見出し画像

Unlearn - イノベーションを起こすには、カタを忘れろ

To Innovate, Unlearn first

以前、日本人は何事もカタから入る文化があると書いたことがある。今回はイノベーションのカタを忘れると何が起きるかについて書きたい。

Unlearn

日本語にしにくい英語は沢山ある。Unlearnという言葉もその一つだ。色々な意味を持つ。誰に教えてもらったわけでもなく持っている生得的な知識を意味するときもあるが、すでに持っている知識を一回忘れる、という意味もある。

先述のブログにも書いたが私は昔剣道をやっていた。どちらかと言うとカタの重要性は竹刀で叩き込まれた方だ。歳をとるにつれて世の中にはたくさんの考え方があり、「課題の解決方法が一つしかない」、と言う訳ではないと気づいた時、それなりの衝撃だったのを覚えている。剣道が悪いわけでも、カタが悪いわけでは無い。むしろカタの価値を理解でき、なぜ多くの人がカタだけに頼るかもわかるようになった。

日本にはカタ破りという言葉があるが、Unlearnはそれに少し近い。強いていうならば、カタを破ると言うより、一回、力を抜いて、一歩もどり、全体を見回してから課題について丁寧に考えてみる。そして、すでに解決をしたことがあるような課題でも、全くみたことも無いような課題を解決するような気持ちで考える。それがUnlearn だと思う。

イノベーションという名の教本

悪い癖や、以前上手くいった時の手法をそのまま次のチャレンジに当てはめようとすると、イノベーションの阻害になる事は良くある。そういった阻害するものを取り除くのはもちろん重要だ。ただ、悪い癖はやめなさい!と言われても我々はあまり良い反応を起こせない。痒さを我慢できないのと同じだと思う。今、ただ目の前にある課題を解決しようと、とっさに手が動いてしまう。一回気づいてしまった課題はなかなか忘れることができないので、できることからしてしまいたい…と言う強い気持ちが常にあるのが人間のサガかもしれない。

では、イノベーションコンサルタント達はどうか?質の悪いイノベーションコンサルタントは手法を一生懸命教えようとする。イノベーションが起きるかどうかより手法が正しいかどうかが重要だ、という、質の悪いコンサルタントは、大手コンサルティング会社にも沢山いる。独自のワークショップの手法を見せてあげるだけで数千万円かかるようなタイプだ。カタ通りにイノベーションを起こそうとすると、ある程度決まったリソース(人材、スキル、ハード、ソフト)が必要になる。そうすると、それらが無い、又は足りない、と言う話になり、そもそもの課題解決よりリソースをどう集めるかと言う話(用は、予算どり)で止まり、次第に、「これはうちには無理だ」みたいな支離滅裂な結果で終わる。手法だけを教えてもらったり、以前、別の誰かのケースでうまくいった手法を教えて貰うのはイノベーションでは無く、ただの「イノベーションごっこ」だ。

Unlearn無しではInnovationも無い

我々が数多くのイノベーションの相談を聞く中、「この人達は本気だ」と感じる時がある。そう言う人達には我々も真剣にイノベーションに向かうロードマップを一緒に作り、一緒に試行錯誤、切磋琢磨をしていく。我々は、そういった人達に手法だけを教えることは無い。中にはワークショップ疲れするまでいろいろな手法を叩き込まれている相談者もいる。大手企業でよくあるパターンだ。そういった彼らに我々ができることは、一緒にInnovationをUnlearnすることだ。

イノベーションのUnlearnが必要としている人達に一番多い傾向は、イノベーションはプロに相談し、うまいやり方を教えてもらうべき、と言う姿勢かもしれない。我々はイノベーションを必要としている事業や地域の当事者としか仕事をしないのは、イノベーションのUnlearnを一緒にできるかできないかが非常に重要だと考えているからだ。当事者がUnlearnできない場合、我々には何も手を施せない。今までのやり方が上手くいっているのであれば、我々に相談に来る事もない筈だという事であり、今まで通りのやり方を貫き通したくて我々に相談しにきているのではないと思う。だから、まずはUnlearnから始まる。

持続可能なイノベーションに繋がるUnlearn

Unlearnが起きると、まずは、自分たちの手の届くところに今まで気付いていなかったリソースがどれだけあったかに気付く。関係なかったと思われていたが実は非常に重要なデータの存在や、人材、コミュニティーなどがやっと見え始める。一回そういったものが見え始めると、それらをつなげ、以前よりもずっとアジャイル (agile) に課題解決に向かえる。

Unlearnが上手くできるともう一つ起こる事がある。イノベーションをUnlearnした後に起きるイノベーションは、誰かに教わったコピーでは無いので、その課題に特化した手法を自らが思いつける様になるということだ。ゆえに、課題が持続可能な状態で解決し、結果的に持続可能なイノベーションが起こせるケースが多い。

イノベーションのプロこそUnlearnを

イノベーションはデリケートであり、そこら辺から持ってくることも、持ち運んで別の課題の上にボンッと置くこともできない。最近の世の中で流行っているイノベーションを1回忘れてみてはいかがだろう?
一つ一つの課題を丁寧に、関わっている人達にリスペクトを払い、イノベーションを商品として振り回さずに、落ちつて考えて見てみれば大体の課題は解決できる。とっさにパニックを起こして上司に理解してもらえそうなイノベーション商品に手を出す前に、一回手を止め、頭を上げ、周りを見渡す事こそがイノベーションをUnlearnする事の第一歩だ。Unlearnする時間は惜しんで欲しくない。それから、この業界(イノベーションで食って行こうとしている業界)のプロフェッショナル達にもUnlearnを強く勧めたい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?