すペ3

ひらめいたことをブログより短く、つぶやきより長く書いています。

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最近の記事

もういちど生まれる。

・ヤキモチを焼いてくれない彼氏に不満気な汐梨は別の友人からキスをされて…。 ・ストイックにダンスに打ち込む遥と何かおもしろいことないかなーと日々を過ごす翔多の束の間のバイトの休憩時間。 ・美人な姉と自分を分子と分母にしてちゃんと1になる事を気にする予備校生の妹、梢。 など、もうすぐ20歳を迎える若者たちの憧れと挫折と妬みと焦りに満ちた日常を描いた短編集。 青春=コンプレックスなのか?って程に、コンプレックスに押しつぶされた日常を送っている若者たちの話。急に自分の事を俯瞰で見

    • 六人の赤ずきんは今夜食べられる。

      森には不思議な秘薬を作る赤ずきんが何人も住んでいる。しかし毎年赤い月の夜に現れるオオカミの化け物によって多くの赤ずきんは喰い殺されてきた。今宵も赤い月の夜が訪れて…という話。圧倒的な身体能力と人間以上の頭脳を兼ね備えたオオカミvs魔法のような特殊な効果を持った秘薬を操る六人の赤ずきん+謎の猟師。夜明けを迎えるのは果たして。 設定には惹かれたけど何せラノベに抵抗があるもんで躊躇した。台詞の掛け合いとかキャラクター造形とかイラストとか、邪魔しない程度なラノベ感で、ただただ頭も体

      • 希望が死んだ夜に。

        川崎市で14歳の少女・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した疑いで逮捕された。犯行は認めたものの動機を語らない少女の送検までの猶予は48時間。困窮家庭の冬野と見るからにお嬢様育ちの春日井の意外な接点とは、という話。 貧困問題や少年犯罪など「現代社会の闇」などと紹介されているけど、接点の無い被疑者のホワイダニットに注力した絶妙なストーリーテリングを評価したい。読めば読むほど真相から遠ざかる感じ。 子供は弱いけど子供は強い、いややっぱり弱い、そんな感想。次から次に汚い大人

        • 成瀬は天下を取りにいく。

          コロナ禍で閉店が決まった西武大津店に夏を捧げると宣言した成瀬あかりの挑戦の物語。奢らず媚びず動じない、常人の枠に収まらない成瀬の振る舞いがやがて周りの人々に影響を与えていく、という話。 まずタイトルが秀逸。んで読み終わったらおそらく誰もがこう思うに違いない「そりゃ天下を取るに決まってる」。 人生を大事に生きるという事って、つまりはこういう事で。「私は二百歳まで生きようと思うんだ」と言いながら「日々を貴重なリソース」と考える成瀬の思考に全てが凝縮されている気がした。そして惜

        もういちど生まれる。

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        • 読書の記録
          50本
        • ハマリモノ
          27本
        • インスピレーション
          34本
        • プロフィールに追加
          42本
        • いつかやりたい事
          11本
        • コマリモノ
          23本

        記事

          サーモン・キャッチャー。

          釣った鯉のポイントに応じて景品と交換してもらえるというシステムのカープ・キャッチャー。そこを訪れる七人の男女と一匹の鯉と一つの言語が織りなす偶像劇。追う者と追われる者が絶妙に交差していくストーリー。果たして最後に夢を掴むのは誰か。 道尾秀介らしいストーリーテリングによって描かれた新感覚の偶像劇。まずミステリー的な仕掛けもないし、偶像劇らしい物語の「転がり」も悪い意味での裏切りの積み重ねというか…利き手と反対の手で舐られてる感じ。この独特な不快感が逆に癖になるのかもしれない。

          サーモン・キャッチャー。

          能面検事。

          晴れて大阪地検の検察事務官になった惣領美晴が配属されたのは、常にポーカーフェイスで表情も感情も表に出さない検事、不破の元だった。ついた渾名が能面検事。 「事務官とはいえ、質問者の顔色を窺い、洞察力と度量を推し量る相手に、感情を徒に表出して務まると思うかね」 「事務官は検事の手足、検事が何を疑い何を調べているのか教えてくれなければ手足だってスムーズに動けません」 やがて二人は世間から注目を集めるストーカー殺人事件を担当する…という話。 富豪刑事みたいな感じで、個性的な探偵役が

          能面検事。

          聴き屋の芸術学部祭。

          文芸サークル第三部ザ・フールに在籍する柏木は「無料で何でも聴きます」という看板を掲げ「聴き屋」として3日間の芸術学部祭で個人活動をしている。そんな柏木の元に集まってくるのは個性豊かなサークルメンバーや聴き屋の客達。空き教室で黒焦げの死体が見つかったかと思えば、結末の無い戯曲の結末探しに付き合わされたり、模型部で起きた悪質な悪戯の深層を推理したり。コミカルで多忙な柏木君の日常を描いた短編集。 聴き屋からして秀逸な設定。あとがきで作者自身が語っているけど、とにかく見本市さながら

          聴き屋の芸術学部祭。

          ありえないほどうるさいオルゴール店。

          運河が有名な北の町にひっそり佇むオルゴール店。耳利きの店主があなたにぴったりの音楽をオルゴールにいたします、と書かれている。 導かれる様に店に立ち寄った客達はちょっとした土産物のつもりでオーダーしてみたが…という話。 本人すら自覚していなかった心に流れる音楽に耳を傾ける事で、忘れかけていた大切なものに気付く人生模様。 所謂、安楽椅子探偵系のコージーミステリって感じの設定なのだけどコメディ要素は少なく、自問自答するキッカケを与えてもらうような、良く言えば優しい物語。装丁とタイ

          ありえないほどうるさいオルゴール店。

          グランドマンション。

          グランドマンション一番館は一見普通の賃貸マンションだが、育児放棄、ストーカー、空き巣、オレオレ詐欺など、次々と事件に巻き込まれていく住人達。やがて隣の敷地には二番館の建設が始まり…という話。叙述の名手・折原一による連作短編集。 叙述で連作短編集はヤバ過ぎる。しかも主人公が各話バラバラなので、如何にして錯覚や記憶の錯誤が起こせるかになってくるので、そういう意味だと老人ホームは叙述トリックには向いてるのかも知れない。 辻褄合わせのような回りくどい言い回しや、不自然過ぎるミスリ

          グランドマンション。

          純喫茶「一服堂」の四季。

          一服堂は、極度な人見知りな美人店主・ヨリ子さんが営む古民家風のいわゆる純喫茶。接客もままならないヨリ子さんだが何故か猟奇殺人事件の推理を聞くと豹変し目の覚めるような珈琲と鮮やかな推理を披露して…という話。春と夏と秋と冬の事件を扱った連作短編集。 正統派な安楽椅子探偵かと思いきや、おのれ東川篤哉、なかなか汚い手を使ってくるじゃないか。意外と丁寧なミスリードと安楽椅子探偵の特性を存分に活かした面白ミステリー小説。 正直、邪魔に感じるくらいのギャグとミスマッチな猟奇殺人事件は、

          純喫茶「一服堂」の四季。

          甘美なる誘拐。

          ヤクザ研修期間中の真二と悠人は、兄貴分のインテリヤクザ荒木田に今日もどやされている。 父親の経営する自動車部品販売業を手伝う菜々美は地上げ屋の悪質な嫌がらせに手を焼いていた。 一方、貸金業者の稲村は何者かに殺されて現場に残されたのは原稿と小説「甘美なる誘拐」。 やがて、脱法行為で金を稼ぐ宗教法人の教祖の孫娘誘拐計画が持ち上がり…という話。 オーシャンズ何とかみたいにクセ者揃いのスペシャリスト達が力を合わせて華麗に誘拐する話かと思ったけど、どちらかといえばヤクザ半人前の二人が

          甘美なる誘拐。

          八番筋カウンシル。

          Y字型を逆さにして「八番筋」と名付けられた商店街で、自らカウンシルと名乗っている青年会の連中。訳あって仕事を辞めて実家に帰ってきたタケヤスは葬式の手伝いに駆り出された先で「はなっから酒飲んでるだけやったら葬式なんか来んなや」とぼやく。そういえば十五年以上前に亡くなったヨシズミの爺さんの葬式の時はショックで何も喉を通らなかった…という話。 古き良き商店街が一致団結して再生するような爽やかな話かと思ったら、「狭い交友範囲でいつまでもくすぶってる残念な大人達」と「商店街の外で働く

          八番筋カウンシル。

          アリバイ崩し承ります。

          「アリバイ崩し承ります」という張り紙がされている商店街の時計店。ツナギを着たウサギを思わせる可愛らしい店主に、捜査に行き詰まった新人捜査官がアリバイ崩しを依頼すると…という話。アリバイ崩しに特化した連作短編集。 まさに土曜ナイトドラマにうってつけのライトなミステリー。アリバイ崩しに絞りつつもバリエーションが巧みで飽きずに読めた。あの手この手でアリバイが成立していく。最終話でアリバイ工作を施した犯人の葛藤にフォーカスしているのは良かった。 探偵や便利屋などの専門家ではなく時

          アリバイ崩し承ります。

          小説の神様。

          高校生でありながら売れないの小説家を続ける一也は、美人転校生の小余綾が人気小説家の不動詩凪だと知る。「小説には人の心を動かす力があるか」「売れる為にはどんな小説を書く必要があるか」という価値観の違いから啀み合う二人だったが、詩凪の考えたプロットを一也が執筆するという企画を任されて、という話。 「文芸部の窮地を救ってくれる神憑り的な足長おじさん」とか「ひたむきに取り組んだ人が最後に報われる神様の粋な采配」とかそういうのが登場する話ではなく、職業として小説家を選択する事の覚悟や

          小説の神様。

          探偵少女アリサの事件簿。-今回は泣かずにやってます-

          武蔵新城で便利屋を営む橘良太と探偵を両親に持つ綾羅木有紗のコンビによる短編集・第二弾。 バーベキュー場で容疑者にされたり、運動会で通報されたり、ダメな大人とイタい子供がワチャワチャ事件に首を突っ込んでいく。 本当に今回は泣かずにやってます。 相変わらず南武線沿線もっと言えば溝ノ口周辺への愛が爆発している。寧ろ探偵少女の設定すらかすんで見えた。何ならミステリーだったのかすら怪しい。設定が散らかり過ぎてる。 著者には、コメディ全振りと見せかけて意外と骨太な本格推理な作風を期待

          探偵少女アリサの事件簿。-今回は泣かずにやってます-

          フライ・バイ・ワイヤ。

          これは近未来を舞台にしたSF青春本格ミステリ。宮野隆也のクラスに転入してきたのは病気で通学出来ない少女が遠隔操作する二足歩行ロボットだった。生身の人間と同じように振る舞うロボットの姿に戸惑いながらも心を通わせていくクラスメイト達。やがて定期考査の結果が発表されて…という話。 最初、誰の何を読んでいるのか…って気もしたけど、地味なディテールのリアルさが石持浅海らしくて良かった。デジタル化が進んでも一部にアナログが残っていたり、休み時間や放課後の他愛もない雑談やキャッチボールや

          フライ・バイ・ワイヤ。