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イノベーションは成果物ではなくアウトカム

イノベーションスペシャリストとして活動を続け行くうちに、任される案件の規模は次第に大きくなり、都市や地域規模の案件の相談を受けるようになって来ました。
地域イノベーションやシビックイノベーション案件を進めていく中、なんでもっと早く相談してくれなかったんだ、と思う事案が頻繁に起きます。特に企業や行政が主体でイノベーションを起こしたいと考える時に、この事一つだけ整理しておくと、起こそうとしているイノベーションの持続性が大幅に改善されるポイントがあります。

イノベーションプロジェクトの始まり

イノベーションは夢や願望から始まります。そうして、我々のようなイノベーションスペシャリスト達は、その夢や理想の状態にどうやったらたどり着けるかを考え、仕組み作りをし、イノベーター達を育て、イノベーションそのものを加速して行きます。そのプロジェクトで描きたいビジョンが決まってから初めてコスト計算をします。そして、そのイノベーションが持続可能な状態になる為にできるだけ綿密な計算をします。

ただ、未だに数多くのイノベーションプロジェクトが始まる際にどうしても予算から話が始まります。我々に相談が来るプロジェクトの過半数が、やはりこうでした。

アウトカムか、予算か?

我々イノベーションスペシャリストの頭の中では、イノベーションとは必ずしも終わりが明確ではなく、プロジェクトに参加するイノベーター達の手によってアウトカムが常に少しずつ変化しているものと考えています。

我々はイノベーションをデザインする時には必ずアウトカム(例えば社会的インパクトや、人々に与える影響など)がなんであるのか、それらを産み出す費用はどれぐらいなのか?それをどう継続していくのか?と言ったような事を順番に考えていきます。

実際の所、コストベースの事業に慣れているチームが進めるプロジェクトの多くは、イノベーションをある固定的な成果物として捉えようとしますが、それは本当に失敗しやすい考え方だと思います。なぜなら、そのプロジェクトがイノベティブであったかどうか、の答えが出せるようになるには数年、または数十年かかる事がほとんどだからです。

成果物はあるがイノベーションが発生しないわけ

今東京には沢山のイノベーションの名のついた作業スペースがありますが、それらの多くが、「作っておしまい」と言った考えで作られた様に見えます。その場がイノベティブかどうかは、場を作った後の物凄く地味でそれなりに複雑な作業の積み重ねを経て、何年か後になって全過程を見て見て、初めてそこがイノベティブであったかどうかがわかるのだと思います。

成果物慣れしてしまっているチームが作るイノベーションスペースやイノベーションプロジェクトはおそらくほとんどの場合、イノベーションは成果物なのか、アウトカムなのか、のような議論をしていません。多くの企業には、未だに「良いものを作れば売れるはず」と言ったマインドセットがあるため、どうしても成果物ばかりに注目してしまいます。

イノベーションはイノベティブな状態を表す言葉であり、固定的な成果物ではないと言うことです。ですので、ただかっこのいい箱(イノベーション施設や、様々なコラボレーションスペース)だけを作り、それをイノベーションの成果物としてしまい、ではその成果物をどう使おうか、と言う発想の流れは、我々からすると、一番大切なところを考えずに作ってしまった箱である、と言うことになります。

アウトカムの定量化が難しすぎるという場合は、大体の場合、ではどんなKPIを設定するんだ、という話になります。プロジェクトのKPIは無いよりあったほいが良いです。ただ、そのプロジェクトのアウトカムよりもKPI達成が優先されてしまうリスクが発生してしまいます。特にプロジェクトが難航し始めると、ゴール達成は無理だけど、KPIの一部は達成しました、という言い訳作りが始まります。

誰にでも実践できるリスクヘッジ

企業が起こしたいイノベーションはどんなのか?それが一番重要な問いです。この予算に見合ったイノベーションを下さい、ではいくら我々でも手が施せません。起こそうとしているイノベーションでどんなビジョンを描きたいのかが見えて来ると、ではそのイノベーションを起こせるチームや必要なリソースはどんな感じか?と言った話がスムーズに発生することになります。そこまで来ると、そのプロジェクトの持続に必要なリソースも見えて来ることになるでしょう。

事業企画部やCSR部に振り当てられた予算でどれだけのイノベーションが起こせるか、という問いではかなり割高なアウトカムしか手に入れられません。その理屈は、イノベーションプロジェクトではなくても同じです。
どうやって運転して、誰がメンテナンスをし、燃料と廃棄物がどこから調達され廃棄するのかが決まらないまま高価な機械が製造されないのと同じ理屈です。またそう言った維持に必要なリソースや依存性を整理しないまま作られた機械は、ほとんどすぐにスクラップとされてしまいます。

まずは気軽に、どんなイノベーションを起こしたいのかをイノベーションスペシャリストと相談するところから始めてはいかがでしょうか?成果物重視で全損なってしまうプロジェクトを何十個も手掛けてしまうより、大失敗をするリスクをかなり下げる事ができ、さらに必ず大幅に低予算で持続可能なイノベーションを生み出せるかと思います。

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