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目からビーム!64 コロンブス、リンカーン、ビートルズ

 僕はロック・ミュージックが大好きである。ロックなしの自分の人生など、想像もできないほどだ。当然のことながら、ロックン・ロールの母体であるブルースやリズム&ブルース、ゴスペルも大好きだし、あまりくわしいとはいえないが、ジャズも嫌いではない。
 それらの音楽は、アメリカ南部の黒人が日々の生活や信仰の中で歌い伝えた音楽が、白人の音楽と融合する形で創造されたものである。つまり、新大陸に黒人奴隷が連れてこられなかったら、ロックも生まれなかったということになる。
 ならば、ロック・ミュージック好きの僕は、黒人奴隷制の肯定者、人種差別主義者なのだろうか。そんなバカな論法はあるまい。しかし、そのバカな、というか倒錯した論法が今のアメリカではまかり通りそうないきおいなのだ。
 いわゆるジョージ・フロイド事件をきっかけに、今全米で「人種差別狩り」が過熱している。南北戦争の南軍将軍の像に続いて、新大陸発見の英雄・コロンブスの銅像が次々とデモ隊になぎ倒され、無残な姿を野にさらしているのである。コロンブスが先住民虐殺の歴史を招いた白人優越主義者であるというのが、その理由らしい。
 それをいうなら、エイブラハム・リンカーンはどうなるのだ。奴隷解放の父と呼ばれた彼は、一方で先住民は徹底的に弾圧、虐殺している。彼の命令で38名のスー族が縛り首にされて終わった、ダコダの反乱は、フロイド事件と同じミネソタでの出来事だった。となれば、リンカーンの像も壊さなければ筋が通らんではないかと皮肉を込めて書いてやろうと思ったが、どうも皮肉や冗談で収まらないところに暴走は来ているようだ。像どころか、リンカーン・コンチネンタルに乗る金持ちも標的にされるかもしれない。
 歴史とはレンガの積み重ねである。白いレンガも黒いレンガもあって、今私たちはその塀の上に立っている。その塀から黒いレンガだけを取り除いたらどうなるのだ。たちまち塀は崩れてしまうのではないか。歴史と文化を壊すのが、彼らの目的なのかもしれないが。まさに、青い目の文化大革命である。
 さて、彼らがビートルズやエルヴィスに課せる罪状はなんだろう。黒人音楽の搾取者?それとも、音楽の奴隷農場主? 


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