それは出勤一時間前の事だった。前日客足が引かず店を閉めそこね、16時間勤務になった挙句大量にお酒をいただき、へろへろで帰路につくも浅い眠りの繰り返しで疲れが全く取れない。

やばいなぁ。明後日試験があるのに全然勉強もしてないし、でも今月売上げ低いから昨日みたいなタイミング逃したくないし…取り敢えず今日は出勤ギリギリまで寝よう。化粧もしなくていいや。

うとうとしていると嫌な気配がやってきた。まずいよまずいよー今日は金縛りにあいたくない。でもなってしまったもんはしょうがないから体脱しないよう気をつけて寝落ちしよう。その思いも虚しく、夢が鮮明になってゆきmが現れた事で夢だと気づいてしまった。気づいてしまったが最後、明晰夢がはじまる。

いえーい。疲れてるゥー？酢だこさん食べる？

普通元気？ってきかね？酢だこさんうめぇ…夢でも酸っぱいってわかんだね。それはそうと、これから一時間後には出勤だからできれば寝たいし一時間後に起こして欲しいんだけど。

大丈夫大丈夫。普通にそこの布団で寝れば。心配しなくてもアラームでいつもみたく起きるよ。

夢の中で寝るとか思いつきもしなかった。ありがとう！

そしていつもの布団を高級布団に変え全身いい気持ちで眠りについた。そして夢を見た。
…折角眠ったのにまぁた明晰夢かよ！m！

あんたも難儀だね〜。もっかい寝たら？

いや、逆にもうそろそろ起きてないとやばいと思う。
部屋をいらいらうろうろしていると試験の問題集を見つけた。開いてみると、中身も問題ないようだ。と言っても目が覚めてから思い出せば問題ありまくりだった事に気づくというパターンもあるので油断は出来ない。が、時間も無駄に出来ないのでちょっとだけ勉強してみることにする。特に実技に自信がなかったのでmに協力してもらい、何度も反復してイメージを固めた。

ふぅ。これだけやれば受かりそうな気がする。ってか時間気にしてなかった！三時間くらい経ってるって。起きなきゃまずいよねぇー？！なんか起きれる気がしないんだけど！仕事ー！

大丈夫だって。あと三年くらいここにいたら。

いやいやもう起きる。アラーム鳴らなかったのかなぁ。

そもそも時間なんてもんないからね。便宜上作っちゃったのはわかるけど、夢の中でまで時計見てるのなんか哀れだよなァー。
出勤前の一時間と、ダルい仕事中の一時間とではどー考えても違うのに、時計の針が進むだけのチープな機械を見て時間が進んでる！なんて焦って、ププー。笑える。ギャグかよ。

いや、今日はそういうのいいからー！なんで起きれないの。やばいやばい。発注忘れてたもう終わりだー。このまま目覚めないで死んだほうがマシだー。

宇宙は時間が進むのが遅いから帰ってきたら周りより若かった、とかね、言ってることの矛盾に気付けよ的な…
起きたら電話すれば間に合うよ。酒屋に都合つかなきゃ今日だけはカクヤスに頼めばいーじゃん。カクヤスはすげーから。

ほんと？そっか。カクヤスすげーもんね。もう、なるようになれだわ。今まで真面目にやってきて、前日もあんだけ立ちっぱなしで働いて、今日1日くらい、遅刻したって、なんなら出勤しなくってもいいよね。しょうがないよね。このまま起きれないで死ぬんだもの。などと愚図愚図言ってたら夢がぼやけ、あっという間に目が覚めた。身体が鉛だ。

そして、時計を見たらまだ5分しかたっていなかった。アラームも50分くらい猶予を残してきちんと動いていた。とりあえず酒屋さんに謝りながら覚えてるだけ発注したら、店で確認してからもっかい電話しても大丈夫ということになった。助かる〜
変に頭が働いていたので軽く試験勉強の復習をし、夢の中で勉強しても頭に残ることを確信。睡眠学習とかいう変な枕型の機械が昔あったが、それよりは多分確実。
体感的には4時間だったがたったの5分でこれだけ勉強できたらチートじゃん。そう思ったが、集中力が続いたとか、よっぽど眠りの質が悪かったとか、色んな条件が重ならないとできないらしい。その後成功するのは稀だった。あと、結構勉強してからじゃないと夢の中の問題集が偽物になってしまうので意味なかった。
実技は使える。できなかった二重跳びが、夢の中の特訓により現実でもできるようになったのだ！かめはめ波はさすがに撃てないが、できると思って努力したことは反映されるので、私はリアル精神と時の部屋（ドラゴンボールのアレね）を手に入れたことになる。

そしてその日の仕事のパフォーマンスは最悪だった。頭の中でシャンシャン音が鳴り続けていた。そして、瞳孔が開いていた。死ぬなこりゃ。そして14時間ワーク。徐々に身体に異変が出てき始めるがまた別の話にて。