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目からビーム! 1 去り行くものを思う サザエさんと海洋博

『目からビーム!』記念すべき連載第1回は平成最後の年(2018年)1月12日付けでした。おかげさまで160回を超えました。とりあえず200回を今の目標にします。


 東芝が『サザエさん』のスポンサーを降板すると発表した。このまま後継スポンサーが決まらない場合、四十九年続いた国民アニメは本年三月をもって終了することになる。
 放送開始は昭和四十四年だから、沖縄の本土復帰の三年前である。制作会社のエイケン(旧TCJ)は『サザエさん』をアニメ化するにあたって同業他社からは、「ロボットが戦い、ロケットが宇宙をかけるのがアニメのだいご味だろ。お茶の間とちゃぶ台しか出てこないアニメを誰が観るんだ」と笑われたという。しかし、四十九年たち、AIが実用化され国産ロケットが飛ぶ時代には、PCも携帯もなく、ちゃぶ台で一家団欒が定番の『サザエさん』世界の方がむしろ遠い宇宙の話になってしまった感さえする。
 半世紀の歴史の中で、サザエさん一家がそろって沖縄を訪れたことが一度だけある。作品No957「めんそ~れ沖縄」(昭和五十年十二月二十四日放送)がそれだ。この回は沖縄海洋博が舞台だった。
 さて、終了といえば、こちらは既に決まっているのだが、平成という年号が終わる。
 今上陛下(註・現上皇陛下)の沖縄への特別な思いは毎年六月二十三日の慰霊の日、皇居・御所での祈りを欠されたことがないということからも伝わってくる。それは昭和天皇の思いでもあっただろう。
 陛下の沖縄ご訪問は皇太子時代の海洋博開会式ご出席が最初であった。式に先立って献花のためにひめゆりの塔を訪れた皇太子殿下ご夫妻は過激派の火炎瓶投擲という事件に遭遇されるのだが、海洋博会場ではそんなことはご表情にも表さず、歓迎の日の丸の小旗の波に向かってにこやかに手を振られていた。
 このご訪問では両殿下が海洋博のパンフレットを仲よくご覧になっている写真が週刊誌のグラビアを飾り話題になったこともある。三十六ページのそのパンフレットの表紙はサザエさんのイラストだった。

(初出)八重山日報

(追記)パンフレットのキャラクター起用は『サザエさん』の登場人物の名前が海産物を由来としており、海洋博にふさわしいと判断されたことから。このエピソードはエイケンプロデューサーだった鷺巣政安さんから、但馬は直接伺っていて、インタビュー本『アニメプロデューサー鷺巣政安』(ぶんか社)でも触れられています。幸いなことに、『サザエさん』打ち切りはなく、今年(2024年)で無事、放送55年目を迎えました。


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