（リード）
意外や意外、そのルーツをたどると大隈重信公に。早大の学生寮からキリスト教の雑居ビル、そして反日左翼の発信基地へ。

早稲田奉仕園

「東京都新宿区西早稲田２－３－１８」。このムックの読者なら、一度は目に、耳にしたことのある住所のはずだ。国内有数の慰安婦プロパガンダ発信基地である「女たちの戦争と平和資料館」（wam）をはじめ、さまざまな反日団体が同住所を所在地にしていることから、人呼んで「反日の聖地」。あるいは建物を指して「反日のデパート」という呼び名もある。
　件の番地は、都の西北・早稲田大学のほど近く、営団地下鉄東西線早稲田駅から徒歩数分のところに位置する。この一角は正式には「公益社団法人早稲田奉仕園」という文教施設であり、通常、「西早稲田2-3-18」あるいは単に「西早稲田」というのは、そこにある「日本キリスト教会館」と「AVOCO（＝Audio visual activities commission/キリスト教視聴覚センター）ビル」のふたつのビルの総称ということになる。AVOCOビルがキリスト教会館よりも若干新しくデザインもモダンだが、２つのビルは上部で連結されており、その意味においてはひとつの建造物といえなくもない。その他にスコット・ホールと呼ばれるレンガ作りの瀟洒なチャペルが目を引く。清潔で開放的な建物、整備された中庭から受ける印象は、巷間聞く反日団体の巣窟というイメージからはほど遠い。
　早稲田奉仕園そのものは、早稲田大学の創立者・大隈重信が、米国バプテスト教会の宣教師H・B・ベニンホフに依頼して建設した学生寮「友愛学舎」がそのルーツというのだから、歴史は古い。今年から数えてちょうど百年前の１９１７年（大正６年）に早稲田奉仕園信交協会として発足、その後、同じく宣教師だったスコット夫人の多額の寄進によって、大幅に拡充され、現在の奉仕園へと発展していく。いうまでもなく、スコット・ホールは彼女の偉業を称えてその名を冠したもので、１９２１年（大正10年）に完成している。

　大隈公自身はキリスト教徒ではないが、フルベッキの門下生ということもあって藩士時代から聖書に親しんでおり、その経験あってか、維新後は小松清廉の命を受け、キリスト教布教解禁を迫る英公使パークスとの交渉の任を追っている。当初、大隈公を下級役人とあなどっていたパークスも、万国公法（国際法）に通じ、歴史から見たキリスト教の功罪についても堂々と意見を述べる公の態度に感服し、議論を通じて二人の間には友情が芽生えていったという。ミッション系大学でもない早稲田大学に、礼拝堂つきの学生寮が存在したのはそんな経緯があってのことである。
　現在も、奉仕園は独立した公益社団法人ながら、早稲田大学とは縁が深く、会議室やセミナーハウスは広く学生たちに開放され、とりわけ外国人留学生の姿をよく見かける。スコット・ホールは要件を満たせば、一般でも借りることができ、結婚式の他、音楽会、あるいはTV、映画などのロケにも利用されている。両ビルの各階フロアーはキリスト教関係の団体がテナントとして入居している、つまりは雑居ビル状態である。今回、入居団体の所有者を調べたが、複雑すぎて、ここに記すのを断念した。新宿歌舞伎町あたりの雑居ビルと同じで、また貸しのまた貸しが平然と行われているのだろう。

日本基督教団の欺瞞性

　早稲田奉仕園自体は本来、反日とも慰安婦ともまったく無縁の組織といえる。では、なぜ、「反日の聖地」、「反日のデパート」はできあがっていったのであろうか。
　結論からいえば、理由はふたつあると思う。
 
⓵、「キリスト」教を看板にした反日団体がテナントとして入居し、ここを活動の拠点としてしまった。⓶、キリスト教（とりわけプロテスタント）自体の変質（反日化）。

　ふたつの要素は単独ではなく不可分の関係にあるといっていい。
　このうち⓵はわかりやすいだろう。西早稲田最大の反日団体が冒頭にもその名が出てきた「女たちの戦争と平和資料館」（wam)だ。AVCOビルの２階フロアーの３分の２を占めるこの資料館は２００５年（平成１７年）８月にオープンしている。昭和天皇を「有罪」とするだけの目的のために、韓国、北朝鮮の工作員を検事役として招聘しデッチあげた法廷ごっこ「女性国際戦犯法廷」の仕掛け人・故松井やよりの盟友・西野瑠美子が代表を務める同資料館は、慰安婦プロパガンダの日本における総本山といった趣がある。
前身は任意団体「女たちの戦争と平和人権基金」で、これは２００３年（平成16年）に旗揚げ、当初は事務所を江東区に置いていた。ホールなどを借りて慰安婦関係のイベントを行いながら常設館の設置に向けて動いていたが、テナント料などの問題などで折り合わず難航、結局、AVOCO2階のビル管理事務所を格安で借りることに成功したという。これも松井女史がクリスチャンであり、両親ともども牧師ということが大きかった。つまり、キリスト教系の団体ならば、比較的好条件で入居できるということである。
　奉仕園もAVOCOも団体の思想性や政治活動の有無まではチェックはしないし、する立場にはない。いや、この手の団体は、愛だの平和だの平等だの反戦だの、万人が否定しようもないスローガンを掲げているのが常なので、むしろ通りがいいのかもしれない。ひとつ反日団体が入居できれば、そこを受け皿にさまざまな幽霊団体を置くことができるという寸法だ。もろん、募金や寄付金もそれら幽霊団体の名義で集めることも可能だろう。
「西早稲田２-３-１８」に住所を設定しながら、事務所などのないもの、活動実績が不明なものも多数ある。なお、「石原やめろネットワーク」、「歴史歪曲を許さない！アジア連帯緊急集会事務局」
は現在、ＨＰを閉鎖しており、おそらくは休眠状態と思われる。

　もうひとつの⓶について。カトリックもプロテスタントも先の大戦中、存続のために国家神道への協力を余儀なくされたという苦い経験から、戦後は一貫して左翼的傾向を強めていった。特に、カトリックの神父と違い、プロテスタントでは牧師の政治的発言動は許容されているということもあって（あのキング牧師の運動も立派な政治運動である）、中には極端な反日思想（反天皇、反靖国）を掲げる団体や教会も少なくない。プロテスタント、とりわけ日本基督教団傘下の団体が集まれば、いきおい反日的にならざるを得ないのだ。
　蛇足ながら――。クリスチャンや教団が、反戦を唱え、過去の戦争を反省する、それ自体は一向に問題ない。しかし、彼らの断罪する戦争が、日本が戦った戦争に限定されるのは不可解だ。過去キリスト教がいかに戦争を起こし、布教の名の下に植民地と奴隷制を作り上げ、数々の残虐行為を行っていたか、まずその反省と悔い改めこそが先決ではないか。戦時性暴力・性奴隷など、キリスト教の布教下では平然と行われていた。それに関するwamの正式見解を伺いたいものである。

「子どものうち男の子をみな殺せ。男と寝て、男を知っている女もみな殺せ。男と寝ることを知らない若い娘たちはみな、あなたがたのために生かしておけ」（民数記）　一神教の神は戦時性暴力を命じているのだ。

韓国キリスト教の汚染

「西早稲田」でいえば、「在日本大韓民国基督教会」「在日韓国人問題研究会（ＲＡＩＫ）」「外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会（外キ協）」など、韓国（在日）系キリスト団体、あるいはその関連と思われる団体が看板を掲げていることから、奉仕園が韓国系キリストの下部組織であるかのような書き込みをネット上に散見するが、これはもちろん正しくない。
　繰り返すが、奉仕園と入居団体は大家と店子の関係でしかない。では、なぜ韓国系団体が目立つのかといえば、これも⓶に関連するが、戦後、というよりも近年のプロテスタント事情によるものである。ご承知の読者も多いかと思うが、韓国は国民の４分の一をキリスト教徒が占めるというアジアの隠れキリスト教国（プロテスタントとカトリックの割合は２：１）なのだ。一方、日本のクリスチャン人口は全人口の１％程度。となれば、日本のキリスト教団体は交流を含め、何かと韓国のキリスト教団体の影響を受けざるを得ない状況にある。
　さらにいえば、日本のキリスト教団体にとって深刻なのは後継者問題である。要するに跡取りが育たないのだ。その分、韓国から牧師を呼んで教会を任せるということになる。東日本大震災を「神を信じない日本人への天罰」と言ってはばからない韓流牧師がいるように、韓国のキリスト教はかなり反日的であり、カルト色が強い。これらがどんどん、日本のプロテスタントを汚染し始めているのだ。ちなみに「在日本大韓民国基督教会」だが、在日を謳いながらも、対応してくれた係員は明らかに日本語を話す本国の韓国人であった。ここは北朝鮮の朝鮮基督教連盟（朝鮮宗教人協議会）とも交流があることがわかっている。
　一方で「アジアキリスト教教育基金（ＡＣＥＦ）」のような、一見特亜系のキリスト教団体のように見えて、「バングラディシュに学校を贈ろう」という真面目で地道な運動を行っている特別非営利法人も「西早稲田」に事務所を置いている。こちらは調べた限り、韓国とも在日社会とも表立った接点はなかった。
「西早稲田」というひとくりにして、そこに居を構える団体を一律に反日工作組織と断定するのも早急かつ無責任であろう。その上でどの団体が危険であるのかを、見極め監視する目が必要だ。

初出・ムック「ジャパンREAL VOICE vol3」（メディアソフト）2017年　柴木泰（しばきたい）名義