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わが青春、自販機エロ本の世界②

 ある日、突然街に現れた―。エロ本自販機との遭遇はまさにそんな感じだった。当時中学生の僕も結構お世話になったクチだ。販売機の前を何度も行ったりきたりした末、意を決しお金を投入したはいいが、超アナログ自販機のジー、ガッタンという作動音にドキリしたなどというご同輩も多かろう。出てきたエロ本をシャツの間に隠し、一目散にその場を立ち去ったというのも懐かしい思い出だ。むろん、その当時は、後年自分が自販機本を作る立場になるとは想像もしなかったが。
 編集者時代、小学生読者(!)からハガキをもらったことがある。鉛筆書きの丸みのある文字で「しっこみせろ」と書いてあった。これは極端な例としても、自販機本の主力ユーザーは当時の僕のような中高生だったのは明らかであろう。
 エロ本自販機設置台数はその最盛期、全国で3万台とも言われた。これは当時国内の全書店数とほぼ同数だという。東雑の回収車の前輪が積んだ100円玉の重みで浮き上がったとか、ショックアブソーバーが折れたとかのエピソードも残っている。
 自販機本を一度でも買ったことがある人はおわかりかと思うが、表紙(表1)と裏表紙(表4)、それぞれにカバー写真とタイトルがついており、一見すると両面が表紙である。通常、表1は写真もタイトルも過激、表4の方は着衣のモデルがニッコリ笑ったようなソフト路線になっているが、これには意味があって、盛り場などに設置した自販機には、ハードな表紙をディスプレイし、近くに通学路などがある街中の販売機にはソフトな面を見せるという配慮(?)なのである。慌てて同じ雑誌を2冊買った者もいたはずだ。それでも、子供の目に触れるということで、後年はハーフミラー効果のあるフィルムがつけられ、昼間は表紙が確認できないように工夫がなされた。これが夜になると、こうこうとしたライトにエロ本の表紙が浮かび、うらぶれた街の横丁を淫靡に飾るのである。(次回へ)

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