【詩】芳醇な仕立て屋

大したことなかったよ
幻想の奥で嘯く女のような音を聞いたのは唯一の事実
時をひっくり返して何もかもをなかったことに
零れ落ちた不幸せの鱗片
珈琲に混ぜればバレない――乙女は小匙で救い魔女に委ねる
最低な朝を蹴散らす鴉
抉れた片目の行方は誰一人知るはずがない
脳が溶けてるのに気付かないくらい素敵な夢を見ていたの
湿度が随分高い日だった
透過していく空に反射する前日譚
流れる言葉を信じるならば
この街は駄目だ
お前達も駄目だと
甲高い声がケラケラ響く
阿鼻の波に逆らう乙女の中で眠る摩訶
癇癪で歪んだ街を達観する影はセラセラ靡き
あれごときで不幸とは嗤えるね
適切に残酷ですね?
脳髄の震えを感知した紳士は開かれた書の文字を束縛した

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