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二人芝居「息子の証明」【会見&ステージレポート】

2021年8月25日(水)〜29日(日)、東京・博品館劇場にて上映される 二人芝居「息子の証明」。
有澤樟太郎が初の本格会話劇に挑む本作品。記者会見と公開ゲネプロの模様を写真と共にレポートする。

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舞台は立派な洋館の応接間。そこここに置物や段ボールが転がりどこか雑然としたその空間に、嵐と共に入ってきたのは有澤演じるスーツ姿の青年・来栖現実(リアル)。
電話でのやり取りや独白からこの館が彼の実家であること、そして今から館の住人、大女優として名を馳せる母親に、とある頼み事をしなければならないことが明かされるが――。

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実に8年ぶりの対面を果たす母子だが、息子からは久々の再会を喜ぶ様子は感じられず、山下容莉枝演じる母・来栖小梅もその帰郷を歓迎する気配は希薄。

まるで互いを牽制し合うかのような会話の中で、徐々に2人の関係性や、これまでの母子関係、そして両者の齟齬が明らかになってゆく。

ゲネプロと共に行われた会見で、山下が「最初はパズルが一つ一つ、いっぱい散らばっているのですが、物語が進むにつれて少しずつハマっていき、ある形を成していくんです」と語っていた通り、膨大なセリフの掛け合いの中で、観客がこの母子に感じていた違和感が徐々に解きほぐされる。
それと共に浮き彫りになるのが、息子、母、それぞれが抱える本当の感情と、これまで隠されていた真実。

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約90分の上演時間、有澤と山下はほぼ袖に引っ込むことなくひたすら喋り続ける。山下曰く「稽古中、私語を全く交わしませんでした。というのはセリフの量が多すぎて、顔を見るたび『どこやる!? どこやる!?』って、ずーっと掛け合いしかしてこなかったんです」。
そこから生まれた二人の自然なやり取り、口論、感情の衝突はまさに〝母子〟そのもの。息子が生まれてからこれまで重ねてきた年月の重み、そしてそこから生まれてしまった歪み、断絶をリアルに感じさせてくれる。

会見では「緊張してます。二人芝居は初めての経験ですし、一からオリジナル作品を作っていく大変さを痛感しました」と少し固い表情で語っていた有澤だが、山下演じる母親との応酬は実に自然。感情の昂りをセリフや表現に乗せ、才気溢れる母親に対峙する〝持たざる者〟としてのポジションを、水を得た魚のように生き生きと演じていた。

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劇作家・演出家・脚本家の毛利亘宏が『Sparkle vol.45』のインタビュー内で有澤をこう評していた。

「オリジナルを……自分のために書かれた役を演るキャリアは、まだこれからどんどん積んでいかなきゃいけないかな。でもその中で諦めずにアタックしてくる努力家で、やっぱりすごくガッツがあるんです」

本作の脚色・演出を手掛けた高羽 彩も会見内で、
「素直なので、真っ直ぐに芝居作りに取り組むことができる。そして有澤さんに稽古場で『打てば響く役者・有澤』と二つ名が付いたんですけど(笑)、ちょっとした一言を掛けるだけで『ああそう、それが欲しかったの!』というセリフをポンと出してくださる。非常に瞬発力と読解力のある役者さんだなと思いました」
「我々に比べて若手の俳優さんではあるんですけど、稽古期間中、蕾が花開くような瞬間を何度も私たちに見せてくれました」。

有澤にとって大きな挑戦となったこの作品を通して、彼はきっとまた一つ、オリジナルの役を演じる上での大きなヒントを掴んだのではないだろうか。

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そんな有澤の熱を時には受け止め、時には受け流しと、柔軟な芝居で対応する山下は流石の一言。
激昂する息子にも屈することのない〝強き母〟を十二分に見せつけてくれるが、息子がその場を離れた一瞬ふと見せる表情に、彼に対する複雑な想いを匂わせる。

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痛々しいほどにすれ違う〝対話〟を重ねた先に、母子はもう一度〝家族〟となれるのか。
そしてその〝証明〟となるものは何なのか。

「テーマは〝家族〟〝繋がり〟。これを山下さんと一緒に、千秋楽まで届けていけたらいいなと思います」(有澤)

29日公演はStreaming +PIA LIVE STREAMでライブ配信も行われる(アーカイブは9月5日(日)23:59まで)。
ぜひ多くの方にこの濃密な二人芝居を、そして今だからこそ観られる俳優・有澤樟太郎がより大きく開花する瞬間をご覧いただきたい。

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(写真左から)
高羽 彩、有澤樟太郎、山下容莉枝

二人芝居「息子の証明」

【日程】2021年8月25日(水)〜29日(日)
【会場】東京・博品館劇場
【脚色・演出】高羽 彩
【脚本】下 亜友美
【出演】有澤樟太郎、山下容莉枝
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有澤樟太郎さん掲載最新号
『Sparkle vol.45』

表紙+巻頭グラビア&ロングインタビュー15P
松田 凌×有澤樟太郎 2shotグラビア&SP対談8P
+綴じ込み付録 特製ピンナップ(ソロ・松田 凌×有澤樟太郎2shot)


テキスト:田代大樹
写真:井上良一

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