くことは当然のような雰囲気でした。
自分としても、地元から離れたいという気持ちはありました。
地元の中古CDショップは全部制覇していたので、
もっと大きな中古CDショップに行きたいって思っていました。

串田

タワレコに行きたいとかじゃなかったんですね(笑)

高木

タワレコという概念がまず無かったです。
当時、知っているなかで新星堂が一番大きなCDショップだったので。

串田

そして上京するわけですね。

次回に続きます。

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